友情が優しいものだって思ったら、それこそ甘いよ? やっぱり、厳しさも時には必要さ! Phantom Magician、105 夕食を食べに行ったら、大広間が大変なことになっていた。 え?具体的にどんなことになっていたかって? それはまぁ、うん。 普段口数の多い子達の口が、悉くアヒル口になってガァガァ煩かった、って感じかな。 そう、アヒル。 ちょっと唇が突きだしてる、とかそんなレベルじゃなくて、 人間にアヒルの口をくっつけちゃいました☆っていう本物の嘴だ。 ……一体、この学校はいつからこんな面白い所になったんだろう。 マスクとかそんな物でもないし、本人達がパニックを起こしているのを見ても、 これは本人達の望む所ではないのだろう。 グリフィンドールの人間にその被害は大きそうだが、 よくよく見てみると、学校全体で結構な数の人間が変わり果てた姿に変貌していた。 流石にちょっと予想外の光景にしばし呆然としていると、 アヒル口の一人が僕に気づき、広間の人間が一斉に僕の方を見た。 (ぶっちゃけ、ちょっと怖い) 「……うーん、と。これは僕の仕業じゃないなぁ」 とりあえず、日頃の行いに対する自覚はあるので、弁解を図ってみる。 いや、まぁ、正直、とてもとてもとても愉しそうなんだけど。 僕も仲間に混ざれるのなら混ざりたいっていうか、 なんで僕はこうなるその場にいなかったのか過去の自分が悔やまれて仕方がないんだけど。 でも、本気で僕の悪戯じゃないよ?うん。 さっきまで、僕クィディッチの練習してたし。(アリバイはばっちりさ!) 嗚呼、でも体の一部を変えるとか面白そうだよねぇ。 今度スニベルスの奴の鼻を豚っ鼻に変えてやろうかなぁ、ホラ、僕、変身術大の得意だし? と、周囲にしたら大層、性質の悪いことをこっそりと計画していたせいか、 アヒル口の皆さんは、それは目の色を変えて僕に詰め寄ってきた。 「……あ、まずい」 我ながら、表情に説得力がなかったのかもしれない。 (いや、だってこんな面白い光景中々見れないよ?普通笑うって) 殺気立った様子の彼らに、これは逃げるしかないか、と踵を返しかけたところで、 ガシィッ と、僕は体中を何本もの手で拘束されたのだった。 「うわっ……!ちょ、僕じゃないよ!?」 「知ってるグァ!助けてくれグァ、ジェームズグァ!」 「うえぇぇ!?っていうか、君たちそれしゃべりにくくない!?」 とりあえず、僕を痛めつけようという感じでもなかったので、とりあえず、暴れるのを止めてみる。 すると、僕に縋り付いてきた面々はそれぞれ一斉に口を開いて一生懸命に事の次第を説明しだした。 グワグワガァガァ煩かったが、まとめてみると、 「シリウスとの仲違いの話をしていたらキレたシリウスに呪いを掛けられた」ということらしい。 通りで、噂話とかが好きな子とかばっかりだと思ったよ。アヒル口。 前も面白おかしく二人のことは噂になっていたが、その時よりシリウスは余程恐ろしい表情だったそうだ。 呪いの事は、この事態を知った先生方が怒髪天を突きつつもどうにかしてくれると思うが、 シリウスの機嫌を直すのは僕しかいない!ってことで白羽の矢が立ったらしい。 「正直、そこまで期待されても困るんだけど」 「「「お前以外に誰がいるんだグワッ!」」」 「……んー、リーマスとか?」 「「「いない人間に言えるはずがないガァ!」」」 「え、そうなの?図書室にでも籠もってるのかな?」 「「「良いから早くどうにかしてくれグワッ!あんなシリウス怖すぎるグァ!!」」」 ……いやぁ、多勢に無勢ってこういうことを言うんだよね、きっと。 ピーターはすっかり縮こまってて、まるで役に立たないし。 はぁっと大きな溜め息を突きつつ、仕方がなしに僕は空きっ腹を抱えつつ、大広間を回れ右で立ち去った。 「あ、後で今日の写真もらおうかな。良い取引材料になりそうだ♪」 その後、見るからに不機嫌そうなマクゴナガル先生を鎧を盾にすり抜け、 僕はなんとなく、辺りを見回しながらてくてくと歩を進めた。 片手にはチキンやらなにやら盛りだくさんのバスケット(厨房でGET)を装備していては、 まるで説得力がないかもしれないが、これでもれっきとしたシリウス捜索隊(隊長兼隊員)である。 ホグワーツは冒険しがいのあるそれはもうだだっ広い城なので、人ひとり探すとなると大変だ。 なんで、そんなできるだろお前!って感じで押しつけられるかなぁ? いや、まぁ、できなくもないんだけどね? 仕方がない。これもホグワーツ生から僕に対する期待値の高さとでも思っておくか。 そう、ひょいひょいと気軽に階段を上り、僕はある場所を目指していた。 その足取りにはもちろん、迷いなんて物はない。 伊達に何年も親友をしている訳でもないので、シリウスの行き先もある程度推測できるのだ。 で、道中考えるのは、シリウスの怒りを鎮める(?)ための情報整理である。 「前にもとの間に不名誉な噂はあった」 がしかし、その時シリウスはに対して怒っても、周囲に対して攻撃まではしなかったはずだ。 (睨み付けたりするぐらいはした気もするけど) 「なら、今回ではなく、周囲に対して怒ったのは何故か? 考えられる可能性としては二つある」 一つは、あまりに彼らの物言いが悪意に満ちていた場合。 だがしかし、それにはシリウスに対して好意的な態度を取っている人間も多かったことから否定される。 なら、もう一つの可能性。 「全面的に、シリウスが悪かった場合だ」 僕が思いつくのは、そのくらい。 仲違いをするにも、原因のひとつくらいはあるだろう。 なら、その原因が一方的にシリウスによってもたらされたものだったとしたら? 「自分が悪かったら、八つ当たりぐらいしかできないよね」 スニベルスやスリザリン相手ならいざ知らず、それ以外の人間であれば、 シリウスはそこまで理不尽な言いがかりを付けたりしない。 喧嘩にだって、それなりの理由があるし、 そういう場合、シリウスはその理由を真っ直ぐに怒鳴ることだろう。 彼にとって、自分の主張を言うのは全く持って悪いことではないからだ。 自分が言っていることの正しさを、彼は決して疑わない。 でも、アヒル口の人たちの話を聞くところによると、 シリウスはただ煩いとばかりに手当たり次第、呪いを掛けまくっていなくなったらしい。 それはもう、悪魔のような形相で。 「つまり、自分が悪いって自覚があるってことだね」 とまぁ、大体の推察と今後の計画を立てた所で、僕は目的としていた場所に辿り着いた。 「あら?もう戻ってきたの?あの子といい、貴方といい、忘れ物かしら??」 「やぁ、レディ。 偶には自分の部屋で静かに食べようって話になったんだ。人気者は辛いね」 「まぁ。嘘をおっしゃい。また何か悪戯でもしたんでしょう?」 「あは!ばれたか!という訳で、中に入りたいんだ。いいかい?」 「仕方がないわね。では、合い言葉は?」 「『小鬼』」 プライベート空間っていったら、やっぱり自室だよね。うん。 さっさと肖像画の穴をよじ登り、僕は一路自分たちの部屋を目指した。 夕食の時間なので、寮はガランとしており、すれ違う人もいない。 まぁ、だからこそ、シリウスも戻ってきたのだろうが。 「悪戯するには最適な時間なんだけどねぇ。今はこっちが優先っと」 コンコンコン、と、軽い音を立てて僕たちの部屋の扉をノックしてみる。 もちろん、返答なんてなかったが、そこはさくっと無視して僕は扉を開けた。 「シリウスー?入るよー?良いねー? っていうか、僕の部屋でもあるから拒否権はないよー?」 「…………」 部屋の中は、夕日に照らされて、燃えるように真っ赤だった。 だが、日が当たらない場所は寧ろその明るさとは対照的に暗く、 物の陰は、一瞬何があるかも分からないほどである。 そして、シリウスはその闇の中にいた。 「うわぁ、暗いなぁ。僕みたいに目を悪くしても知らないよ? 眼鏡のシリウスって、まぁ、それはそれでモテそうだけど」 にこにこと、いつも通りの態度で声を掛けてみるものの、 ベッドでふて腐れたように寝っ転がるシリウスは、視線を寄越す位しか反応しなかった。 なんていうか、警戒している野生動物みたいである。 ふむ。なら、野生動物を手懐けるために一番有効なのってこれだよね。 「はぁ、僕もうお腹ぺこぺこだよ。シリウスもだろう? 君の好きなチキン持ってきたよ。いる?」 「……いる」 すなわち、餌付け。 唯でさえ、なにかとお腹の空くお年頃なので、大丈夫だとは思ったが。 案の定、シリウスは不機嫌そうにしつつも、のっそりとベッドから起き上がってきた。 ……あっさりしすぎてて、ちょっとつまらないんだけどね。 まぁ、いいや。 差し出された手に、ひょいっとお目当てのチキンを渡して、僕もパンやらバターやらを手にする。 そして、無言で咀嚼すること約一分。 この空気に耐えられなくなったのは、やっぱりシリウスの方だった。 彼はそれはもう、人相の悪い表情で、正面を睨み付けるように口を開く。 「……なんだよ」 「うん?」 「なにか言うことがあって来たんじゃないのか」 「うーん。いや、別に?」 がしかし。 僕、君の親じゃないんだからさ。 そんな優しく懺悔聞いてくれると思ったら大間違いだよ? 「…………じゃあ、なんでっ」 「え?なんでここにいるかって? そりゃあ、もちろん、とばっちりから逃げてきたに決まってるじゃないか」 爽やかな笑みと共にそう断言すれば、シリウスは絶句したらしい。 目をまん丸に見開いて、水魔みたいにぱくぱくと口を開閉していた。 この状況だ。 友情に篤い僕なら、普通「どうしたんだ」とか色々言ってくると思ったのだろう。 その認識は間違ってはいない。 でも、僕はなにより面白いことが好きだし、 それになにより、そこまで面倒見が良い訳でもないのだ。 ついでに言えば、悪いことを悪いと自分から言えないような、臆病者を親友だと思ったことはない。 だからねぇ、シリウス。 「まぁ、君がなにか話したいなら、聞くけどね?」 「…………っ」 やっぱりさ。君からちゃんと話は振ってくれないと。 仲良きことは美しき哉って僕も思うし。 で、結局聞かされたのは、に対する愚痴の数々だった。 傷つけてやろうと思っても堪えないだの。 そのくせ、変な所で泣きそうだっただの。 罪悪感を感じてやる必要はないはずなのに、罪悪感が消えないだの――… うん。正直うじうじしてて、鬱陶しいとか思った僕は正常だと思う。 リーマスじゃないんだからさ。 そういうの、似合わないんだよね、シリウスって。 普段、シリウスはあんまり悩んだりしない人間なので、 一度深みに嵌ってしまったら、そのまま抜けられなくなってしまったらしい。 いつもの姿からは想像できないほどぼそぼそと小さな声で、 彼はどうしたらいいかと悩み果てていた。 放っておくと、いつまでーも、続きそうである。 なので、僕は仕方がなしに、この間リーマスに言ったのと同じ問いをすることにした。 「あのさ、シリウス」 「……あ?」 「つまり、君はどうしたいの?」 敢えて、にどうして欲しいのか、とは訊かない。 答えは分かりきっているからだ。 「俺は……」 シリウスは迷いのためか一瞬だけ瞑目したが、 やがて、それを振り切るように僕を真っ正面からキッと睨み付けた。 「あいつが嫌いだ」 「正直、今でも何を考えているか分からないあいつが嫌だと思う」 「でも、さっきは、その……少し言い過ぎだった気がする」 「うん。は今日、誕生日だったしね。 それも、親元離れて初めて、とかじゃないのかな。多分。 それなのに『気持ち悪い』だのなんだの散々言われたら、普通ショックだよね」 「ぐっ!」 淡々と、事実を突きつけると、 シリウスの表情が罪悪感で歪んだ。 でも、それはさっきまでのうじうじしてるのよりは大分さっぱりしていて。 「だ、だから。悪かったって、思ったんだよ!」 うん。それでこそ、僕の友。 「はいはい。で、じゃあ、に謝りに行くんだね?」 「……う。いや、その」 「……シリウス?」 「いや、行く!行くが……あいつ、いないんだよ」 「は?」 「だから!がいないんだよ。寮にも、大広間にも」 話によれば、一応、呆然とした時間が過ぎ去った後、 なんとはなしにのことを探してはみたらしい。 がしかし、最近分かって来たの行動範囲を幾ら探しても、それらしい影は見えず。 恥を忍んで自室の扉も叩いては見たものの、反応がなかったんだそうだ。 「まぁ、でも、普通そういう場合って部屋にいたって、居留守使うよね」 尋ねてくるのがシリウスだろうが誰だろうが、それなりの騒ぎの後だ。 大体の人間が、面倒事を避けるために無視するのではないだろうか。 そう指摘すると、それももっともだと思ったのか、 シリウスは懇願するように僕に大して「の部屋へ行って欲しい」などと言い出した。 呼び出してさえもらえれば、ちゃんと話をする、とのことである。 とりあえず、シリウスは一度言ったことは守る人間なので、 これも乗りかかった船ということで、僕はの部屋へと向かった。 すでに騒ぎからそれなりの時間が経っているので、も落ち着いているだろう。 そう思って、特に構えることはせずに扉をノックする。 コンコンコン 「ー?いるかい?僕だよ、ジェームズ」 『……ジェームズ?』 がしかし、シリウスと同じく反応がない。 とりあえず、ぴったり扉に耳を押し当ててみたところによると、 軽く咳が聞こえたので、中にいるはずなのだが。 「……って、咳? オーイ。?ひょっとして、具合悪いのかい?」 『……まぁ、その内分かることだし、良いか。放っておくと煩そうだし』 ドンドンドン、とノックの手を拳に変えて叩く。 すると、ほんの僅かな間を置いて、ガチャっと鍵が開くような音がした。 「?あれ、??」 足音もしなかった上に、扉も開かなかったので不思議に思ってノブを回すと、 いつもと違って、抵抗なくそれは動く。 なので、これ幸いと扉を開くと、爛々と輝く金色の光が一対、僕を正面から睥睨していた。 「!」 『病人の前では静かにしてよね』 の猫がベッドの隅で立ち上がる。 明らかに歓迎していないその様子に、思わず苦笑が漏れるが、 それより気になるのはベッドでぐったりとしているだった。 「……?」 偶にゲホゲホと咳き込む彼の表情は、それはもう苦渋に満ちた物である。 顔色は夕日のせいでいまいち判然としなかったが、ひょっとすると赤いのではないだろうか。 顔の脇を、汗がキラキラと彩っていた。 「参ったな。こういう場合はマダム ポンフリーを呼んできた方が良いのかな?」 『精神的な物だと思うから、無駄な気もするけどね』 と、僕の独り言に、にゃーお、と思わぬ返答があった。 びっくりしてそっちを思わず見ると、珍しく僕を睨むでもなく見つめてくる猫。 えっと、今のはそうしろって事で良いのかな? じゃないんだから、猫の言葉なんて分かんないんだよね。 が、どう考えても、僕に対して何か言ったとしか思えなかったので、首を傾げる。 「……僕、君に嫌われてると思ってたんだけど」 『うん。嫌い。でも、僕は心が広いから話くらいはしてあげるよ』 ……こっくり頷かれた。 これは僕でも肯定だって分かるなぁ。嫌なことに。 「んーと、僕はね、シリウスの頼みでを呼び出しに来たワケ。 謝りたいんだってさ。でも、この分だと……」 ふしゃーっ!! 「無理だよね。分かってるよ」 うーん、と腕を組んで頭を捻る。 シリウスの仲直り大作戦(?)はこうなったらまず無理なので、 の回復を待つしかないっていえばないんだけど。 それだと、僕がここまで出張ってきた意味がないような気がするといえばするような。 正直、え、僕の出番は?って感じ。 シリウスの愚痴聞いただけ?? 「それはなんていうか……悪戯仕掛け人の名前が廃るよねぇって、ん?」 と、なんとはなしにあたりを見回した僕だったが、 こざっぱりしたの部屋の隅に、場違いな様子で段ボールが積まれているのを発見した。 ?家族からの差し入れ、とかかな?? その割には、フクロウ便の時間にこんな大量の段ボールを見たことがないのだが。 ちょっと気になったので、に悪いと思いながらも、蓋を開ける。 すでに中身を確認するためか、丁寧にガムテープがはがされていたので、 すんなりと開いたそこには、ぎっちりと本が詰まっていた。 『あ、ちょっと待っ……!』 「これは……ジャパニーズコミック?」 柔らかい線とカラフルな色で、可愛らしい少女やら少年やらが描かれた冊子。 ひょっとして、これはマグルの間で大流行しているっていう、日本の MANGA じゃ……!? 文字が読めないことがあれだが、その繊細なタッチなどは大いに興味をそそる代物だった。 コミックって絵だけでもなんとなく中身が分かるから良いよねー。 ええと、なんだろう、この本はこのうさ耳男がヒロインの女の子大好きっていう話で良いのかな? あれ、でも、この女の子なんか見事なストレートパンチ繰り出してる……。 と、僕が次々に別の本を取っていると、 『人のプレゼントを先に見るな、馬鹿!』 ダッと駆けてきた猫が段ボールに飛び乗って、蓋を閉めてしまった。 『突然ふらふらしたかと思えば、めざとくこんなもの見つけるなんて……! だから、僕こういうタイプ苦手なんだよっ』 「ちぇ。良いじゃないか。少しくらい。 あー……なんか今、良いことを閃きそうだったのに」 ……あ。 いや、寧ろこれは閃いたことにすれば良いのか? そうと決まれば善は急げ!とばかりに彼に改心の笑顔を向けてみる。 『!……知ってる。僕知ってるぞ、そういう表情!』 すると、ざっと嫌そうに猫が引いた(失礼な) 「猫君、猫君。ちょっとこの漫画貸してくれない?」 『なっ!ふざけ……!』 「そう警戒しなくても、に悪いことはないって。 いや、寧ろ喜ばせるのに、これがいるんだよ。うん」 『!?』 にゃごにゃご、と明らかに抗議してそうな様子の彼に、 それはもう、茶目っ気たっぷりなウインクを送る。 実際は、まだなんにも考えてないっていうか思いついてないんだけどね! こういう時に必要なのは度胸と勢いさ! 「あ、ひょっとして、これってへの誕生日プレゼントだったりする?」 『そうだよ!なのに、なんでお前に貸さなきゃいけないんだよ!?』 「んー……じゃあ、借りてくの悪いかなぁ」 『……なんだ。分かってるんじゃないか』 「分かった!じゃあ、が寝てる間だけ!! 貸してくれたら、のために色々頑張っちゃうよ、僕。 誕生日なのにいじめられたって言い回っても良いし、 可哀想に部屋で寝込んでるって同情を集めても良い。 っていうか、貸してくれないなら、マダムを呼ぶのを全力で阻止するかな☆」 『 や っ ぱ り 分 か っ て な い……!』 その後、大いに不満そうなの猫をなんとか言いくるめて、 僕は意気揚々と段ボールを一つ片手に自分の部屋に戻っていった。 もちろん、忠犬宜しく僕の帰りを待っていたシリウスに盛大に怒られたのは言うまでもない。 もっとも、自分に甘くなるのはまぁ、しょうがないんだけどね。 ......to be continued
|