このお話は何処ぞで聞いたコトのあるような、ないような。 パクリのような、全然そうじゃないような。 そんなワケの分からない不思議物語です。 さぁ、ソレを承知した方のみ、お進み下さいませ。 他動詞でいこう!〜ジャックと豆の木の場合〜 ある日、ある時、ある場所に、という名前のそれはそれは可愛い女の子がいました。 小さい頃に、お父さんもお母さんも亡くなってしまったので、身寄りのなかった彼女は、 一人で家のコトをこなす良い子に育ちました。 グレなくて良かったですねv 「あのぅ……、ナレーターさん?」 はい、何でしょう? 「やたらと美化してません??」 いえ、そんなコトはございませんv 貴女は素敵に可愛い女の子なんです。コレは決定事項なんです。 貴女が泣こうが喚こうが脅迫しようが私がそうと言ったらそうなのです。 さて、そんなコトより、ちゃんは結構な田舎で育ったので、世間知らずでもあります。 だから、今回もいろいろと大変でしょうねェー。が・ん・ば・れ〜。 「……今、何か言いました??よく聞こえなかったんですけど」 何でもありませんよv おや?そんな感じでちゃんがナレーターとお話をしていると、其処に金色の瞳をした可愛らしい男の子がやってきました。 どうやらお腹がすいているらしく、腹の虫が凄い勢いで自己主張しています。 やっばい音です。ぐぉぎゅるるるごろぎゅるり☆って言葉に近いです。 すると、見るに見かねた心優しいちゃんは、すぐに家に駆け戻ってパンを取ってきました。 もちろん、公害対策ではありません。 「えっと、コレどうぞ?」 彼女が手にしているのはレーズンパン。 流石に心優しいですねェ。そんな大きいのをあげるなんて。 ……って、え? そんなモンじゃない?? ……あ、自分が食べないのをあげるんですか。 「だってこのままカビちゃったら、もったいないじゃないですか?」 さいですか。 「コレ食って良いのか!?」 「どうぞどうぞ」 すると、少年は結構な大きさのソレを、一分もしない内に食べ終わらせてしまいました。 ちなみに、ちゃんは今「男の子って食べるの早いんだ」などと思いながら見ています。 男の子だからではなく、この悟空と名乗る少年だからです。気付きましょう。 「あー、美味かった!サンキュ」 「いえ、どういたしまして」 カビられるよりは食べられた方が、パンとしても本望でしょうよ。 でも、見知らぬ人にパンを貰っても食べちゃいけません。 良い子はマネしないように! そして、和やか(?)な雰囲気になったところで、悟空は小さな豆を一粒取り出しました。 ちゃんが不思議そうに見ていると、悟空は満面の笑みでソレを手渡します。 「……何ですか?コレ??」 豆でしょう。 「そんなの見れば分かりますよっ!」 「えーっと、コレな?植えて育てると、凄ェでっかい豆ができるんだってよ!パンのお礼!!」 「はあ、そうなんですか?でも、そんなに凄いモノなら頂けません」 「うーん。でもオレが持ってても意味ねェし…。やっぱ、貰ってくれよ!」 「本当に良いんですか??」 「おう!オレ自分の庭なんてねェから」 最初、ちゃんは半信半疑でしたが、断っても逆に失礼だろうと最後には豆を受け取ります。 でも、ぶっちゃけ「こんな豆もらっても……」な心境でしょう。 もの凄く怪しい上に、でかい豆ができても困ると言えば困ります。 が、流石にせっかく厚意でくれた人にそんな思いを悟らせるほど、ちゃんは馬鹿ではありません。 その後、彼女は何処かへ去って行く悟空に爽やかに手を振って見送りました。 その手に見たこともない不思議な豆を乗せたまま。 そして、ちゃんはその豆を矯めつ眇めつした後、コテンと首を傾げました。 「うーん。どうしよっかなァー??このお豆さん……」 植えて下さい。 「やっぱり?でも、ちょっとメンド臭……」 植えるんです。 「…………何かあるんですか?」 だから、でっかい豆ができるんでしょう。 「企んでなんかいませんよね?」 ただの好奇心ですよv ホラ。ちゃっちゃか植えないと腐らせますよ? 「……っ!?『腐る』んじゃなくて『腐らせる』んですか!!?」 そうです。自動詞じゃなくて他動詞です。 あー、早くしないと折角の冬用の蓄えを増やすチャンスが……。 大きな豆なんて、市場でさぞお高く売れるだろうに、あー、勿体ない勿体ない。 「分かりましたよ!植えます。植えれば良いんでしょ!?」 しぶしぶといった様子でしたが、ちゃんはやがてきちんと豆を植えました。 素直でとても良いですねv そんなこんなで、心なしか不安を抱えつつ、ちゃんのちょっぴり変わった一日は終わりを迎えました。 さて、あくる日の朝のことです。 なんだかいつもと違って暗いなー今日は曇りかなーなんて思いながらちゃんは目を覚ましました。 雨の音はしないので、日課の畑の水やりをしなければなりません。 昨日はなんだかんだあって、気分的に疲れているちゃんは、一瞬サボろうかとも思いましたが、 食卓事情を考えて、しぶしぶ身支度を整えます。 そして、彼女がごく普通に顔を洗い、ごく普通に服を着替え、ごくごく普通にジョウロ片手に外へ出てみると? 「…………」 ちゃん絶句☆ 滅多にないほどにポカンと大口を開けて、固まってしまいました。 いやぁ、一体どうしたっていうんでしょうね?こんなに良いお天気なのにー。 「…………えない」 おや?どうしました?? 「…………」 ちゃん?オーイ! 「で……」 『で』?? 「でっかいにも程があるワー!!」 そう、何を隠そうちゃんが朝目覚めて外に出てみると、彼女の目の前には大きな豆の木が聳え立っていたのです。 ええ、もう、ドデカイです。雲を突き抜けちゃってます。 実は昨日植えた豆は、一晩のうちにすくすく育つ不思議豆だったのですよ! ワァーオ、ナレータービックリ。 「不思議どころの騒ぎじゃないっちゅーねん!マジ意味判らんワ!!」 ……あのー、ちゃん?キャラ変わってますよ。それじゃ何処ぞの管理人です。 「うー、どうしろって言うんですか、コレェ〜……?」 登ってみるのも楽しいかもですよ? 「何処が!?疲れるだけだし、危ないじゃないですか!!」 いや、実はこの豆の木を登った所に、人が乗れる不思議雲があるんですよ。 「……何で知ってるんですか」 ナレーション担当なモノでv で、其処にはお城がありまして、金の卵を産む鶏とか、金銀財宝ザックザクなんです。 だから、是非行って来て下さい!! 「嫌」 って、そんな身も蓋も無い!? 「だって信じられないし。それにソレって泥棒じゃないですか」 ……良い暮らししたくないんですか? 「そりゃしたいですけど、今の生活で充分な気もしますから。 ナレーターさんだって、自分だったら行かないとか思ってません?『面倒だー』とか言って」 ギクッ!えーっと……、そんなコト、無い…ですよ? ってゆーか、行ってくれないと話が進まない!しかも、時間が押してる!! というわけで……。 カモン!李厘ちゃん!! 「えっ!?」 ちゃんが驚いていると、飛竜に乗った李厘ちゃんが何処からともなく召喚されました。 ええ、何処からともなくです。桃源郷の可能性もなきにしもあらずです。 「あれ?ここ何処だろ??」 あー、其処にいらっしゃる李厘ちゃーん! 「んー?オイラになんか用かー??」 はいv此処になっている豆の半分をあげますんで、彼女を雲の上のお城まで連れて行ってあげてくださいw 「え!?こんな大きいの貰って良いの?ヤッタァーv」 「ちょっと!本人無視して話進めないでくださ……、うわっ!」 ヒュン! 文句を言う暇さえなく、ちゃんは李厘ちゃんに担ぎ上げられてしまいました。 そして、李厘ちゃんは素晴らしい速さで、肩に担いでいるちゃんもなんのその。 するすると器用に豆の木を登っていきました。 「飛竜使えば良いじゃん」とか言わないで下さい。 彼女は登りつつも豆を食べているのです。 小猿さんみたいで微笑ましいですねェーv 「ちっとも微笑ましくなんかなーい!!」 さて、物語の進行上、無理矢理ちゃんはあっという間に、お城の前まで連れてこられてしまいました。 こうなったら腹いせにお宝を盗んでいこうと、やる気マンマンの彼女はお城の様子を窺っています。 「そんなコト考えてませんよ!お宝なんていりません!!それに今『盗む』って……っ!?」 気のせいです。 「あーも−……。早く返してくださいよー」 大丈夫ですってvお城の主様は現在、お出かけ中のハズですからw 「しかも人が住んでるんじゃないですか!少しも大丈夫じゃなーいっ!!」 と、ごくごくあっさりと応じる声にちゃんは泣きそうなイキオイで絶叫し、お空に向かって文句を言い募り始めました。 「絶対嫌です!犯罪者なんてまっぴらです! こんなことで前科持ちになるなんて天国のお父さんお母さんになんて言ったら良いのかっ! あんまり情けなさ過ぎて、二人が天国で首くくっちゃったらどうしてくれるんですか! そんなの絶対嫌ですよ!?って、ちょっと!ナレーターさん!?何で黙って……っ」 「オイ」 「……へ?」 「人ン家の前で何してやがる」 すると突然、お城の中から主の三蔵様が姿を現しました。 後光が射しています。あまりの美貌にちゃんの心臓が凄まじいビートを奏でます。 ぶっちゃけ、今にも壊れそうです。素敵な顔面凶器ですねv あれ?ところで。 今日はお留守じゃなかったんですかー?? 「手前ェはオレにクソババァ主催の女装コンクールに出ろっつーのか?」 やってくださるのなら是非……? 「ブッ殺すゾ、手前ェっ!」 お願いなんぞ致しません。致しませんともっ!……チッ。 「フン。……で、何の用だ?」 「あ、えーっと、その……。私、無理矢理連れてこられてしまって……。だから、その……」 「……名前は?」 「あの……、です…………」 金髪美丈夫にまっすぐ視線を注がれて、ちゃんは緊張しつつ事情を話します。 もう彼女は目の前の恐ろしい男に何時殺されるかと気が気じゃないのです。 視線だけで人殺せそうですもんね、この人。 「なっ!?そんなコト考えてませんよ!ただ綺麗な人だなって…………あっ」 何気に三蔵様に対して凄いコトを言っているのを自覚したちゃんは、パッと口元を抑えて真っ赤になってしまいました。 大変初々しい反応ですね。絶滅危惧種ですね。野郎の夢というものです。 そして、そんなちゃんを観察していた三蔵様は、不意に不敵な笑みを浮かべ、 ヒョイ。 姫抱っこをかましました!? 「っ!?」 「気に入った。オレの女になれ」 「どういう意味ですか、ソレ!?」 「そのままだろ」 あー、駄目ですよ。彼女は当サイトヒロイン一の鈍感クイーンですから。 「そのままって何ですかっ!?」 えー、つまりですね? 三蔵様は貴女に『オレの嫁になれ』か、『オレの愛人になれ』のどっちかを言ってるんですよv ナレーター的には後者に580ポイント? 「えぇえぇえぇーっ!?しかもポイントって何ぃー!!?」 「オイ、ナレーター!誤解を与えるような発言してんじゃねェよ!オレはまだ一人身だ!!」 じゃあ、前者で愛の告白vなんですね? 「……」 あ、三蔵様照れてるー。 「死ねっ!」 ガゥンッガゥンッガゥンッ!! ギャー!発砲しないで下さい!! プロポーズした直後に照れ隠しで殺人なんてシャレにもなりませんって!! 「安心しろ!バレなきゃ問題ねェ!!」 安心なんぞ出来るか! つーか、問題なくねェだろォオォオォー!! ぎゃああぁぁぁあぁー!へるぴみー!! ナレーター関係ないですよ、これぇええぇー!? ガゥンッガゥンッガゥンッガゥンッガゥンッ――……! ぎに゛ゃぁ゛あ゛ぁぁぁー――……!! ナレーターが命の危険を感じて撤退してしまったので、ちゃんのその後は不明です。 ただし、風の噂で『雲の上に、それはそれは綺麗な男女が暮らしている』というモノがあります。 はてさて、一体ちゃんはどのようにプロポーズを受けたのやら? めでたしめでたし?
|