Phantom Magician、モノローグ





親愛なるアルバス=ダンブルドア校長へ。
ダンブルドア校長へ。

こうして改まるとなんだか気恥ずかしい気もしますね。
えーと。なんだか改まると恥ずかしいな。

貴方がこの手紙を読む頃、私はこの世にはいないでしょう。
校長がこの手紙を読む頃には、あたしはこの世界にいません。

皆さんに向ける顔を持たない私に代わって、ダンブルドア、貴方に説明をお願いします。
なので、あたしに代わって、色々人脈のある校長に説明をお願いしたいと思います。(得意でしょ?そういうの)

全てが上手く行っていれば、ピーター=ペティグリューはアズカバンの監獄に入っているはずです。
あたしが上手くやっていれば、ピーターの馬鹿はアズカバンにいるはずです。

ポッター夫妻を裏切り、闇の帝王の手引きをしたのは自分だと告白している事と思います。
そこで、ジェームズとリリーを裏切って、闇の帝王を手引きしたことを告白してるだろうと思います。

彼に真実薬を飲ませたのは、私です。
奴に真実薬を飲ませたのは、あたしです。

私は彼の裏切りに気付き、それを利用して闇の帝王を失脚させようと考えました。
あたしは、ピーターが裏切っていることに気付いていました。(何故?とかは言わないで下さい)
だから、あたしはジェームズたちを逃がし、ポッター家で闇の帝王を迎え撃つことにしました。


結果は私以外の人の方がよくご存知でしょう。
結果は、まぁ、あたし以外の人の方が客観的に分かる気がしますが。上手くいっていると良いんだけど。

けれど、それをしたのは、私が正義の味方だったから、という事ではありません。
でも、勘違いしないで下さい。あたしは正義の味方だったから、そんな大それたことをしたワケじゃないんです。

私はごく一般的な人間です。
あたしは、ごく普通の。一般人です。

決して、勇猛果敢な騎士だったからではないのです。
決して、死をも恐れない、無敵の騎士様なんかじゃないんです。

英雄などではないのです。
あたしは、ヒーローなんかじゃない。

私は、私の大切な人々を守りたかった。
ただ、あたしは、あたしの大事な人たちを守りたかった。

それだけでした。
ただ、それだけだった。

その為に姿を消す私を、どうか許して下さい。
でも、合わせる顔がないから。いなくなるあたしを、どうか許して下さい。

貴方がたの記憶からいなくなる私を、どうか許して下さい。
臆病にも記憶からもいなくなるあたしを、どうか許して下さい。

今後、私に関する様々な憶測が飛び交うことでしょう。
この後、あたしに関する色々な噂をされると思います。

その度に、多くの人々にご迷惑をかけるかもしれません。
その度に、たくさんの人に嫌な思いをさせることになるかもしれません。

でも、これだけは分かって下さい。
でも、これだけは分かって欲しい。

私は、皆のことが大好きでした。
あたしは、リリーが、ジェームズが……皆が大好きでした。

これからもずっとその想いは変わりません。
これからもずっと、大好きで。

その想いを貫けた私は、幸せです。
だから、その想いを貫けたあたしは、きっと幸せです。



私から、最後にダンブルドア、貴方にお願いがあります。
あたしから、最後にダンブルドアにお願いがあります。

手紙と一緒に送るぬいぐるみとその中身を、ある時まで保管しておいて欲しいのです。
この手紙と一緒に送るクマのぬいぐるみを中身ごと、しばらく保管しておいて下さい。

そして、10年後、貴方の前にひとりの少女が現れます。
そして、10年後、貴方の前にひとりの女の子が現れます。

私に似た、可愛い少女です。
あたしに似た、それはもうかわいー女の子のはずです。

私が預けた物を彼女に渡し、彼女の助けとなって下さい。
あたしが預けた物をその子に渡して、入学手続きとか里親探しとか、色々助けてあげて下さい。

詳しいことはお付きの黒猫が分かるはずです。
詳しいことは、傍に黒猫がいるはずなので、そいつに訊いて下さい。

私と違って、好奇心と純粋な想いで一杯の少女です。
今のあたしと違って、好奇心とリーマスへの想いで一杯のちょっと痛い子ですが。

右も左も分からない彼女を、どうか宜しくお願いします。
これからのこともまるで分かっていないあの子を、どうか宜しくお願いします。

より。





......to be continued