護りたい、ものがあったの。 Phantom Magician、193 1981年10月30日。 その日は、雲一つない秋晴れで。 明日の嵐なんて、一つも想像出来ないくらい、穏やかな日和だった。 「……うっし。やるか」 久しぶりの自室で、 あたしはぐぐっと背中を伸ばし、軽く体をほぐしていく。 そして、最後に布団やベッドの縁を撫で、 別れの挨拶を済ませる。 「……今まで、ありがと」 この日に、家を出ていくことは、ずっと前から決めていた。 まだXデー前日じゃないか、と思われるかもしれないが、 当日じゃ、一体誰が見ているか分かったもんじゃない。 さっさとゴドリックの谷に行くに限る。 『秘密の守り人』に守られたジェームズ達と違って、 あたしの姿は、いざとなれば、見つかってしまうのだから。 そう、それこそが、二重の守り人の意味。 ピーターが『ポッター家の所在』を守るなら。 あたしは『ポッター一家』そのものの守り人だ。 これで、例えピーターが闇の帝王に通じていても、 ポッター家の面々は、あたしの魔法で守られて、闇の帝王の目に映ることはない。 発想で言えば、透明マントに近いだろうか。 「あ、そうそう。透明マントといえば、 ダンブルドアはいつも通りホグワーツにいるみたいだよ、」 「……うん。とりあえずいつも通りだけど、挨拶の前に思考に割り込むの止めようか、スティア」 まだ微妙にパジャマ姿のあたしの前に、 一体いつの間に人間形態になったのやら、 バッチリ、ローブを着こなしたスティアが立っていた。 いつものことと言えば、いつものことでしかないのだが、 あたしは挨拶もして貰えないのが嫌で、殊更彼と目を合わせて口を開く。 「おはよう」 「……ふふっ。おはよう、」 あたしの、少しでも平凡な日常を感じたい気持ちが伝わったのだろう、 スティアははっきりとした発音で、ジト目のあたしに応対した。 そして、枕元のテディベアを引っ掴むと、それをあたしの前に見せつける。 「じゃあ、昨日も確認したけど。 君が用意している間に、君の私物をこの中に入れちゃって良いんだね?」 「うん。お願いしまーす」 まぁ、とはいっても、昨日の内に荷造りはほとんど済ませてしまったので、 後はこの部屋にある細かい物だけだけれど。 出来る子スティアさんに片づけはお任せして、 同じく枕元に置いてあった着替え類をちゃっちゃっと身につけていく。 後ろで超絶イケメンがいるのに、それって女子としてどうなんだ、と思わなくもないが、 まぁね。心の叫びっていう、最大限恥ずかしい代物がダダ漏れな相手に恥じらいが持てるかってんですよ。 だって、奴はきっとあたしのスリーサイズもご存じ……ゲフンげふん。 と、不埒な考えが一瞬頭をかすめたが、その瞬間に脳天をチョップされたので、 あたしは作業に没頭することにした。 (どうでも良いけど、皆あたしの頭をバカスカ叩きすぎじゃないだろうか。 これ以上馬鹿になったらどうしてくれる) で、無事にスタイリッシュなローブを着て、 後は洗面台で顔と髪を整えればOK!とばかりに身支度を整えたあたしだったが、 ふり返れば、あたしの脱ぎ散らかしたパジャマ以外すっからかんの味気ない部屋が出来上がっていた。 「……スティアさん、仕事早いっす。えっと、インスタント家政婦?」 「そこで執事じゃないところが君だよね」 「いや、だって執事っていったら、やっぱりあくまで執事なセバスちゃんかなと」 「あーなるほど。 ファントムハイヴ家の執事たるもの、これくらい出来なくてどうします? ってあれ」 黒くも赤くもないくせに、見事な完コピの流し目だった。 「ちょっ!今のカメラで撮るから!!シリウスのカメラで撮るから、ワンモアぷりーず!」 「あっはっは、超嫌DEATH☆」 超絶笑顔で、テディベア(カメラ入り)をあたしから遠ざけるスティアさんだった。 くっそ、このイケメンが! 何しても許されると思ってんじゃねぇぞ、イケメンが!! 残念な語彙力で、いつも通りオタクな戯れをするあたし達。 が、まぁ、いつまでもじゃれてもいられない訳で。 閑話休題。 少し経った後、リビングでスティアさん特製の和食を食べるあたしの姿があった。 「……味噌汁マジ最高」 最近では食べ慣れた洋食だったが、 やはり、食欲のない時に喉を通るのは、慣れ親しんだ味である。 この、絶妙に油っ気がなくて、野菜たっぷりの食卓に、舌鼓を打っていると、 その合間にも、スティアさんは着々と部屋の片づけを続行する。 なんだか、気分的には引っ越しの楽々パックを活用している感じだ。 あのお金がかかっても、梱包からなにから全ててやってくれるっていう……。 「いや、君、僕にお金なんてビタ一文払ってないからね?」 「スティアさんのボランティア精神マジ最高です。感謝してます」 「……、こういう言葉知ってる?」 「はい?」 「『タダより高いものはない』ってね」 と、言うが早いか、 いつの間にやら音もなく背後に忍び寄っていたスティアは、 まるで二人羽織をするかのようにあたしに覆い被さり、 あろうことか、 がぶっと。 人の耳に噛り付いた。 「いっ〜〜〜〜っ!!」 甘噛みなんて可愛らしいものではなく。 耳の軟骨を噛み千切らんばかりの力である。 痛い痛い痛い! 歯食い込んでる、歯! ちょっ!?スティアさん!? いつ野生に目覚めちゃったの!!? 頭の中は大混乱で。 B級ホラー映画でゾンビに襲われている被害者の気分だった。 普段のおふざけであれば、かるーく、痛いわ!と振り払うところなのだが、 振り払ったら耳が千切れるんじゃないだろうかと心配になるレベルで、マジ痛い! 「〜〜〜何してんのっ!?」 「ふぇ?ふふぃンふぃッふ??」 「ス キ ン シ ッ プ だ と っ !?」 そして、あたしが完全に涙目になったところで、 ようやく満足したのか、スティアはあたしの耳を解放してくれた。 ペロリと唇を舐め上げ動作が、唇の赤さも相まって、実に艶めかしい……って、 「ちょっと!血出てんじゃないの、これ!?」 「んー……デテない出てナイ。ダイジョブだよー」 「急に片言とか!!一切信用できねぇ、コイツ!!」 一体、なにが彼の琴線に触れたのか、 はっきり言って理解不能である。 あれか?歯が疼いたのか? ……お前は乳歯生え変わり前の猫か! いっそ、右耳に齧りついて、カフスが歯肉に食い込めば良かったのにっ!! 「あはははは、僕が自分であげた物で怪我なんてするワケないじゃないか。 もちろん、狙って左耳にしたよ?うん」 「……よし、分かった。つまりはあたし自らの手で制裁に乗り出せと。 そういうことだな?」 「別に良いけど、でもやっぱり君じゃ僕を殴れるワケないよねー」 言うが早いかとりあえず、椅子を蹴倒して手を振り上げたが、 軽いステップで難なく避けられる。 チッ!初対面の時は容赦なくぶん殴れたのに、この野郎! どうやら、スティアさんの回避能力はすでにカンストらしい。 ただでさえ、色々チートなくせに、本当に腹立たしい限りである。 で、そのチート野郎は、それはもう嗜虐的な笑顔と共にこう言った。 「で、食事を作って差し上げた僕に対して、なにか言うことは?」 「〜〜〜〜ごちそうさまでした!!」 「はいはい。お粗末さまでした」 お前、今日マジで性格悪いな! 多分、流石のスティアさんでも緊張することがあるのだろう。 なにしろ、明日はとうとう闇の帝王との直接対決なワケだし。 その後も、いつも以上にいじり倒してくるスティアを相手して疲れきったあたしは、 そう思うことで心の平穏を取り戻そうとあがいてみた。 がしかし、まぁ、一歩間違ったら(っていうか間違わなくても)ヤンデレな奴と一緒にいて、 ストレスが解消できるはずもないので。 あたしは、スティアと二人でダンブルドアを襲撃することで、それに代えた。 まぁ、つまりは八つ当たりという奴である。 もちろん、襲撃というのは言葉の綾だが……。 ダンブルドアの立場からすると、あれだ。 カツアゲが一番近かったかもしれない。 ようよう、爺さん。 人様の大事な物いつまで持ってんだよこの野郎さっさと返しやがれ。ってな感じ? 不死鳥の騎士団に所属していないので、 実を言うとまともに顔を合わせたのは卒業後初めてなのだが、 相変わらずの素敵なお髭ともの問いたげな瞳だった。 (まぁ、人の家の家宝的な物を、幾ら友達でもいきなり「返せ」と来るのは怪しさ満点だ) そう、ポッター家襲撃の直前、 ダンブルドアは死の秘宝である透明マントを、ジェームズから借りていたのである。 原作でハリーも言っていた気がするが、 例え透明マント一つがあったところでポッター家がヴォルデモートから逃れるとは思えない。 でも。 でも、だ。 ほんのわずかにでも、彼らの安全率が上がるなら。 あたしは喜んでカツアゲでもなんでもする。 『まぁ、それが本来の“死の秘宝”って奴だからね』 うん? 『“死”に打ち克つのは、 “最強の杖”でも“死者を蘇らせる石”でもなく、“身を隠すマント”だってことさ』 ふと、身に纏った透明マントに想いを馳せながらポッター家の扉をノックしていると、 右肩に乗せていたスティア(にゃんこスタイル)がしたり顔で解説した。 (また耳を噛まれては堪らないのでやった措置だが、これはこれで髭が耳に当たってくすぐったい) 『え、じゃあ耳舐めてあげようか?』 なんでだよ! しかも今、猫舌じゃねぇか、お前の舌!嫌がらせか!! 『嫌だなぁ。嫌がらせなら、ケーの姿の時にするよ』 ……うん。 つまりはやっぱり、朝のあれは嫌がらせってことだな。 いまだかつてない程、スティアさんはご機嫌ナナメらしかった。 こんなに当たりが厳しいっていうか、態度悪いのなんて初めてじゃ……。 あれ? でも確か。 確か、一度だけ。 こんな風に攻撃的なスティアに逢った気が……―― がしかし、疑問に答えが出る前に、 あたしの思考は打ち切られることになる。 「……合言葉は?」 扉の向こうから聞こえるジェームズの声によって。 間髪入れずに答えないと不審者っていうかヤバイ奴確定してしまうので、 あたしは慌ててそれに応じる。 「愛と?」 「勇気と!」 「希望の名のもとに?」 「マジカルプリンセス ホーリーアァアァーップ!!」 ……あー、ちなみに言わなくても分かると思うけど、合言葉決めたのはあたしね? 『……古いよ、。果たしてそのネタが分かる人がどれだけいることか』 少なくともプリティーでキュアキュアな世代にはいないことだけは分かるけどね。 良いじゃん。あたしが分かってればそれで! 合言葉なんてそんなもんだろう、うん。 (今鹿好きなぐりさんなら「風!」「谷!」と叫ぶに違いない) 『……はぁー、もういい』 と、スティアが投げやりになった辺りで、あたしがいると確信したのだろう、 ジェームズが慎重に扉を開いた。 が、視線は合わない。 当然だ。あたしは透明になっているのだから。 なので、彼の警戒心を解く意味でも、「開けーゴマ♪」と楽しく声を出してみる。 「……意味はよく分からないけど、とりあえずその呑気な声は君だね」 「おうともさ。入れておくれ世帯主」 その言葉に、ジェームズはちょっとだけ嬉しそうな表情をした後、 体をずらしてあたしが通れるくらいの隙間を開けてくれた。 ので、するりと入り込んだあたしは、 ハラハラしながらこっちを見ているリリーに見えるようにゆっくりとマントをずらした。 「はぁい、リリー。相変わらず美人だね!」 「……ふふっ。そういうも相変わらずね」 「全くだよ。ごく自然に僕の奥さんを口説くのは止めてくれないかな? ……『僕の奥さん』っ!なんて良い響きなんだっ」 「ジェムもあまり人のことは言えないわ」 「全くだね」 どうやら、リリー命は健在らしい。 勝手に盛り上がっているジェームズの姿に、リリーと二人で苦笑を漏らし、 あたしは忘れない内にと透明マントを畳んで彼に差し出した。 「はい、これ。ダンブルドアから『素晴らしい品だった』だってさ」 「?貸したのはつい最近だったと思うけど。しかも、なんで君が??」 「まぁまぁ、細かいことは気にすんな☆」 説明しだすと、賢者の石から死の秘宝までの果てしなく長い道のりを話すしかなくなるので、 それは是非とも遠慮したい。 あたしは、力技のゴリ押しでその話題は切り捨てた。 すると、質問しておきながら、それよりよっぽど気になることがあったのだろう、 ジェームズがあたしの背後を指さしながら首を傾げる。 「ところで、なんだい、それ?」 「うん?見ての通り、四次元ポケット的なテディベアだけど?」 『いや、それ、全然見ての通りじゃないけど』 まぁ、成人した(つまりはいい歳した大人)がテディベアを背負っているっていうのは、 中々にシュールな絵面なので、突っ込みたくなる気持ちは分かる。 あたしだって、ジェームズがそんなものを持っていたら、軽く……いや、結構引くと思う。 がしかし、あたしがその質問に答える前に、その存在を知っていたリリーが、 あっさりと彼の質問に答えていた。 「それ、貴女の物入れよね?なにか必要な荷物があった? 一応、この家にある物は好きに使ってくれて構わなかったのだけれど」 そう、なにしろXデーが明日なので、あたしは今日、 ポッター家の皆さんを追い出した後、この家に泊まるのである。 その為の必要物品はもちろんこの中に詰まっている。 詰まってはいるが……あたしがこれを持ち歩いているのはお泊りの為だけではない。 もう、家には、戻れないから。 あたしの持ち物を、ただ。 ただ、全部引き上げてきたという、それだけだ。 大事なものも。 他の人から見たら、ガラクタみたいなものも。 全部。 一緒くたに。 ごちゃまぜに。 あの家には、置いておけなかった、だけなんだ。 でも。 そんなこと、リリーには言えないから。 あたしはごくごく自然に、 なんでもない風を装いながら、口を開く。 「あー、違う違う。傷薬とか便利道具とか、まぁ色々持ってきただけなんだよ」 これ移動の魔法だけは掛からないなんだよねー まぁどっちみち静かに箒で来る予定だったから良いんだけど疲れちゃったよー と笑いながら。 嘘は言わずに、本音を隠す。 すると、功を奏したのか、ジェームズもリリーも特になにか気づいた様子はなく、 特にジェームズは胡乱な表情をしながら、その言葉に噛みついた。 「……君は、傷薬が必要になるような『話し合い』をするつもりなのかい?」 「……あははははははー?それはもう、相手次第っていうかー? あたしは万が一に備えて、色々用意しただけだよ?うん」 二人には、ここで明日、ピーターと話をするとだけ話していた。 それはそうだ。ここに明日、闇の帝王が来るんです、なんて心配性の二人に言えるはずがない。 今も、「相手はピーターだけど、君より強い『男』なんだからね?」だの、 「貴女が魔法に長けているのは知っているけれど、油断はダメよ」だのと、懇々と諭してくる。 その心底あたしを案じる瞳に、あたしはにっこりと笑った。 嗚呼。 本当に。 言わなくて、良かった、と想いながら。 その表情を、心に焼き付ける。 「大丈夫ダイジョーブ。まずは武装解除して、それから紳士的な話し合いに持っていくから〜」 「『紳士的』、ねぇ?いまいち信用できないけど」 「でも信頼はしてくれてるでしょう?」 「……まぁね」 ふっと、そこでようやくジェームズがいつものようにシニカルに笑った。 あたしは心の中でリリーに土下座をしながら、そんな彼に抱き着く。 「「!」」 流石に、初めてのあたしのハグにジェームズが驚いた。 がしかし、そこは悪戯仕掛け人のリーダー格。 心の底から愉快そうに笑って、彼は口笛を吹いた。 「ヒューゥ!ヤダな。僕ってばモテモテ? ごめんね、。君の気持ちは嬉しいけれど、応えられないんだ」 「あっはっは!そこは応えてよ、プロングズ!」 その芝居がかった口調が好きだった。 あったかい目が好きだった。 その気持ちの何十分の一かでも、伝われば良いのだけれど。 と、二人できゃいきゃいとふざけていると、 どうやらそれに感化されたらしいリリーも頬に手を当てて、可愛らしく小首を傾げる。 「まぁ、私の前で浮気なの?」 「あたしはリリー一筋だよ、マイハニー!」「僕はリリー一筋だよ、マイハニー!」 と、返事は見事に二人でハモった。 タイミングから音量までバッチリだ。 そのことに、思わず三人で笑ってしまう。 あたしはそこで、無情にもジェームズを見捨てて、リリーにも同じようにハグをした。 ジェームズのちょっと筋肉質で硬い体とは違う、優しくて柔らかい感触に、頬が緩む。 そして、同時に涙腺も、緩む気配がした。 「…………っ」 やばい!と思った時にはもう遅い。 気が付けば、あたしの目からはぱらぽろと、大粒の涙が零れていた。 さっきまでゲラゲラ笑っていたのにもう泣くなんて、情緒不安定もいいところだ。 こんな所見せたら、心配させるだけだと分かっているのに、涙が止まらない。 声を出せば、間違いなくもっと酷いことになりそうだったので、 その暖かさを噛み締めるように、無言でリリーにしがみつく。 と、そのことにリリーが疑問の声を上げようとしたその時だった。 ぎゅっと。 リリーを抱きしめるあたしを、彼女ごと丸っと包み込む、気配がした。 「おいおい。僕を除け者にしないでくれよ?」 「っ」 「……ジェム?」 ジェームズは、多分、あたしが泣いているのに気づいていた。 気づいていて。 それでも、それを隠すように。 受け止めるように。 リリーごと、抱きしめてくれたのだ。 その大きな腕に、嗚呼、彼も大人になったのだと、奇妙な安心感を覚える。 「ありがとう、」 「っうん」 「僕も、リリーも。もちろんハリーも。大丈夫だから。 だから、君の思うようにやって良いんだよ」 「うんっ」 その声に背中を押されて。 あたしは、足を踏み外す決意を固めた。 「……ごめんね。二人とも」 嘘を吐いて。 人殺しの理由にして。 ごめん。 声にしない言葉は、決して届かないと知っているけれど。 まるで神に懺悔するように、あたしは小さく呟いた。 「あら、ったら、謝るような何かをやっぱりするつもりなのね?」 「うん。多分、その辺にある物壊すかも。 あ、あの花瓶とか大丈夫?なんだったら片づけとこうか?」 「良いのよ。寧ろ壊してくれた方が助かるくらいだわ。 捨てるに捨てられなくて困ってるから」 「あー……お姉さんになんて言うんだい? あれ、この間貰った奴だろう?趣味悪いけど」 「そう、趣味悪いのよ。困ったことに。 だから、ハリーが気に入って触ったら落ちちゃったwとでも言っておくわ」 「……リリー素敵」 こんな日が、愛おしかった。 ......to be continued
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