言った言葉には、責任が伴う。





Butterfly Effect、29





突然だが、私こと は、インドア派である。

中・高は美術部で、大学は特になんのサークルにも入っていなかった。
体を動かすこと自体は嫌いではないが、なにしろ運動神経が切れているので、 習い事でやっていた水泳以外は、中の下、といった成績ばかりだ。

まぁ、つまり何が言いたいのかと言うと……、


「地獄に落ちろポッタァアアァァアアァー!」
「死ね落ちろ爆発しろ」
「グリフィンドールなんて滅びれば良いっ」
「行けフリント!ウィーズリーなんぞぐちゃぐちゃにしてしまえっ!!」
「まかせろっ!!!」


(フーリガン的な)スポーツ観戦のノリについていけません。


朝、談話室に下りてきた段階で、飛び交う呪いの言葉の数々に、 私は朝から凍り付くばかりだった。

おっかしいなー?目の前の人たちすっごく熱いというか熱気を放ってるんだけど。
あれ?今、まだまだ冬でしたよね?
皆さん、屋外に出ようっていうのに、マフラーだの帽子だのをどこにやりました?
先輩、その気合入りまくったボディーペイント、一体何時から描いてたんですか?
……心の温度差にヒートショック起こしそう。

スポーツマンシップという言葉はスリザリンにはないらしい。
目の前の殺気立った面々に、私は朝食をグリフィンドールの席で取ることを諦め、 偶には洋食も良いか、と気持ちを切り替えることにする。
スリザリンからもグリフィンドールからも睨まれそうな食卓は、流石に私も遠慮申し上げたい。

すると、私が来たことに気づいたパンジーちゃんが、 「また貴女は寝ぐせなんてつけて……っ!」といつもより3割増しイライラしながら、 私の腕をひっつかんでソファへと誘導する。

どうやら、彼女の美的感覚からすると、私は放置しておけないくらい見苦しいらしい。
すでに何度かこうして掴まったことがあるので、私はほとんど無抵抗のまま、 促されるままに座る。


「まったく。こんな状態で部屋から出てくるなんて、どうかしてるわ……っ!」
「すみません。不器用で……」


私は知っている。
ここで「そこまで酷くないけどなぁ」なんて言おうものなら、どうなるかをっ
なので、ひたすら低姿勢で受け流すのがポイントだ。
まな板の上の鯉のごとく、全てをお任せするしかない。

でもなぁ……。
別に、例え私が凄まじい寝ぐせだろうが、パンジーちゃんには何一つ関係ないはずだけど。
あれか?スリザリンのイメージが悪くなるとか、そんなの?
寝ぐせよりよっぽどやばい風評がまかり通っている気がするのは私だけですか?
この前、何もしてないのにネビル君に怯えられたんですけど?
風評被害も甚だしかったんですけど??

そんなことをつらつら考えている間にも、 パンジーちゃんはぶつぶつ文句を言いながら私の髪を梳かしたりまとめたりしている。
と、私がそれに適度に相槌を打っていると、 スリザリンのオシャレ番長ことザビニ君が近くにやってきた。


「……なにをやっているんだ?」


明らかに怪訝そうな声に、私はあはははーと乾いた笑いしか返せない。
すると、味方にできそうな人間が来たことにテンションが上がったパンジーちゃんが、 くわっと目を見開いた。


「見てわからないの!?の残念さを矯正中よ!!」
「……残念とか言われた」


しかもかなり年下の女の子にである。
地味に悲しい。

そして、多分、死んだ魚の目をしていたであろう私と、 キーッと!キレ気味のパンジーちゃんを見比べた後、 ザビニ君はおもむろに私の頭に手を伸ばしてきた。


「ちょっと貸してみろ」


バチンッ!


「いたっ!」「!」


が、響き渡る破裂音。
もちろんそれは、パンジーちゃんが彼の手を振り払った音……ではない。
何を隠そう、静電気が盛大に発生した音である。


「…………」
「…………」
「…………」
「……えっと、すみません。私、帯電体質で」


過去最大級のスパークに、私は悪くもないのにいたたまれない気分になる。

冬はおろか、下手すると夏場にも静電気起こすのがこの私だ。
バッチン、バッチン、連続で起こすことも決して少なくはない。
指先から青白い稲光を見るなんて、日常茶飯事である。
おかげで、冬は特に親にも近寄るのを嫌がられる始末……。

何故なんだ……と溜息を吐きたい気分になっていると、 そんな私に少しだけ目を細めたザビニ君は、 「髪が乾燥してるんじゃないか?」と言い出した。


「乾燥?」
「確か、静電気は肌や髪の乾燥で酷くなるんじゃなかったか?
保湿をきちんとすれば、放電するだろう。
少しは見られるようになるだろうしな」
「相変わらず、妙なことに詳しいわね」
「別に。ただ、親がこの時期になると騒ぎだすんだ」


凄く鬱陶しそうな表情になりつつも、 ザビニ君はどこからかトリートメントを取り出すと、 美容師のようにささっと私の髪に塗り始める。
さっきよりは小さかったものの、またスパークしたのは完全無視である。
そして、あれよあれよという間に、髪の毛をまとめ始めてしまった。

流石お洒落男子、この歳にしてフローラルなフレグランスを身にまとっているようで、 ふわりと甘やかな空気が鼻腔を刺激した。
(ちなみに、スリザリン生はそこそこの確率で男女問わず香水を着けているため、 談話室に長居すると気持ち悪くなるという罠がある。混ぜるな危険)

パンジーちゃん以上に手慣れたその様子に、 流石に突っ込みを入れずにはいられなかったが、 どうやら、彼は先ほども話題にしたお母様の髪をまとめるのが日常だったそうな。
後で他のスリザリン生から聞いたところによると、 なんでもそのお母様というのが、父親が次々いなくなっても、すぐまた別の相手を見つける魔性の女らしい。
(余談だが、『いなくなった』のは離婚したとかではない)
(話を聞いているだけで、「え、連続保険金殺人?」と思ってしまう逸話の数々だった)

そんな女性にお洒落道を叩きこまれたザビニ君は、あっという間に私の髪の毛を複雑な形に編み上げてしまった。
パンジーちゃんが渡していた緑と銀の細いリボンが、 髪の間に一緒に編み込まれていて、スリザリン生の鏡のような出来栄えである。
とっても可愛らしいのだが、おかげで首が非常に寒い。
がしかし、流石にこんな手の込んだヘアアレンジを無料でやってもらって、 文句が言えるほどの鋼の心臓は持ち合わせていないので、にっこり笑顔でお礼を言う。


「ありがとうございます。ザビニ君」
「……大したことはしてない」


ふいっとそっぽを向いてしまったザビニ君。
色黒で分からないだけで、実は赤面してるかもしれない。
スリザリン生にお礼を言うと大体こんななので、気にしないが。
その内プレイボーイになる子じゃなかったっけ、この子。
本当に、スリザリン生はツンデレばっかりで面白いなぁー!

と、自分の年齢の半分以下の少年少女に人知れずほっこりしていると、 そんな中でもクールなノット君が「そろそろ行かないと、席がなくなる」とぼそっと周囲に忠告をし、 私は珍しくもパンジーちゃんに腕を引っ張られながら大広間へ朝食に向かうのだった。







大広間では、珍しくもスリザリンの席に着いた私に、 周囲の先輩方はなにくれとなく世話を焼いてくれ。
正直、いつもよりも食べ過ぎの朝食を乗り切り。
私は、己の心の平穏のために、マルフォイ君に夢中なパンジーちゃんから、 クィディッチ競技場近くで逸れることを成功させた。

あのまま、会場に連れて行かれてしまうと、 否応なく、彼らと一緒に観戦、という流れになってしまう。
がしかし、個人的なことを言わせていただくならば、私が応援したいのはハリー達である。
グリフィンドールを呪っているスリザリン生の席になんて居たいわけがない。
寡黙な優等生ことノット君辺りには、そこのところ気づかれてそうな気もしたが、 彼はどうやら私を放っておくことにしたらしく、溜息を吐きながら目を反らしてくれた。
(なんだろう、彼だけやたら精神年齢が高いような気がしなくもない)

ただ、グリフィンドールの席に行く、というのも、大広間を避けた理由と同じく難しいだろう。
やれスパイだなんだと言いがかりをつけられても困る。


「でも、ぼっち観戦もねぇ……?」


観たいのは観たい。
でも、こういうのは気心の知れた友達とわいわい観るものだと思うのだ。
一応、念のため、目立つ親友たちの姿を探して周囲を見やったが、 発見したのは、我らが寮監の真っ黒なお姿だった。

…………。
……………………。
スネイプ先生といるのは、もちろんスリザリン生としておかしくはない。
見知らぬ仲でもないし、普通のスリザリン生といるよりよっぽど気楽である。
そして、一番大事なポイントだが。
さん曰く、原作と違って(?)ハリーをばっちり可愛がっている!

これは天の助けに違いない!と、歩いているはずなのにめちゃくちゃ早いスネイプ先生をダッシュで追いかける。
(こういう時、子供の体は疲れを感じなくて便利だなぁ、と思う)
と、自分に突進してくる気配を察したのか、スネイプ先生がこっちを見て、止まってくれた。


「ミス か。なにか私に用かね?」
「あ、ええと……」


一瞬、スネイプ先生の一人称に激しい違和感を覚えつつも(『吾輩』どこ行きました!?)
私はどうにかこうにか一緒に観戦する方向へ話を持っていこうとする。


「特に用というわけでは……。先生も観戦にいらっしゃったんですか?」
「ああ、他の寮の動向も、寮監としては見ておく必要があるのでね」


そう、今日は別にグリフィンドールVSスリザリン……という訳ではなく。
どころか、スリザリンは関係ないという、まさかの不戦日だった。

もうね。なんで自分たちが関係ない日でも、グリフィンドールを呪っているのかが謎すぎる。
相手が可哀想とかないんですか?ねぇ?
いや、スネイプ先生の言うように、寮対抗杯の関係で観戦するのは良いんですよ。
でも、せめてそこはハッフルパフを応援するとか、もうちょっとプラスの方向に力を入れよう?
選手をぐちゃぐちゃにしようとしないで!

「なるほどー」と和やかに先生に応じつつ、そんなことを嘆く私。
さて、どうやってスネイプ先生を観戦にお誘いするかと悩む。

直球で行くのが一番簡単なのだけれど、直球で言ったら普通に断られるような気がするんですよね。
「ミスター マルフォイ達はあそこにいる」とかなんとか言われて。
それは困る。
でもスネイプ先生と見たいんです!と言うのは、デートのお誘いのようで問題だ。
スネイプ先生に限って、変な誤解はしないと思うが、それに応じてしまうと、 最悪、周囲に先生がロリコン認定される恐れがある。
これだけお世話になっている先生に、不名誉な噂が出るのは避けなければ!

がしかし、そうなると、何と言って誘ったものか……。
上手い誘い方が咄嗟に浮かばずに、とりあえず天気の話だのなんだのと世間話をしてみるが、 あまり時間がかかると、席がなくなってしまう。
困ったな、と頭をフル回転させていたその時、


「おや?セブルス。まだこんなところにいたのですか?」


人の好さそうーな、人畜無害感満載で、紫の髪の人が声をかけてきた。
すると、途端にスネイプ先生が若干鬱陶しそうな表情になる。
(嗚呼、折角先生の眉間の皺がほとんどなくなっていたのにっ)


「そういうそちらこそ、行かなくてもよろしいのですかな?クィレル先生」
「別に私の出身寮ではないし、寮監でもないですからね。
とりあえず来てみた、という形です。ところで……」


そして、その新たな登場人物は、菫色の綺麗な瞳をこちらに向ける。
視線の先には、その名前にテンション爆上がりの私。

いやだって、『賢者の石』っていったらクィレル先生でしょう!?
しかも、スネイプ先生とのツーショットとか!
本来なら、クィディッチの試合の後の森の中でしか見られない光景じゃないですか!
(あれ?それってひょっとして、時系列的にこの試合だったりする??)
うわー、うわー!
さんの言ってた通り、髪がある!ターバンしてない!!どもってない!!

別にクィレルファンでもなんでもないが、なにしろ、今までは原作キャラが出てきても、 キャーキャー言えるだけの精神的余裕がない状況ばかりだったのだ。
少しくらいミーハーになっても許されるはず……っ
もちろん、表情になどは出していないが、そんな私に対してクィレル先生は一瞬、目を細める。


「そちらは……噂の編入生かな?」


すみません、その『噂』について詳しくお願いできます?

自分がうっかり噂になっているという衝撃の事実に打ちのめされつつ、 事態を把握しておこうと口を開こうとした私だったが、 クィレル先生の態度に何かを感じたのか、スネイプ先生がスススッとさり気に前に出つつ、
「ああ、ミス だ。我々の後輩だな」と紹介をしてくれた。

うん、そうですよね。いきなり噂について聞くよりも、まずは自己紹介が先ですよね。
なので、とりあえず、お行儀よく自分の名前を名乗っておくことにした。


です。よろしくお願いします」
「……ええ。よろしく?」


探るような視線に、上げた口角がひきつる心地だったが、 しかし、次の瞬間、クィレル先生の放った一言に表情どころか全身が固まる。


「嗚呼、折角ですから、一緒に観戦しましょうか。ミス
これまでの試合の経緯など、教えて差し上げますよ」
「「!?」」


え。なに、デートのお誘い?どういうこと!?







……で、なにがどうしてこうなっているのでしょう。
右に黒ずくめのスネイプ先生。
左に紫づくしのクィレル先生。
二人の教授に挟まれて、何故か私は観戦席に座っていた。
試合直前の熱気に競技場全体が包まれているというのに、 なんだかそれが酷く他人事のように遠い……。

クィレル先生からの有難い申し出は、丁重に遠慮しようとしたのだが、 凄まじいまでの無言のプレッシャーで断ることができず。
そんな、蛇に睨まれた蛙状態の私を見かねて、スネイプ先生もご同行……。

えー、整理してみても意味が分からないー。
一体なにがクィレル先生の琴線に引っかかってしまったというのか。
やっぱり、表に出していないつもりで、クィレル先生を見る目が輝いてしまったのだろうか?
マグル学の先生をそんな目で見るスリザリン生、いないですもんねぇ。
いやでも、自分で言うのもなんだけど、こんな幼気な女の子の何をそんなに警戒するというのか。
やっぱり、原作通りにクィレル先生にヴォルデモートが憑いてるとか?
……いやでも、ターバンないしなぁ。
腐臭もないもんなぁ。

ちらりと、周囲を見回すふりをしてクィレル先生を観察してみたものの、 そこにはなにも奇妙なところは見られない。
と、目が合いそうになったので、そのまま周囲を見回して、素知らぬふりをする。


「クィディッチの会場はそんなに珍しいですか?」


が、隣にいる以上、逃げ場はないワケで。
クィレル先生はにこやかに、そんな質問をしてきた。
目がちっとも笑っていないけど!


「はい。初めて来たので……。凄い熱気ですね」
「クィディッチは人気スポーツですからね。ルールなどは大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですが?」
「いえ、確か、ミス はマグル出身だとか?
魔法会独特の物に戸惑うことも多いでしょう?」


寧ろ、今、答えにくい質問に戸惑ってます。

なにしろ、私は今のところ周囲に純血として誤解をさせている。
でも、私が元々マグルだというのは、スネイプ先生やらルーピン先生からすると今更の話で。
他の先生方にはどのような周知がされているのか。
普通にマグル出身者と言われていれば良いが、そうでないとクィレル先生がカマをかけてきていることになる。

確か、さん曰く、スリザリンの卒業生なクィレル先生には、どう答えたら正解か……。
いやでも、この先生マグル学なんだよね……。
原作と全然キャラが違いすぎて、何も読めないんだけど……。


「……そうですね。でも、おかげさまで特に問題なくやれています」


返事に窮したのは、ほんの一瞬。
しかし、その一瞬があれば、相手にはもう充分だったようで。


「ふむ……。の友人と言っても、随分性格は違うようだ」


突然、ガラリ、とクィレル先生が雰囲気を変える。
狼が羊の皮を脱ぐように。
造作はなにも変わらないのに、その纏う空気は全くの別人だ。
そして、ふっと警戒する私……ではなく、その後方を透かし見る。


「実は私も、とは学生時代から付き合いがあるんだが」
「はい?」
「その時、座右の銘とも言うべき至言をもらった」


見ているのは……グリフィンドール1年生の固まった一角。
思わず振り返れば、なにかもめごとでもあったのか、 一部の人間がフィールドではなく、客席で騒いでいる。


「『本当に狡猾な人間は、もっと良い人間を演じる。それでこそスリザリン生だ』と。
奴に訊いたところ、それは元は奴の友人の言葉だと言う」
「…………」
「君だろう?その友人とは」


確認するようでいて、すでに確信を得ているような言葉。

が、私はそれに返答をする前に、 あっちの騒ぎの中心にいそうな親友に、色々と問いただしたい気分だった。

高校時代に想いを馳せてみれば、なんとなくそんな会話をしたような気がしなくもない。
ハリポタについて語るのは、あの頃の私たちのルーティンワークだった。
だがしかし。
それをまさかのスリザリン生本人に言うとはどういうことなのか。
しかも、この人、それを座右の銘にしてるとか言い出しちゃってるんですけど!?
え、つまり、さっきまでの猫かぶりモードは、良い人を演じてる結果ってこと?
……つまり、巡り巡って、 私 が !クィレル先生にキャラづくりさせた原因ってこと!?


「…………」


まさかの展開に、私は全力で責任を回避することにした。


「……例えそうであろうと、そうでなかったとしても、関係はありませんよ?」
「なに?」
「私は『最初にそれを言ったのが誰か』ではなく、 『誰がどんな時に言い出したか』の方が大切だと思っています」


そう。誰がどんなに立派なことを言ったとしても、 それが現状にふさわしいものなのか、 言った人がそれに見合った人なのか、 その如何によって、言葉が持つ力は、まるで違うものになる。
だから。


「先生に感謝の気持ちがあるというのなら、それはさんの物ですよ」


私は責任を全て丸投げした☆

感謝?いりません。
謝罪?致しません。
全て私の関知するところではございません。

にっこり、と気合を入れて笑ってみせると、 クィレル先生は一瞬だけ虚を突かれたような表情になったが、 やがてにやり、と。
至極彼によく似合う笑みを浮かべた。


「くくっ、なるほど?確かにそういう考えもある、か?」
「ええ。私はそう思います」


あはは、うふふと、お互いに笑顔で見つめ合っているのは、 傍から見たら和やかなシーンなのかもしれない。
だがしかし、蓋を開けてみれば、牽制と虚実の入り混じった実にカオスな空間であった。

と、流石にそんな周囲の盛り上がりに反して、妙に張り詰めた空間に耐えられなくなったのか、 これまでじっと黙っていたスネイプ先生が、おもむろに私を呼んだ。


「……ミス
「はい?」
「大変言いにくいのだが、良かったのかね?」
「?なにがですか??」


そして、全然意味が通じていない私の様子に、 先生はほんの少しの憐みを込めて、クィディッチのフィールドを指さした。


「試合はもう終わったが?」
「……え」


ぽかんと、芝生の上を見てみれば、 赤・黄の暖色チームが一斉に小柄な黒髪の少年をもみくちゃにしているところであり。
あー……。そういえば2戦目は速攻で試合が終わるんだったっけ?と、 賢者の石の一幕が思い出され。

私は人知れず、クィディッチの試合を見はぐったことに、うなだれた。





高校時代は時効でよくないですか?





......to be continued