「世界の理」



少年は森の中を歩きます。
樅の木の下には、小さな子どもがいました。
小さな子どもが言いました。
「友達になってくれない?」
少年は言いました。
「嫌だよ。だって君には腕がないもの」

少年は森の中を歩きます。
椎の木の下には、綺麗な女性がいました。
綺麗な女性が言いました。
「友達になってくれないかしら?」
少年は言いました。
「嫌だよ。だって君には足がないもの」

少年は森の中を歩きます。
楠の木の下には、年老いた男性がいました。
老いた男性が言いました。
「友だちになってくれないかい?」
少年は言いました。
「嫌だよ。だって君には目がないもの」

少年は森の中を歩きます。
桜の木の下には、少年によく似た、どこも欠けることのない少女がいました。
少年は言いました。
「友だちになって?」
少女は言いました。


「嫌だよ。だって君には心がないもの」