男の子が一度は憧れるものだよね。尾行とかって。
たださ。






Phantom Magician、97





「かくかくしかじか――っていうことだから、 明日からのストーキングしに行こう☆」
「はぁあぁ!?ジェームズ、お前なに言って……」
「え?なにって……決定事項?」

「……はぁ」


突拍子もないことをあっさりと告げるジェームズに、 いつもの事とは思いながらも、僕は大きな溜め息を我慢できなかった。

彼が満面の笑みで、新しい悪戯道具を作りたいと言い出したのは、 夕食も食べ終わり、寮の自室で皆が寛ぎだした頃だった。
それはもう得意そうに、楽しそうに、彼はこれから作るという『地図』について語った。
現実的には、それはかなり大変な作業を伴うだろうと思うのに、 気づけばシリウスはもちろんピーターでさえどこか興奮気味にその悪戯道具作りに賛成していた。
相変わらず、ジェームズの人を巻き込む力と、そのアイディアには脱帽せんばかりだ。

ところが、気分を散々盛り上げた後に告げられたへのストーカー宣言に、 部屋の空気が一気に微妙なものへと変貌する。
しかも、決定事項らしい。
こう言い出したジェームズは止まらないので、僕は非難がましい目と溜め息を彼に向けるだけに留めた。
所謂、言っても無駄、という奴なので、いらない労力は払わないに限る。
しかし、


をストーカー……ね」


言葉だけ聞く限りは、なんて現実味がないのだろう。
今現在、全力で避けている相手に、自分から近寄っていくだなんて、ゾッとしない考えだ。
十人が十人、意味が分からないと言うだろう。
だが、ジェームズが語った彼の後を尾ける理由も、まぁ、分からなくはない。

なんといっても、という転入生は、謎なのだ。
表面上はとても分かりやすい性格をしていると思う。
けれど、思うだけだ。
本当は腹の底でなにを考えているのかも、私生活も、生まれ育ちも、確かなことはなにも分からない。
何故ホグワーツに来たのかも、ほとんど推測の域を出ないものばかりだ。
以前、ジェームズは彼が闇の帝王の手下ではないかと疑ったことがある。
今はどうだか知らないが、それほど、彼の突然の転入は不自然だったのだ。
しかも、落ちこぼれであるならともかく、その魔法の腕はとても同世代のものとは思えなかった。
徐々に周囲に味方を増やしている手際といい、彼は怪しい。怪しすぎる。
だから、そんな彼の行動を逐一見張る、というのは地図作りという口実がなくとも、 やって損はない行動のように思えた。
……個人的な想いは、置いておいて。


「〜〜〜〜〜ジェームズっ!」
「うん?なんだい??」


シリウスはその後もしばらく粘って反論していたが、ジェームズはニヤニヤと笑うだけで、 全く聞く耳を持たなかった。







あくる朝、結局ジェームズに言いくるめられる形で、僕たちは談話室に集合していた。
僕とシリウスは透明マントを被って、ジェームズとピーターはそのままの姿で。
……本当はみんなで被りたかったのだが、全員はとても入らなかったので、 と比較的(?)関係が良好な人間が外に出たのだ。
(ピーターは毛虫のごとくに嫌われているが、基本的に無視されるだけなので、 僕やシリウスのように険悪な雰囲気は生み出さない)

そして、6時半頃、リリーがジェームズを華麗に躱して彼の部屋に行き。
いつも通り、どこか眠たそうにしているの手を引いて、 彼の黒猫とともに談話室に登場する所から、僕たちの尾行作戦は始まった。


「やぁ、、エバンズおはよう」
「んー?おはよ……」
「…………」
『あーあ、無視されてやんの』


とりあえず、普段通り朗らかに挨拶を試みるジェームズ。
すると、は眠そうではあるが一応挨拶を返してくれたのに対し、 リリーは見るのも嫌だというように、の腕を取っていなくなってしまった。


「……ジェームズ。そんな羨ましそうな表情カオするくらいなら、 こんなこと言い出さなきゃ良いのに」
「深く考えてなかったんだろ」


思わず、といった調子で呟くと、必然的にペアになったシリウスがうんざりしたように応えてくる。
あの二人が恋人かと疑われるほどに仲の良いことは周知の事実だ。
ここしばらく、リリーがジェームズとを近づけないために始終一緒にいる (多分ジェームズが余計なことを言ったんだろう)こともあり、 彼の後を尾けようとするなら、彼らのイチャつく様子(?)を見続ける羽目になるということは、 まず思い当たるべきことだった。
ただ、普段は頭が回るくせに、そういう肝心な所で機能を停止している頭は酷くジェームズらしいとも思う。

そして、ジェームズは「つれないなぁ。相変わらず照れ屋さんだね」などと嘯きながら、 ピーターを促して彼女たちの後をついていく。
それはリリーがぎりぎり許容する程度の、絶妙な距離だった。
それを見て、僕とシリウスはジェームズとリリーの間に入るように歩を進める。
ただし、ホグワーツの廊下は靴音が反響しやすいので、近づきすぎないようにしないといけなかった。
ふと、黒猫が後ろを振り返った瞬間にこちらを見た気がして心臓が跳ねたが、 いや、ジェームズを見ているに決まっていると、自分の思い過ごしを諫める。
とりあえず、今のところは隠し通路などをが使う気配はない……。

そして、大広間へ向けて、慎重に彼女たちのあとを尾けていたその時、 不意に、隣で黙々と歩いていたシリウスがぽつりと口を開いた。


「……この間は悪かったな」
「え?」


唐突な謝罪に疑問符たっぷりの状態で彼を見る。
がしかし、その視線の先に大きな鳥の絵があるのを見て、なるほどと合点がいった。


「……もう良いよ。ないものはないんだから」


それは、先日の満月の夜のこと。
彼らと入れ替わるようにいなくなった、あの鳥が落としていった羽を僕が拾い。
それを見たがったシリウスに渡したところ、彼の手が触れた途端に消えてしまったという事件があったのだ。
まるで夢幻かなにかのように。
多分、それは彼のせいではないと思うのだけれど、シリウスはそのことをまだ気に病んでいたらしい。


「あの後、リーマスがねぐらにしてると思うとか言ってたから、 一応もう一つくらいないかと思って探したんだけどな。
鳥はいないし、特に痕跡みたいなものもなかった」
「そっか。まぁ、仕方がないね」


嘆くシリウスに、軽く応じる僕。
そのあっさりとした態度にシリウスが片眉を上げる気配がした。
その声は、どこか納得しかねる、といった声だった。


「けど、羽ペンかなにかにするつもりだったんだろう?」
「まぁね。凄く綺麗だったし……お守りになりそうだったから」
「なら、どうしてそんなに……」
「うん。だって、普通の鳥じゃなさそうだったし」


確かにショックはショックだったのだが、目の前で羽が消えたと同時に、酷く納得したのだ。
嗚呼、やっぱり。
彼は、普通の鳥ではなかったんだ、と。
だから、羽も残らないんだ、と。


「『幸せの青い鳥』とかいう奴か?本当にいるのか、そんなもん」
「いたんだから、いるんじゃないかな?
それに、例えあの鳥がただの鳥でも、鳥の幽霊でも、いっそ化け物鳥だったとしてもさ。
僕にとっては『幸せの青い鳥』だったよ」


たった二回しか逢っていないけれど。
その優しい眼差しも、声も、言葉も、全部が全部僕にとっては奇跡みたいなもので。
それに、彼はまるで全てを知っているかのように、素晴らしい友人を連れてきてくれた。
もちろん、ただの偶然かもしれない。
でも、事実はどうでも、僕がそう感じたから。


「だから、良いよ」
「……そうか」


もしかしたら、友人が僕の側に来てくれたことで、彼はもう姿を現さなくなるかもしれない。
それは少し寂しいことだけれど、でも、ならばと願わずにはいられない。

大好きな人と一緒に、いたら良い。
逢いたくて逢いたくて、でも逢えないという、僕とは違う人狼と。
僕の側にはいなくても良いから。
ただ、君もどうかどうか、幸せに。







結局、その後、二校時目の授業までは特に大きな動きを見せなかった。
まぁ、僕たちだって、毎度毎度抜け道を使う訳ではないので、それについては仕方がないと思う。
でも、そろそろ、後ろの柱に隠れているジェームズが飽きてきそうだなぁ、なんて思っていると、 隣から鋭い舌打ちが聞こえてきた。


「……はぁ。シリウス?」
「あ?」
「君って、張り込みとか向いてなさそうだよね」
「はぁ?」


彼の目指しているという闇払いの任務は、なにも華々しいものばかりではない。
中には身を隠す場合もあれば、長期間捕まえる相手を張り込むこともあるだろう。
(正直、なにをやっても目立つ人間なので、潜入捜査とかは無理だと思う)
それなのに、たかだか数時間で根をあげるなんて……と、そのことを軽く指摘しようかと思っていると、 ふと、前を歩いていたたちにようやく動きがあった。
騒々しい足音を立ててやってきたのは、同じグリフィンドールだけでなく、各寮の下級生の女子たちだ。
は寮関係なく、後輩から慕われているらしい。今日見ていただけで何度も話しかけられていた)


先輩!助けて下さい!マートルが……っ!」
「……うわぁ、マジか」


目に涙を溜めて悲痛な表情をしている少女に、天を仰ぐ
?マートルがどうしたっていうんだ??
それに、なんでそれでに……。

さっぱり事情の飲み込めない僕たちだったが、リリーはそれで話が通じたらしく、 「じゃあ、次の教室に荷物を持って行ってあげるわ」などと言って、と別行動を始めるのだった。

僕たちは、下級生を慰めながら嘆きのマートルのトイレを目指す彼の後をひたすらついていく。
ちらりと後ろを振り返ってみると、ジェームズとピーターも、動きがあったことが嬉しいらしく、 先ほどより幾分明るい表情で鎧の陰に隠れていた。


『ここからだとマートルのところまで遠いね。丁度良いからショートカットしようか』
「んん?んー」
「?どうかしました??」
「いやいや、なんでもないよ?ちょーっと良いこと思いついただけ」
『じゃあ、そこの絵にじゃんけん勝負ふっかけてみてくれる?』


と、そこで急にはとある絵の前で立ち止まった。
あそこにあったのは確か……つぎはぎの隠者の絵だったような?
そんな風に思っていると、は至極朗らかに絵に向かって話し始めた。


「こんちわー」
“おお。何用じゃね?お若いの”
「いやぁ、突然ですけど、じゃんけんしません?」


は?じゃんけん??


“ほう。このわしにじゃんけんを挑むとは”
「あのー、先輩?えっと、その、マートルが……」
「いいからいいから!じゃーいくよ!さいっしょはグー!じゃんけん――


戸惑う周囲なんて完全無視で突然、絵とじゃんけんをしだす
まずかけ声からして謎なんだけど、その勢いに負けたらしく、隠者はチョキを出してきた。
ちなみに、の出した手はグー……の勝ちだ。


「いーよっしゃああぁぁああぁ!」
“ぐぬぬぬぬ。宣言通りグーを出すとは……裏の裏をかかれたかっ”
『いや、宣言じゃないよ。ただのかけ声だって。日本式の』


悔しげに表情カオを歪める隠者に対して、過剰なまでに喜ぶだった。
いやもう本当に彼はなにがしたいんだ謎すぎる……と、 奇想天外なことを特に求めていない僕なんかは思っていると、 ひとしきり地団駄を踏み終わった隠者はやれやれと首を振り出した。
そして、


“わしに勝利した偉大なる賢者に、道を差し示そう”


彼がカンテラを掲げて頭を下げた途端、カタン、となにかが外れるような音がして、 突然絵の後ろにぽっかりと階段が口を開いた。
(ちなみに、それを見た瞬間、シリウスの口もぽかんと開いた)


「ええぇえ!なにそれ偶にじゃんけんやろうとか言ってたの、そういう意味があったのかい!?」
「しーっ!じぇ、ジェームズ聞こえちゃうよ……っ」



予想だにしない、いきなりの隠し通路発見に、背後からも驚きの声が聞こえる。
がしかし、はその声に気づかなかったのか、下級生を促して階段の奥へと消えてしまった。
慌てて僕とシリウスは彼らに続くが、しかし、その更に後ろのジェームズたちは、


“ふむ。わしになにかご用かな?”
「え、これって一グループ限定!?僕も勝負しなきゃいけないの?」



……どうやら足止めを食らったようだった。
このまま彼らを待っていると間違いなくとはぐれることを悟った僕とシリウスは、 お互いに無言で顔を見合わせると。


「「…………」」


やっぱり無言でたちの後についていくのだった。


先輩、ちょっと怖いです……」
「私も、足元よく見えないし。っていうか、なんか足音増えてない?」
「魔女がおかしいって笑われるかもしれないけど、お化けとか出そう……」
「やだ、止めてよ!私まで怖くなるじゃない!ねぇ?さん」
「そ、そう?うん。大丈夫。僕もだから!」
『それ大丈夫じゃないじゃん』
「猫にこの暗さと怖さが分かってたまるか!ああ、もう超怖ぇここ!!」
「「……くすくす」」
先輩って優しいですね。そんな演技までしてくれて」
「……はぁっ!?いやいやいや、演技じゃないって。超怖いって。ガタブルだって!」
「ふふ。本当に怖い人はそんな元気に叫べませんよ?」
「本当、先輩って可愛いv」
『いやぁ、掛け値なしに怖がってるんだけどね』


ふと、前方からそんな声が聞こえてくる。
最初こそどこかおどおどとした雰囲気だった少女達の声が、 の言葉を契機に一気に明るいものへと変わっていくのは、どこか不思議だった。
何故だろう。
彼にはどこか他人を明るくさせるところがある気がする。
ジェームズのように。シリウスのように。
けれど、彼は格好を付けようとしないから。
だからこそ、こんな風に気安く皆に話しかけられるのかもしれない。


「あ、出口だ」


不意に開けた通路の奥で光の中に消えていった青年を見て、そう思った。







「んで、なんでこうなったか、分かる?」
「それが……」
「私たちが来たときにはもうこうなってたんです」
「はぁ……分かった。君たちは戻って良いよ」


かくして辿り着いた嘆きのマートルの部屋の前は水浸しだった。
嗚呼、いや、寧ろ水浸しでない方が珍しいってくらい、頻繁に水浸しになるところなんだけど。
今はなんと廊下の半分にトイレの水が溢れていた。
が、現在在進行形で増えている水も大問題だが、それ以上に迷惑なのは、 この世の終わりを告げるかのようなマートルの泣き叫ぶ声だった。
トイレにわんわんと声が反響して、騒音以外の何物でもない。
なるほど、これなら確かに誰かに助けを求めたくなる下級生達の気持ちも分かる。
まぁ、何故その相手がフィルチや先生方ではなくなのかまでは、いまだによく分からないままだが。

こっそりと防水呪文を足にかけて前方の彼らを見つめてみるが、さて困った。
このままトイレの中に入られてしまうと、僕たちは中々に追いかけづらい。
いや、別に場所が女子トイレだからってことじゃなくて。
水の中をじゃばじゃば波を立てて歩くのは、流石にばれてしまいそうだってこと。
かといって、手元に箒もない以上浮くことはできないし。

と、どうしたものかと頭を捻る僕たちだったが、は意外に紳士らしく、 例えマートルのトイレであっても女子トイレに入ることには抵抗があったようで。


「おーい、マートルー?」


凜と響く声で、彼女の泣き声に負けないように、トイレの外から哀れな幽霊の名を呼んだ。
すると、声量は十分だったのか、水音の合間を縫ってゴボゴボとくぐもった少女の声が返ってくる。


「誰なの?またなにか、わたしに投げつけに来たの?」
「濡れ衣にもほどがあるよ……マートル。
僕だよ、僕。東洋系優等生の様ですよっと」


東洋系優等生ってまた随分とゴロが悪いな……と、シリウスと二人で内心つっこみを入れていると、 「……?」と先ほどまでの彼女からは考えられないほど弱々しい声がした。
とてもではないが、さっきまでの騒音をまき散らしていた人物と同じとは思えない。


「そう、その……ってうぉっ!?」
「嗚呼、!来てくれたのね!聞いて頂戴っ
わたし、わたし、誰にも迷惑をかけずに過ごしているのにっ!」
「マートル、とりあえず落ち着こう。ね?
んでもって、落ち着いて僕の肩を放してくれ。肩凝るから……っ!」


そして、マートルは切々と悲劇のヒロイン宜しく、自分を襲った不幸な出来事をに訴えた。
なんでも、U字溝の所に座って彼女が死について考えていたその時に、 誰かが小さな薄い本を投げつけて彼女を侮辱したんだそうだ。
涙ながらに訴える様は、なんだろう、いつも鬱々としている彼女とは少し違う。
自分の不幸を語る時の彼女は確かに生き生きと(?)しているのだが、 もっと意地が悪そうというか、なんというか。
なんだか普段よりも普通っぽいマートルの様子に首を傾げる僕だったが、 その答えは、意外にも隣の人物からもたらされた。


「……マートルの奴、に惚れてやがったのか」
「え?そうなの??」
「まぁ、見れば分かるだろ」
「分からないから訊いてるんだけどね」


にべもないシリウスの言葉に苦笑するが、いつも以上に輝く銀色の頬を見ると、 なるほど、そうかもしれないと素直に納得できた。
つまり、マートルはに慰めて欲しくて、所謂かわいこぶりっこをしているのだ。
がしかし、当のはといえば、なんとも遠い目をして、 まるで感情の籠もっていなさそうな様子で口を開いた。


「……うーわ、どっかで読んだような話。
えっと、うん。大変だったね?」
「そう、本当に最低な気分だわ。だから、わたし、流し出してやった」
「へぇ、そう……」


マートルはそのちょっと肉付きの良い指で、水道の前あたりの床を指さした。
少し角度を変えればシリウスはなんとか見ることができそうな位置だ。
目配せをすると、すでに承知していたのか、シリウスは首を伸ばしてトイレの中を覗き見る。


「なんか、黒い……ノートみたいなものが――
「ってリドルぅううぅううぅううううぅー!!?」


がしかし、彼のレポートは突如上がったの叫び声に見事にかき消された。
そして、驚いて凝視する僕たちとマートルはまるで眼中にないように、 は自分が濡れるのも女子トイレに入るのにも躊躇せず、 全速力で水浸しのノートに駆け寄りそれを拾い上げる。
それは、あのマートルでさえ話しかけることを躊躇うほどの鬼気迫る姿だった。


「ぎゃあぁぁあぁ!見間違いだと思ったのに本物だったぁあぁぁー!!
嘘だろオイ、なんでどうして水浸しっ!?
誰だ!誰にやられたんだ!?」
『えーと、マートルが騒ぎを起こせばいつも通りの所に連絡が行って、
で、それを解決するの見たら、ちょっとは株があがるかなぁと思って?
それならやっぱり原作通りの方が大騒ぎになるよねってことだよ☆』

「………… お 前 か よ !!ねぇわ!マジねぇわ!
いまだかつて、こんな理不尽な扱い受けてるところ見たことねぇよ!?
いやああああああぁぁああぁー!リドルゥウウゥ!死ぬなぁああー!!」
『この程度で死にゃしないって。ただ屈辱的なだけだよ』

がしっとノートを掴んで、水気を切るように力一杯振る
……状況から察するところ、あの『リドル』とかいうノートはひょっとして彼のものなのだろうか。
(彼の国ではノートのことを『リドル』っていうのかな?)
いつも余裕のあるにしては珍しいほどの取り乱し方からして、相当大切な物に違いない。
一体なにが書いてあるというのだろう??
そっけない表紙からはなにも読み取ることはできず、必死に目を凝らしてみる。
がしかし、それを僕がきちんと知る前に、はトイレを飛び出し、 ノートを乾かすために脇目もふらず駆けていった。


「ううううぅううぅ、までわたしを馬鹿にしてぇええぇぇー!!」


マートルの呪詛のような叫びと、呆然とした僕たちを残して。





4人がかりでも、ついて行けなかったんだよね。





......to be continued