自覚?錯覚?男失格? Phantom Magician Special 床に押さえ付けられた手に、思わず力が入った。 ぼんやりと、ルーモスの名残で照らし出された顔を睨み付ける。 逆ギレも許されるよな、この状況。 そう、逆ギレだ。 煮えた思考の片隅で、冷静な自分が指摘する。 簡潔に述べると、悪戯が通じない転入生を何とか嵌めてやろうと画策した結果、 失敗に終わった上に俺が嵌められた、というのが現状だ。 しかもコイツにじゃない。 4年間付き合ってきたホグワーツに、だ。 悪戯仕掛け人が知らなかった『動く隠し部屋』なんてレア物を見付けられたのは、 疑いようもなく狂いに狂った方向感覚を持つコイツのお陰だから、寧ろ称賛すべきなのかもしれない。 部屋に飲み込まれていく俺に手を伸ばして助けようとしてくれたコイツに感謝するべきなのかもしれない。 結局一緒にこの部屋に引き摺り込んだ事を謝罪するべきなのかもしれない。 それでも、この状況は解せない。 「どけよテメェ!」 何が悲しくて男に押し倒されなくちゃいけねぇんだよ!! 上に乗ったをどかそうにも、何かしらの妨害魔法を使っているのか、びくともしない。 応戦しようにも、淡い光を灯した杖は、手の届かない頭上へと蹴り飛ばされてしまっていた。 身体の自由を奪われ、杖を持った奴にマウントポジションを取られる、素手の魔法使い。 口しか使えない俺に、勝ち目が何処にあるのか教えて欲しい。 口説けってか。 「…………ょ」 「……あ?」 「ふざけんなよ、マジで!!」 対して、絶対的優位のの瞳は怒りに燃えていた。 見下ろしてくる視線の強さと、うっすらと浮かぶ涙に思わず息を呑む。 キレるのはわかるけど、何で泣くんだよ。 泣くような事してないだろ。 糞爆弾もいつもに比べりゃ3個は少なかったし、どうせ当たってない。 いつもと違うと言えば、今の状況くらいで…………もしかして。 「何でこんな胸キュンイベントの相手がお前なんだよ!!リーマスだろ常識的に考えて!」 「お前なぁ!『の弱点発見か!?』とテンション上がった俺の男心返せ!!」 「ねーわ!シリウスねーわ!マジKY! お前相手じゃ『暗い所怖い……』とか『出られなかったらどうしよう……』とか演技する意味ねぇじゃん! 暗闇密室二人きりって美味しすぎるシチュエーション無駄遣いしやがって!需要考えろよちくしょう! こんな所が冷暖房完備で快適なのもムカつく! もうこの際美形とか関係ない!顔ぼこぼこになるまで殴らせろ!!」 「ホグワーツの親切設計まで俺にあたるな!!」 「生徒2人攫ってさっさと出口消す隠し部屋の何処が親切設計だばーか!!」 「そこじゃねぇ!!」 っつーか俺じゃなくてリーマスだったら何する気だったんだ、こいつ。 一瞬でも口説けばいいのかなんて血迷った自分に鳥肌が立つ。 リーマスが好きだと公言するゲイだぞ。 危険すぎるだろ。 上に乗った体重が軽かろうが、 振り上げた拳が簡単に受け止められるほど非力だろうが、 魔法が消えれば簡単に組み敷く事が出来ようが、 掴んだ手首や照らされた首筋が細かろうが、男だぞ。 …………危険すぎるだろ。 「お前今マジで顔殴る気だったよなぁ……?」 「るっせーな!どけよ!!」 じたばたともがく姿に、征服欲が刺激される。 成程、こういうコトするには、うってつけの部屋だな。 人は来ないし、ちょうどいい暗さだし、簡単に出られなさそうだし? 「……形勢逆転、だな?」 睨み上げてくるににやりと笑みを返し、覆い被さるように顔を寄せる。 意識的に低くした声を耳に吹き込むと、面白いくらいに身体が跳ねた。 「あ、アクシオ!アクシオー!助けて、スティえもーん!」 「〜〜〜〜っ!!」 『、人をアクシオで呼ぶの止めてよね……って、君達何してるんだよ!?』 「いってぇ!!」 の耳元で囁く以上、俺の耳はの口元にある訳で。 妙な単語を含んだ叫び声に身を起こすと同時に、背中に鋭い痛みが走った。 振り返る間もなく、人の頭を踏み台にして降り立ったのは一匹の猫。 毛を逆立て、俺に威嚇の声を上げる姿は、を守る騎士のようだ。 部屋の薄暗さなど感じさせない、ギラギラと輝く瞳が印象深い。 今にも飛び掛かってきそうなそいつを、はぎゅっと抱き締めた。 「スティアっ!」 『離してよ、。八つ裂きにしてくる数秒だけでいいからさ』 「それより僕を癒す方が先!!」 『…………仕方ないなぁ。特別だからね』 今までの戦闘体勢が嘘のように、ゆらゆらと尻尾を揺らす。 まるで見せ付けるように、黒猫はの頬をペロリと舐めた。 「……なぁ、そいつ、メスだっけ?」 「や?オスだけど何で?」 「まんま『恋人に手出されて嫉妬』って態度だろ、今の。、女だと思われてるんじゃねえ?」 「…………」 『…………』 「……あー、それか、主人を守るナイト?」 「……………………」 『……………………』 揃っての微妙な反応に、柄にもなくフォローに回る。 それに対し今度は、半笑で「そうかもなーHAHAHA☆」と妙な反応を返す。 黒猫は腕から飛び降り、足元で爪を研ぎ始めた。 なんかムカつくから絶っ対ぇ言わねぇ。 薄暗い部屋の中、が一瞬女に見えたなんて。 勘違いという名の勘違い! ―管理人のつぶやき♪― 著作権はact.K前身【ACK】管理人の一人、竹井 颯さんの物です。 勝手に持ってっちゃわないで下さいね。 ……とりあえず、一言言って良いですか? どーだ、羨ましかろうっ!?と。 我らがACKのギャグ担当(?)心の師匠でもある颯さんが、なんとPMの短編をっ!! 何年かぶりの新作ですよ、皆さん!私、泣くかと思った、正直! 駄目元で「書いてくれ」とか話の流れで言って実現した、夢のお話です。 何度読んで爆笑したことか。 加筆修正してくれて良い、とかいうお言葉でしたが、 無理だ、私には改悪しかできそうにないっ!!ってことで、あっさり原文公開。 とりあえず、最初と最後の一文だけ静流作です。ホラ、センスの違いが分かるだろ?(泣) 本当に、本当に颯さん大好き愛してる!素敵夢をありがとう!! で、蛇足書いちゃった! Special Thanks 竹井 颯サマ |