新しい友人というのは、いつ出来ても良いものだ。 Butterfly Effect、21 その日、僕は早々にコンパートメントに乗り込んでしまったがために、 話題に乗り遅れる、という致命的な失態を犯した。 話題、それはそう。 優秀な純血の魔女、=に関するものである。 美しくも賢い彼女は、自分の友人の一人なのだが、 そんな彼女は、クリスマス休暇の少し前から家の用事でホグワーツを留守にしていた。 東洋人で遠慮深い彼女は、ひっそりと姿を消していたので、僕がそれを知ったのは、 今、ホグワーツ特急の中を席巻している噂と共にである。 「ねぇ、知ってる?」 「あの、が」 「東洋系優等生のが」 「クリスマス休暇が明けたら」 「許嫁を連れて戻ってきたんだって!」 …………。 ……………………。 ……がぁああぁああぁぁぁあぁぁあぁ!! ざわざわと、次々にコンパートメントを駆け巡ったその言葉に、 僕は綺麗に撫でつけておいた髪をかきむしりたくなった。 もちろん、高貴なるスリザリン生として、寸でで抑えたが! が? なにを? どうしたって?? その話を持ってきた奴によれば、 彼女がクリスマス休暇前に里帰りしたのは、婚約式をするためだの。 すでに卒業と同時に結婚することが決まっているだの。 荒唐無稽な話ばかりだった。 特に、公衆の面前で熱烈なハグやらキスをしただのという話には、 馬鹿馬鹿しい!と一蹴する以外、なにができたというのか。 あの慎ましいが、男とハグ?キス? そんなことするハズがないだろう!僕の最新式の箒をかけたって良い! こんな根も葉もない噂を流すだなんて、間違いなくグリフィンドールの連中の仕業に違いない。 全くもって腹立たしい! がしかし、一応! 念のために! 僕はクラッブとゴイルにが誰とコンパートメントにいるのか調べてくるように指示をしたのだが、 二人は、は廊下でワゴン販売の蛙チョコを箱買いしていた、と言うばかりだった。 いや、買ったの後を尾けたら良いじゃないか!と思わなくもないが、 なにしろ、そういった気の利いたことをするには向かないタイプというものがいる訳で。 結局、もやもやの解消されないまま、僕はホグズミードの駅に着いてしまった。 もちろん、ここでが誰と一緒にいるか見れば、噂の真偽なんてすぐに分かる。(十中八九、嘘に決まっているが) しかし、なにしろホグワーツ生が全員一斉に出てくるので、すぐに彼女の姿を見つけることはできず。 ようやく見つけたと思ったら、あの目障りなグレンジャーに、彼女は手を引かれていなくなってしまったのだった。 きっと、ウィーズリーだのポッターだのがいる馬車に連れ込まれたのだろう。 本当に、グリフィンドールの奴らと来たら、碌なことをしない。 心の底から腹立たしい。 腹立たしいのだが…… 「元気そうだな……」 何故だろう。 苦笑しながら、手を引かれて行ったの横顔に、こみ上げるのは安堵感。 それはまるで、ぽっかり空いた空洞が埋まったかのような感覚。 彼女がいなかった間は、そんなこと少しも気づかなかったというのに。 「…………?」 奇妙な感慨に首を傾げつつ、僕はがグレンジャーによって引き離された数人の人影に目を移す。 そこには、黒髪の少年と少女、そして銀髪の少年が立っていた。 どう見ても同級生か、少し下にしか見えないが、初めて見る顔である。 まぁ、僕も幾ら頭が良いといっても、同級生全員の顔など覚えている訳ではない。 がしかし、その3人は見たことがないと断言できるくらい、特徴的だった。 なにしろ、全員揃って美形だったのである。 まず、最も目を引く銀髪の少年だが、 彼は中性的で華やかな顔立ちに、長い髪が一見少女のようにも見えた。 しかし、その立ち居振る舞いに、女々しいところは一切ない。 そして、よく言えば涼やか、悪く言えば冷たい双眸は、ぞくりとするほど整っていて、 まるで芸術品かなにかのようである。 また、その少年に似た顔立ちの、黒髪の少年は、 色合いのせいもあるだろうが、銀髪の彼よりもどこか陰がある美少年だった。 だが、陰鬱としてはおらず、妖艶な雰囲気を醸し出している。 笑えば、女生徒が赤面して寄ってきそうなものだが、 不機嫌そうな表情に、近寄りがたい高貴さが感じられた。 普通、そんな表情をしていたら見苦しくなるものだが、彼に限っては例外なようだ。 そして最後の少女は、 「東洋人、か?」 肌の色合いが少年たちとは異なり、と同じくどこか象牙のような印象だった。 がしかし、健康的なと違い、全体的な顔色は青白く、儚げだ。 よくよく見れば、少しくせのある髪も漆黒というよりは茶交じりの黒であり、彼女と同じわけではない。 がしかし、その困ったような笑顔が、とどこか似ている気がした。 前の二人に比べれば地味だが、それでも遠目に見て十分分かるくらい整った容姿である。 少女の可愛らしい猫のような目が、黒髪の少年を見ており、 どうやら、3人が一緒に行動している様子が見てとれる。 ここで問題なのは、なぜ部外者がホグワーツの制服を着て、あそこにまとまっているか、だった。 「編入生……という奴だろうか」 多くはないが、全くいないわけでもない、という存在が真っ先に頭に浮かぶ。 もしくは、家庭の事情や、体調面などの問題で入学の遅れた生徒か。 どうして、がそんな彼らと一緒にいたかは分からないが、 噂のように許嫁を連れてきた、という感じではやはりないことに、僕はほっと息をつく。 仮に許嫁を連れてきたのだとしても、おまけの人数が多すぎるだろう。 やっぱり、あの噂はデマに違いない。 さて、安心したのは良いが、あの3人はこの後一体どうするのだろう? 僕らと同じように馬車で移動するのだろうか? それだったら、いっそ一緒に行くという手もあるが……。 と、興味本位で彼らを見ていた僕だったが、空いている馬車を見繕ってきたのか、 僕を呼ぶ大声×2が、少し離れた場所から響いてきた。 「……っ分かった!分かったから、そう叫ぶな!ゴイル!!」 流石に名前を連呼されるのは思春期としては気恥ずかしく、 慌てて静止した僕。 すると、一瞬視線を外しただけだったというのに、 あの3人組は、気づけば先ほどの場所から、すっかりと姿を消してしまっていたのだった。 いつものメンバーで馬車に乗り込み、 辿り着いたホグワーツ城で、僕たちは一旦、大広間に集合した。 幸い、荷物は列車に置いておけば勝手に部屋まで運んでもらえるので、もちろん手ぶらである。 がしかし、目の前で繰り広げられる光景に、 ちょっとした手土産の一つでも確保して、ポケットに忍ばせておくべきだった、と後悔した。 というのも、 「、貴女ちょっと見ない間に、なんだか大人っぽくなった気がするわね」 「えっ……そ、そう?あたしは最初から素敵に大人じゃない?」 「いや、君、大人っぽいところは大人っぽいけど、子供っぽいところは凄く子供っぽ……ぐへっ」 「は元々、落ち着いて素敵だったよ?」 「っっ!(いやんっ!ハリーが若干黒くなってて、きゅんきゅんするぅっ!)」 グリフィンドールの連中が、きゃっきゃとを囲んで談笑しているからである。 しかも、目障りなことに、一番教師席に近い、前の方で。 基本的に、こうして大広間に集まる時は、寮別に長机に座ることになっている。 なにか用があれば別だが、流石に、この雰囲気の中、ただ声をかけには行けなかった。 (普段ならばそこまで気にしないで済むけれど、流石に教師陣の目が痛い) 歯がみしながら、なにか口実はないだろうかと、 同じく先頭の席でグリフィンドールの方を横目で見つめる。 ……途中、ブレーズやら、パンジーやらが声をかけてきたが、 の方に気を取られていたため、何を話したか後で覚えていなかったりする。 そして、少しして、全校生が広間に集まったあたりで、先生方が壇上へと上がってくる。 いつもであれば、ここで校長が声をかけた後、会食が始まり。 その終わり頃に、校長のお有難い話、とやらを少しされて、校歌を歌って、解散である。 (ちなみに、あの校歌とやらは、一体なんの意味があるのか謎すぎる。 メロディーもそれぞれデタラメに歌うとか、音楽への冒涜じゃないのか??) がしかし、今回は、校長の簡潔な食事開始の合図はなく、 素晴らしい知らせが2つある、という前置きからまず話が始まった。 「まず、先日のハロウィンでは、トロールが入り込むという事故が起こったのは皆も知っての通りじゃ。 それに伴い、少しの間じゃが、闇払い局より、本校の卒業生を招いておる。 校内の警備をしてもらうつもりなので、なにかあれば頼ると良いじゃろう。 ああ、もちろん、悪戯など仕掛けないようにの」 すっと、校長の紹介に合わせて、舞台袖から長身の青年が現れる。 「シリウス=ブラックだ。よろしく」 耳触りの良い、低い声がそう言った瞬間、 生徒からは喜色に満ちた声が上がった。 「きゃぁ!格好いい!!」 「素敵……っ」 「ヤダ、どうしようっ!」 主に高学年の女生徒中心に、だが。 まぁ、それも無理はないだろう。 なにしろ、美形を見慣れた人間でも、思わず見惚れるくらいの男振りである。 同い年の男子を子供っぽいと辟易した目で見ている彼女らにしてみれば、 闇払いという花形の職に付き、見るからに育ちのよさそうな品のある顔立ちで、 しかし、どこか強引さも垣間見える彼は、憧れるに足る存在なのだろう。 間違いなく、彼の前には大したことのない相談で長蛇の列が出来るに違いない。 「っ……はぁ」 もっとも、スリザリン生は、どこか複雑そうな表情だったが。 ブラック家の長男と、その純血嫌いというのは、スリザリン生の間では有名だ。 上から五指に入る名門の家の跡取りが、グリフィンドール出身というのは、 僕たちの親世代に少なくはない衝撃を与えたらしい。 前に小耳にはさんだところによると、ブラック家の長男のようにはなるな、 と親に言い聞かせられて、入学の際に送り出された家が多いようだ。 僕も当然、関わり合いになるつもりはないが、 それでも、女生徒からすると、それはそれとして、格好いい男には近づきたいわけで。 結果、なんとも微妙な表情になってしまっている、と。 顔を顰めて視線を外そうとしても、ちらちらと見てしまうその頬は、軽く染まっていた。 「…………」 大体のことを見て取った僕は、その色恋に貪欲な姿勢に、 軽くどころか、大変呆れてしまうのだけれど。 いや、あんな血を裏切る者と付き合いたいだなんて、気が知れなさすぎる。 自分の先輩達がそんな様子では、うんざりとしか言えない。 好きになる相手くらい、もう少し選べないのだろうか。 そう、例えば僕のように! 横に目を滑らせれば、はにこにこと楽しげに壇上を見つめていた。 純血で成績優秀、かつ可愛いその姿に、なんだか誇らしい気持ちさえ湧いてくるから不思議だ。 どういう訳だかグリフィンドールなことだけがネックだが……。 スリザリンとグリフィンドールは合同の授業も何故だか多いので、 とりあえず、次の魔法薬学の時に、彼女には話しかけよう、と決意する。 と、僕の意識が壇上から盛大に反れだした辺りで、 ごほん、と軽い咳払いが聞こえてきた。 つられて正面に顔を戻すと、いつの間にかブラックが引っ込み、校長が前に出てきていた。 「続いて、編入生を3人紹介したい。 本来であれば、他の皆と同様に入学するところじゃったが、 家庭の事情で遅れてしまった、1年生じゃ」 言葉と共に、あの3人組が壇上に現れる。 見かけた時の予想通り、編入生だったようだ。 すると、周囲からは先ほど以上の感嘆の溜息やら、黄色い歓声など、好意的な声が多数聞こえてきた。 見目麗しい新人は、どこの寮でも歓迎らしい。 と、彼らに合わせて、マクゴナガルが壇の中央に、組み分け帽子をセットする。 どうやら、新入生として組み分けの儀を略式でやろうということらしい。 自身の寮が決まる瞬間というのは、やはり格別な物なので、 それを体験させようという学校側の意図が感じられた。 (何故だか、少女が一瞬地平の彼方を見るような瞳をしたが、まぁ、気のせいだろう) そして、衆人環視の中、まず銀髪の少年が帽子を被る(名前はヘビノというらしい。変な名前だ)。 帽子は僅かの間沈黙し、やがて高らかと寮名を…… 「……スリ……フィンドールぅ」 高らかに? 「はっきり言え」 「グリフィンドールゥ!」 いや、なんかかなり投げやりに発表したな、あの帽子。 しかも、なんだか泣きそうというか、しょぼくれてるというか? 「……今、完全に脅してたね」 『まぁ、君もやったことだしね。それくらいするよね』 あまり見たことのない反応に、周囲も軽くざわつくが、少年は気にした風もなく、 満足そうに一歩帽子から離れた。 一体何だったんだ、と思う僕たちだが、しかし、続いて黒髪の少年の名前が呼ばれ、 組み分けをされた時の衝撃といったら、その比ではなかった。 「続いて、リドル=スリザリン!」 「「「なっ!?」」」 スリザリン、それはこの学校に関係する者なら、いや関係していなくても、 反応せざるを得ない、強力な名前である。 偉大な、僕たちの創設者。 非情にして冷酷、だがなによりも強いカリスマ性で、純血を奨励した希代の魔法使い。 その晩年は謎に包まれており、グリフィンドールと決闘した後、学校を去ったと言われている……。 思わず周囲を見回すと、特にスリザリンの生徒は凄まじい表情で、 食い入るように黒髪の少年を見つめていた。 ある者は、陶酔したように。 ある者は、懐疑的に。 多種多様な感情が、彼にぶつけられる。 それはそうだろう。 この僕だって、スリザリンの直系がいるなんて話は聞いたことがない。 が、かといって、ただ名前が同じ生徒が、よりにもよってこのホグワーツに来るだなんて、 そんな偶然がそうそうあるとも思えないのだから。 かくいう僕も、瞬時に彼と今後どうやってお近づきになるかに考えを巡らせる。 とりあえず、幸い先頭の席にいるから、彼にまず話しかけて。 ホグワーツの細かいことや授業など分からないであろう彼に、親切に教えるのはどうだろうか? ああ、もちろん、父上にもふくろう便を飛ばさないと……! 父上なら、スリザリンの末裔について、なにかしら知っているに違いないっ 仮にサラザール=スリザリンとなんの関係もなかったとしても、 優秀な生徒であるならば歓迎だ。と同じく、僕の友達に相応しい。 ただものではなさそうな雰囲気のリドルに、周囲の期待が否応なく高められる。 と、彼はそんな期待に応えるかのように、一瞬笑みを浮かべて帽子をかぶろうとして。 「グリフィンドール!グリフィンドール!グリフィンドォオォール!!」 帽子は頭に触れる間もなく、狂ったようにグリフィンドールと連呼した。 「「「…………」」」 まるで、リドルに被られるのが嫌というか怖くて仕方がないかのように、叫んでいる。 その、どこかで見覚えのある光景に、 そしてなによりも、呼ばれるはずのない寮名に、周囲は呆気にとられるしかない。 (そっと周囲を見てみれば、スリザリンの監督生などは顎が外れそうなほど、大きく口を開けて固まっていた。気持ちは分かる) と、当の本人もこれには衝撃を受けたようで、 「な……っ!?」 「グリフィンドール!グリフィンドール!グリフィンドール!」 「オイ、待て!なんで僕がグリフィンドールなんかにっ」 「グリフィンドール!グリフィンドール!グリフィンドールって言ったらグリフィンドォオォール!!」 愕然とした表情で帽子を取り、抗議の声を上げるが、 帽子はそれをかき消すかのように、全く取り合ってはくれなかった。 いやもう、取りつく島もないとはこのことである。 「……どうしよう。軽くデジャブってるよ?」 『だからそれ、ジャメビュだってば。』 「なんでリドルさんグリフィンドールなん?」 『うん?君が前に脅したせいでしょ?』 「はい?」 『君がグリフィンドールって連呼されたのと同じ理由。 ホラ、君過去にあの帽子を“グリフィンドールにしないと燃やす”って脅したじゃない』 「…………」 『君の魔力は僕の魔力で、しかもリドルをほぼ構成してる魔力は僕のだからね』 「つまりは『あたし=スティア=リドル』的な?」 『的な』 「わーぉ。リドル、ドンマイ☆目指せ新天地!」 あちこちから、帽子がおかしくなった原因を考える声が相次ぐが、 なにしろ今後に関わってくることなので、そんなことはつゆ知らずに必死に帽子を揺さぶるリドル。 しかし、帽子が気を変える気配はまるでない。 そして、はっと気づいたスリザリン生が同じく抗議をしようとした、その瞬間だった。 バッコーン! 「ぅぐっ!?」 リドルの頭に、金ダライが降ってきた。 そして、どうやら当たってはいけない場所に当たったのか、 麗しの美少年は、バッタリ、とその場に昏倒する。 「……え、金ダライ??」 どこかで誰かが呆然と呟く声が聞こえる。 「……僕の目が確かなら、なにもないところから急に、 洗濯にでも使うような巨大なタライが現れたように見えたが」 「奇遇ね。私にもそう見えたわ、ドラコ」 と、いつの間にか僕の隣をキープしていたパンジーがうんうん、と頷く。 (確か、最初はそこにクラッブがいた気がしたんだが……クラッブはどこに行った) 同意を得られたことに、自分の目が錯覚を起こした訳ではないことを確認し、 僕は壇上へと視線を戻す。 (え、クラッブはどうしたかって?いや、もうそれはどうでも良いだろう) すると、いつもにこにこと笑っているルーピンが、いつの間にやら教員席から出てきており、 やはり、穏やかに微笑みながら杖を揮い、リドルを宙に浮かせた。 普段であれば、その笑みはヘラヘラして、なんとも情けない印象を受けるのだが。 「ひぃっ」 何故だろう、背筋がぞわぞわするような、妙な圧迫感を感じるっ というか、そもそも、生徒が昏倒しているのに、浮かべるのが笑顔というのはどういうことだ。 普通、ここは心配そうな表情の一つもするんじゃないのか? (っていうか、そのマリオネットのような吊り上げ方には、若干の悪意を感じるぞ……?) マダム ポンフリーはどうした? ……ああ、いつも通り医務室か。 そういえば、食事の時に見かけたことはほぼないな。あのご婦人は。 「ど、どうしよう。リーマスがご立腹だっ」 『あーあ。君がリドルとイチャコラしてたのが伝わったんだよ、あれ』 「イチャコラとか言うなし!っていうか、あのギャグみたいな金ダライ絶対お前だろ!?」 『そうだね。君がイチャコラしてたからだね』 「……もうヤダ!あたしの周りこんなんばっかかよ!!」 なんだか悲鳴のような声が聞き覚えのある少女から聞こえた気がしたので、そちらを見てみれば、 もその異様な笑みに驚いたのか、顔を青くして、壇上を見つめていた。 優しい彼女のことだ、誰かがケガをした、というそれだけでも、 きっと心を痛めていることだろう。 それなのに、その彼が宙づりだなんて、あんな表情になっても当然である。 こうして、波乱の組み分けはほぼ終わり、 騒然とした雰囲気の中、最後の少女が名前を呼ばれて、帽子へと歩みを進める。 「=!」 友人でなければ……さて、どうかな? ......to be continued
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