やばい時ほど、空元気! シリアスよりも、ギャグでいけ!! Butterfly Effect、15 オッス!オラ、。 てぇへんなことになっちまったなぁ。 スティアの奴がちゃんと説明しねーもんだから、 ハリポタ世界に来る時に、がはぐれちまったんだ。 おかげでサラも殺気立っちまうし。 なにかある前に早く追いかけねぇと! オラ、ぞっくぞくが止まらねぇぞ! 『……シリアスから一転、どうしたの?』 「ドラゴ〇ボール好きのぐりさんを思って、状況をを整理しようとしたら、何故か悟空調になった」 薄暗い、見るからに怪しい路地裏で。 行方不明になってしまった親友を、出来るチート男が探索する横にいたあたしは、 手持無沙汰なことも手伝って、阿呆な発言を心の中でかましていた。 で、そんなあたしの心が読めてしまう相棒――スティアさんは、 毎度のことながら、優しくもそれに付き合ってくれる。 真っ黒な猫なので、普通、こんな暗い場所だとその表情が読めないのだが。 まず間違いなく、いつもの通り呆れていることだろう。 あたしにしか聞こえていないが、声が完璧にそんな雰囲気だった。 だって、はまってる窓がことごとくひび割れてて、 地面にもガラスの破片が散ってて、 昼間だっていうのに薄暗い、ホラー感満載の場所なんだよ!? 少しでもギャグに走って、この恐怖感を紛らわせるしかなくない!? 『君がホラー苦手なのは分かったよ。 でも、下手なこと言ってると、そこの闇の魔法使いに殺されるんじゃない?』 ひょいっと、その子猫とも大人にゃんことも言えない前足が、 前方で厳しい表情をしている、もう一人の親友の横顔を示す。 で、その闇の魔法使いこと、サラはその失礼な物言いに対してはノーリアクションだった。 こちらを一瞥することすらなく、目を眇めて周囲の建物を見つめている。 愛しの彼女の気配を探ることに必死な彼は、あたしたちお笑いコンビに構っている場合ではないらしい。 『あれ、あの二人って付き合ってるの?』 「お前、分かってて訊くんじゃないよ。一方通行だよ」 もちろん、銀髪の彼から猫目な彼女へ、である。 今はあたしも彼も推定11歳ではあるが、 元の姿を思い浮かべると、改めて、何故ぐりさんはこいつに惚れないのだろう?と不思議である。 さらっさらの絹糸のような、長い銀色の髪。 どちらかといえば中性的な、整った目鼻立ち。 宝石のように真紅の輝く目は、何度見ても飽きない。 これでもやしっ子だったら台無しだが、もちろんそんなことはなく。 蛇野 サラという男は、ほどよく引き締まったすらりとした体躯の持ち主だ。 十人どころか、百人がすれ違っても百人振り返る、浮世離れした人外の美貌である。 性格はまぁ、若干の難があっても、許容できるくらいのレベルだろう。 それになにより、奴は気を許した相手には、水飴を煮詰めたのか、ってくらいダダ甘だ。 あの美形に特別優しくされたら、大方の人間はオチると思う。 かくいうあたしも、こいつがあたしに気があるかも!?って思った時は、ぐらっとなった。 『盛大な勘違いだね』 「そうなんだよ。昔っから、ぐりさんにぞっこんなんだよ」 で、そんなぞっこんLOVEなお嬢さんが、目の前で消えてしまった現状。 どう考えても、奴の臨界点はとっくに超えている……っ いわば、目の前にいるのは、宝物を奪われたドラゴンである。 怒り狂って、辺り一面を破壊しかねないくらい、やばい奴だ。 幸い、自分はその『宝物』の範疇に入っているので、危害を加えられたりはしないが。 そうでないものが、奴の気に障ったら、間違いなく危険だった。 どうか、このまま何事もなく彼女が無事に見つかりますようにっ! あたしは、力いっぱい、神に祈りを捧げた。(フリじゃないよ!?いや、マジで!) それから数分後、周囲の魔力を探っていたサラは、 ようやく「何日か前にここでなにかあったな」と、魔力皆無なあたしに状況を説明をしてくれた。 彼曰く、ここでぐりさんの魔力が一時的に暴走した気配がする、とのことである。 「魔力が暴走って……それ、ヤバイんじゃないの?」 思い浮かべるのは、呪文に失敗した時の爆発の類。 彼女に魔力があることは事前に説明されていたが、それが直接彼女を害するだなんて、とんでもないことだ。 がしかし、それに対して、サラは冷たい表情のまま、首を振った。 「どちらかというと、問題は魔力の暴走よりも、暴走のきっかけだ」 「はい?」 「も覚えているだろう?ハリーが魔力に目覚めるきっかけだ」 「え、ハグリッドに付け回された、あれ??」 『うん、違う(きぱっ)』 「ハリーは自分に危険が及んだり、不快になった時に、周囲に魔法を使っていただろう?無意識に」 「あ!」 そう言われてみればそうだ。 確か、ビッグディーとかいうブタちゃん達に追いかけられた時に、瞬間移動したりだとか、 マージおばさんに侮辱された時に、風船のようにしていたりだとか、ちょいちょい彼はやらかしていた。 「えっと、つまり?」 「ここでに危険が及んだり、が不快になったりした、ということだ」 「!」 この薄暗い場所で、危ない目にあった……。 そんなもの、ロクでもない想像しかつかず、思わず表情を顰める。 「一応聞くけど、あたし達とはぐれて怖くなった、とかは?」 「可能性は0ではないが、がその程度で魔力を暴走させるとは思えないな」 「0ではない」とか言いながら、その可能性はまるでなさそうな口調だった。 がしかし、あたしを無闇に不安がらせるつもりもなかったようで、 「あくまでも暴走は一時的なものだったようだ」と、彼は告げた。 実際に、彼女が危険な目にあった場合、ここら一帯はもっと凄いこと――更地レベルになっていたらしい。 …………。 …………………………。 ……あれ、おかしいな。 危険人物はあたしの目の前にいる、この男共のはずじゃなかったかしら? あたしの可憐で華奢なぐりさんに、そんなことできる力あると思えないんですけど。 『魔力が制限される君たちの故郷とこの世界を一緒にしない方が良いよ?』 「ふーん?」 『で、そんなことより、“これ”と一緒に危険人物とか言われるの、心外なんだけど』 「大元は同じくサラザール=スリザリンとかいう、超やばい奴だろうが」 サラに対する悪口は、大方の場合、自分にも返ってくるブーメランだって、そろそろ学習しろよ、お前。 「……原作のイメージのままでいられると、個人的に複雑なんだが。 というか、おそらく、の中のサラザールのイメージは、 ヴォルデモートを更に悪くした感じじゃないか?ひょっとして」 『まぁ、その人物像は“秘密の部屋”で憶測と推測と妄想が入り混じった奴だよね』 「そんな適当なものを根拠に親友に『超やばい』とか言われるのは、中々きついな」 『まったくだよね』 いや、それもあるけど、あたしがサラザール=スリザリンをやばい奴認定している原因の半分は、 目の前の連中が普段やらかしている素行である。 どっちもちょいちょい常軌を逸しているところがあるので、 あたしとしてはその大元であるサラザールは、やっぱり普通の奴じゃないと考えているだけだ。 で、多分、それは大方の人には同意が得られるものだろう。 こんな時ばかり結託している連中に、冷たい視線をプレゼントしつつ、 力いっぱい横道に反れてしまった話を、本筋へと戻す。 「で?ぐりさんが危険な目にあったのは分かったけど、 結局、この後どうすんの?後、追えるの?」 これで追えない、とか言われたらブチ切れるところだ。 で、魔法省を襲撃して、タイムターナーを強奪するとかしないといけなくなってしまう。 が、流石にそれは高スペック男子こと、サラなので、 路地の奥を指さして、「魔力の残滓はこっちに続いている」と、ようやくこの場から歩き出した。 そのことに安堵して、置いて行かれないように小走りでついて行ったあたしだったが。 そこからほんの少し進んだ先で、しかし、あたし達の足は不本意にも止められた。 「おや?迷子かい??」 というのも、どう見てもヘンゼルとグレーテルを食べてしまいそうな、 見るからに怪しい老女が、行く手を遮ってきたからである。 まぁ、あたし達は完全に魔法習いたて、もしくは未就学のお子様状態なので、 向こうにしてみれば良いカモだったのだろう。 しかも、かたや超絶美形ショタ、かたや珍しい東洋人の美少女(!)だ。 身なりも良いので、捕まえられれば、高値間違いなしである。 がしかし。 「嗚呼、丁度良いところに」 「ひぃっ」 『……、もうちょい可愛らしい悲鳴出せない?』 この、うっそりと微笑んだ美少年にだけは、声をかけてはいけなかった。 あたしは、その表情の恐ろしさに、ぶわっと全身を冷たい汗が滴るのを感じた。 あたしの恋人――リーマスの真っ黒スマイルも大概恐ろしいが、これは種類が違う。 威嚇も威圧もしていなくて。 ただただ、目の前に求めるものが転がってきたから。 だから、笑みが零れただけ。 そんな、自然な笑みだ。 ちなみに、この場合「求めるもの」とは、拷問相手に等しい。 「ササササ、サラっ!」 「おやおや、何をそんなに怯えるんだい?可哀想にねぇ。 こっちへおいで。お菓子をあげよう」 あたしは己の恐怖を押さえつけながら、必死に奴の犯罪行為を止めようと声を上げたのだが。 老婆は、自分に対して怯えていると勘違いしたらしく、 ニンマリ、とそれはそれは嗜虐的な笑みを浮かべた。 (違うよっ!お前じゃないよ!!) 「大丈夫だ、」 で、あたしが怯えている原因は百も承知だろう男は、 優しくあたしに向かってこう言い放った。 「露見しなければ、犯罪は成立しない」 それ大丈夫じゃないやつぅううぅぅー!!? この温度差、どうしてくれよう。 ......to be continued
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