幸せな想い出があるなら、嫌な思いで塗りつぶそう。





Phantom Magician、163





ひとしきりリーマスとじゃれるという快挙を成し遂げた後、 もうそろそろお昼だということで、あたし達はホグワーツへ戻ることにした。
本当は、二人で優雅なランチタイムと洒落こみたかったのだが、 店自体が休業中では、どうにもしようがない。

ただ、名残惜しかったのは確かなので、あたしは一度だけ村の方へと視線を向け。


「…………え」


あとは、ただ温かい城へと帰れば、それで良かった。
振り返れば、そんなものは明白なのに。

あたしは、狼煙のように上がった細い煙を、無視することができなかった。





リーマスと二人で顔を見合わせた後、行動は素早かった。
ほとんど、息つく間もなく、木立の間を駆け抜けていく。

未成年の魔法使い未満が火事場に行っても、大したことはできないだろうが、 例えば、場合によってはダンブルドアの御大将にお出まし頂くとか、そういう連絡ができるかもしれない。
ただでさえ、クリスマスで人手不足が否めない、小さな村なのだ。
もし、親戚の家に行っている間に起こった留守中の失火だったとしたら、 周囲の家々が気付くことも遅くなるだろう。
なにしろ、あたし達のように出歩いている人間の方が、稀なのだから。

お互い、声に出さなくてもその位の頭は働いたので、 冷たい風に頬を打たれながら、必死に足を前へと動かす。
その間に、木があるせいか煙は見えなくなっていて、鎮火してくれていれば良いと強く願う。

町はずれと言っても、そこそこの距離が村まであったので、駆け付けるまで数分はかかっただろうか。
ひょっとしたら野次馬の群れがあるかもしれない、寧ろあってくれと願ったそこにいたのは、 大人の魔法使い2人だった。
彼らは、炎の出ている家を遠巻きに、しかしひたすらに見つめている。
真っ黒のローブとフードが、真っ白の雪景色の中で浮いていた。

遠めなので、それがどんな人達かは分からない。
がしかし、自分達より熟達した魔法使いには違いない。
ぜひとも指示を仰ごうと、あたしが声を張り上げようとしたその時だった。


「っ!」


突然、腕をちぎらんばかりの強さで、横に引っ張られる。


「いっっ!リーマス!急になに――…「しっ!黙って」


痛みに呻きながら、流石に抗議の声を上げようとしたあたしだったが、 しかし、その口を強制的に手で封じられる。

訳が、分からなかった。
でも。
それは、まるで見つかってはいけない相手から身を隠すかのようで。


「――……」


あたしはとっさに暴れそうになる体を抑え、 目だけで、事情を把握するべく、リーマスの表情を探る。
彼は、これ以上ない位に神経を張りつめた表情で、背後の気配を伺っていた。
そこに、言いようのない不吉さを感じ、一気に体が強張っていく。

と、あたしが大人しくなったことを察したのだろう、 木に背を預けた状態のリーマスが、あたしをじっと瞳で制しながら、
ほとんど聞き取れないくらいの声量で、こう呟いた。



「あれは……死喰い人デスイーターだ」と。



「!!!」
「その様子なら……彼らがどんな人間か分かっているね?」


ざっと血の気が引いた顔で、頷くのが精いっぱいだった。

死喰い人デスイーター
それは例のあの人の配下にして、兵隊。
ホグワーツにいる分には、あまり実感がなかったが、 そう、この時代、彼らは全盛期とも言える勢いを持っていたはずだ。
善良な魔法使いを拷問し、
無理矢理従わせ、
なにがしたいのかも分からない、闇の陣営の人々。

関わり合いになんて、極力なりたくなかったのに。
それが、どうしてホグズミードに……?

答えは、考えるまでもなかった。


「っもしかして、誰かを襲って……っ!?」
「多分……」


あちらに気取られないように、息を殺しながらそっと村の方へと視線を向ける。

よくよく観察してみれば、彼らがただの野次馬ではないというのが分かった。

燃えているのは外側の壁だというのに、水を出すでもなく。
ようやく杖を掲げたかと思えば、そこから出るのは、勢いある火花ではなく、蜘蛛の糸のような淡い光だけ。
家の中からは悲痛な、必死に扉を破ろうとする影が見えるというのに、それには取り合わず。
炎の中浮かび上がった口元には、下卑た笑みが浮かんでいる……。


「ま、さか……家ごと丸焼きに……?」
「……みたいだね。一人は守りの呪文で家を覆っているし、
もう一人は家中に石化の呪文をかけて出られなくしている」
「守りの呪文……?え、それって、良い魔法なんじゃ……?」


しかも、その魔法を使われているなら、 こうしてあたし達の目に触れることもないはずじゃないのか?

乏しい魔法の知識を総動員して疑問を呈するが、 秀才である監督生の言葉はにべもない。


「使っている人間や、なにからの守護かによるんだけどね。
守りの呪文は言い換えれば、中のなにかを外に出さないように閉じ込めるものなんだよ。
盾の呪文とはまた違う。多分、今の呪文は、家の中の音と炎に狙いが絞られている。
外に炎が出て行かないのなら……内側の物を焼くしかないだろう」
「っで、でも、なんでそんなことを?どうせなら中の気配全部覆っちゃえば、見つからないのに」


普通、犯人というのは犯罪を隠そうとするはずだ。
それなのに、音と炎しか閉じ込めていない?
そんなもの、こうして見られたら一発で、誰がやったかバレちゃうじゃないか。
幾らクリスマスだって言っても、村が無人な訳じゃないし。
どうして、そんな見つかるような、変な魔法を……?

理解できない物に対して、恐怖はいや増していく。
だからだろう、リーマスは吐き捨てるかのように、苦々しげに答えをくれた。


「見つかりたいんだろう」
「!」


当然のことながら、そこに「早く見つかって楽になりたい」だのといった罪悪感などは欠片もない。
それはつまり……見せしめだ。
クリスマスの、家族穏やかに過ごす日に。
お前らに安息なんてないんだと、見せつける為に。
どこよりも安全だと言われるホグワーツの目と鼻の先で、人を襲った。
闇の帝王の指示によって。

あたしは、その深く昏い思考を、頭を振って払う。
そんなこと考えもつかない。理解なんてしたくない。
あたしが今考えるべきなのは……目の前のことだけだ。


「……石化の呪文なら呪文よ終われフィニート・インカンターテムが効くんじゃないの?」
「呪文を解除する横から新しく魔法をかけていたら、イタチごっこだよ」
「じゃあ、防火呪文とか炎凍結術とかは!?ホラ、あの二人呪文の中だよ!?
まさか防火呪文もなしにあんなところにいるはずないし、きっと効果あるって」
「……幾ら室内に防火呪文を掛けたって、煙までは防げないだろう?」
「っ!」


締め切った部屋は、瞬く間に煙が充満する。
火事で死ぬ人の死亡原因は、炎よりも煙の方が多い。
どうやらその常識は、魔法界でも通用するらしい。

せめて口元を濡らした布で覆って、床に這いつくばっていればまた話は別だが、 家の中の人影はどうにか外に出ようとあがくばかりで、一向にそうする気配はない。
当然だ。火に煽られて冷静でいられる人間の方が少ない。
となれば、中の人達が自力で助かる、という見込みはないものと思った方が良いだろう。

そして、あたしたちが見守る間にも、炎は勢いを増していく。


「助けなきゃ……」


言葉は、自然と出てきた。
リーマスからの視線を感じるが、ぶつぶつ「どうしたら良い?なにが効く?」などと、 呟いているあたしには、気にしている余裕がなかった。

もちろん、死喰い人デスイーターを退治する、だなんて無謀なことは考えていない。
というか、無理だ。
頼れるスティアがいるならまだしも、今ここにいるのはあたしとリーマスだけ。
しかも、あたしはともかく、リーマスに魔法を使わせることはできない。
ここはホグワーツの外なのだ。
未成年は魔法を使うことを禁じられている。
あたしは良いとしても、リーマスを退学になんてさせられない。

だがしかし、魔法を使えるのが一人になってしまうと、できることはほんの一握りのことだけ。

どうにかして、死喰い人デスイーターを引きつけて、家の人達が出られる隙を作らないと。
早くしないと、死、死、死……。


「っ駄目だ。集中しなきゃ。
……まず不意打ちで石化呪文かけてる方を失神させて、守護の呪文の方を家から引き離す……とか?
真っ向からは勝てないから、不意打ちでなら一人くらいは、なんとか……」
「二人でかかれば、一度に二人失神させられるんじゃないかな」
「!?駄目だよ!?リーマスは魔法使っちゃ!」
は使うのに、かい?」
「あたしは……アテがあるからね。大丈夫だよ」
「…………」


嘘だ。
アテなんてものはない。
ただ、1回だけなら、退学の警告で済むだろうと思う程度。

でも、そんなことを言ったら、リーマスのことだ。
自分も魔法を使うと言いかねない。
だから、あたしは殊更自慢げに、自信たっぷりに笑う。


「まかせて。あたし、これでも結構強いからさ」
青い顔をしてよく言う……


悔しさからか、リーマスは視線を外して、小さく毒づいた。
けれど、どうやら嘘は看破されなかったようで、 それなら、ともう一人を引き付ける方法について意見をくれた。
正直、目から鱗というか、その魔法をそう使うのか!というアイディアだ。
あたしは感心するのもそこそこに、 早速、リーマスと協力してその準備にかかった。







こちらのアドバンテージは2つ。

@敵はまだあたし達の存在に気付いていない。
A敵はあたし達の戦力が分からない。

ならば、これを生かした戦法を練るべきだというのがリーマスの意見だ。
幸い、あたし達がいるのはまだ森の中。
ここでならば、身を隠すのに好都合だ。

リーマスが大荷物を抱えて駆け去るのを、なんとも言えない気分で見送り、 あたしはその背中が見えなくなったところで、杖を構える。
そして、狙いを十分に付けて、叫んだ。


麻痺せよステューピファイ!」
「!」


少し遠くの位置からだったので、届くかが心配だったが、 どうやらそれは杞憂だったらしく、真っ赤な光は一直線に死喰い人デスイーターの背中を捉えていた。
まだ守りの呪文の内側にいるせいか、悲鳴の一つもあたしの方へは届かない。
だがしかし、流石に相方の死喰い人デスイーターには聞こえたらしく、 もう一人の死喰い人デスイーターは倒れた仲間には目もくれず、呪文の飛んできた方、 即ちあたしのいる方へと同じく失神呪文を放ってきた。


「っ」


幸い、狙いは大幅にずれていたために、魔法を喰らうことはなかった。
だがしかし、あたしの仕事はあの死喰い人デスイーターをリーマスのいる方へと誘導すること。
無事を喜んでいる暇なんてなく、あたしは一旦、 ばたばたと派手に木を揺らしながら、リーマスのいる方へと駆け出す。
そして、リーマスが設置してくれた『それ・・』が見える位置まできたところで、適当な木の後ろへと身を隠した。

と、あたしが自身に透明になる呪文を掛けた直後、 あたしを追って、家の方からこっちに駆けてくる足音がした。
計算通り、木が密集しているため、あの特徴的な飛び方はしてこないようだ。
正直、あんな風にぶわっと飛んでこられてしまうと、リーマスに追いつかれてしまうので助かった。

で、息を殺すあたしには気づかず。
彼は、リーマスの置き土産――あたしの偽物・・・・・・(金髪ver)に向かって、盛大な呪文を放っていた。


「アバダ・ケダブラ!」


ばーんと、『あたし』の体がはじけ飛ぶ。
で、粉々になった欠片は、一瞬で元の姿、つまり雪の欠片に戻って、森の中へ降り注いだ。


「!?」


死喰い人デスイーターにしてみれば、標的が突然爆散して影も形もなくなった訳なので、 驚愕しまくっていた。
本当はこの隙をつくのが一番なのだろうが、
生憎、いきなり死の呪文を放ってくる奴相手に喧嘩を売る気はない。

なので、当初の予定通り、あたしはひたすら縮こまって、敵がここを去るのを待つ。
と、流石に場馴れしているのか、数秒で思考を切り替えたらしい男は、 ざっと辺りを見回して、再度『それ』を見つけ、走り出す。
今度は慎重を期したのか、失神呪文だったが、結果はやはり、同じ。
雪が爆散するだけで終わる。
……ああ、いや。


「くそっ!?」


どうやら、今度は木の上の雪が落ちてくるおまけ付きのようだ。
ドサドサっという音の後、死喰い人デスイーターの苛立ちMAXな声が聞こえてきたので、ひっそり拳を握る。
もちろん、奴のお相手をしているのは、またもやあたしのダミーちゃんだ。

つまり、作戦はこうである。
二人でせっせと作った雪玉に『そっくりジェミニオ』の魔法をかけまくって、 あたしの偽物を大量生産し。
透明になったリーマスがそれを、ダッシュで森の中に配置。
あとは森の中に誘い込めば、あら不思議☆
さん(敵さん)だらけの自然迷宮へごあんな〜い!という訳だ。
つまりあれだ。神の左手 悪魔の右手ギャラリーフェイク大作戦。

なにしろ、元がただの雪玉だからね。
リーマスも片手で軽く持てちゃうくらいの重さしかないんだよ。あのダミー。
まぁ、流石に自分の姿をした物体が、荷物も真っ青な感じで束ねられて、 運ばれているのを見た時の切なさったらなかったけど。

声からして、襲ってきたのが女だというのは向こうも承知の上。
となれば、遠目に女らしき影が見えれば、確認(攻撃)しない訳にはいかないだろう。
なにしろ、闇の帝王に喧嘩を売られたも同然なのだから、向こうから引くことはない。
無駄な忠誠心(?)が仇になった格好だ。
ちなみにリーマスが、あたしの姿を晒すことに、顔を覚えられる心配をしてくれていたが、 まぁ、髪は目立つように金髪に変えたし、普段は男の姿だしということで説得した。

で、リーマスがせっせとゲリラ活動で死喰い人デスイーターの注意を引きつけてくれている間に、 あたしは家の人を助け出す、と。
まぁ、死喰い人デスイーターさえ離れてしまえば、守りの呪文を強化する人間はいない。
魔法を解除できれば、後は周囲の家の皆さんが救助してくれるだろう!

ということで、死喰い人デスイーターが見えなくなったところで、 あたしは慎重かつできる限りの速さで、村の方へと引き返す。
幾らリーマスが頑張ってくれているといっても、そんなに時間はない。
時間が経てば経つほど、囮である彼の危険が増すからだ。

あたしは、気絶している死喰い人デスイーターを迂回しながら、渾身の力を込めて魔法を放つ。


呪文よ終われフィニート・インカンターテム!」
終われフィニート終われフィニート終われフィニート!」
水よアグアメンティ水よアグアメンティ水よアグアメンティ!!」


慌てるあまり舌を噛みそうになるが、知ったことじゃない。
と、あたしが炎に向かって盛大に水をぶっかけていると。


ぽん。


「はい、そこまで」
「!!!」


心臓に悪すぎる登場の仕方で、スティアが背後に立っていた。


「〜〜〜〜〜っおまっ!今、あたし、死ぬかと!!」
「ごめんごめん、悪かったよ。それより、もうここから離れた方が良い。
大分鎮火してるから、後は任せても大丈夫だよ」
「え?あ、本当??」
「でないと、姿を見られちゃうからね」
「……えっと、今後の為に、人命救助してたアピールはしなくても?」
「うん。しなくていい」


と、言うや否や、スティアは頭上に光の塊をバーンと打ち上げると、 パチン、と軽快な音を立てて、どこか真っ暗な場所へ姿現しした。


「「…………」」


さっきまで炎を見ていたせいか、目が慣れないが、 どうやら埃っぽい空気からして、どこぞの室内らしい。
多分、さっさと安全な場所に連れてきてくれたのだろう。
がしかし、


「リーマスは!?」
「うん?」
「駄目!スティア戻って!!リーマスがまだ森の中に!!
どうしよう、まだ囮になってるのにっ」
「え?狼男は、死喰い人デスイーターに恐れをなして、君を置いて逃げ出したんじゃなかったの?」
「お前マジで殴るぞ!?」


勇敢にも一人立ち回っているリーマスに対してなんてこと言うんだ!?


「冗談だよ」


思わず拳を振り上げたあたしだったが、
ぱちん、と再度聞こえた音と共にスティアの気配が消えた為に、空振ってしまう。
どうやら、この場から姿くらましを行ったらしい。


「まさか逃げ……?いやいや、流石に迎えに行ってくれてる、よね?」


スティアはいまいち信用しきれない味方という、なんとも面倒臭い存在だった。

で、心配で胸が痛いくらいだったのだが、それはこの暗闇も関係しているんじゃないかと思い立つ。
ということで、杖を持っているのをこれ幸いと、光よルーモスで杖明かりを灯してみた。


「っ!……ここって」


暗闇の原因は、窓が塞がれているから。
部屋の壁は、大型の獣が暴れたかのようにツメ跡だらけ。
さて、ここはどこでしょう?

……って、叫びの屋敷以外の何物でもないじゃん。
埃っぽい匂いも、目に移る光景も、いつか見た時のままだった。


「確かに身を隠すにはもってこいだけど……」


アイツ、実はデート覗き見してたんじゃね?

と、スティアのストーカー疑惑が俄かに浮上してきたところで、 待ち望んでいたなにかが弾けるような音が背後から聞こえた。


「ねぇ、スティア。ちょっと訊きたいことが……って、リーマス!?」


ほっとしながら振り返った先で、リーマスはぐったりとスティアに担がれていた。
明かりに照らされた顔は、見事に白く。
まるで。
死人のようで。
ぴくりとも、動かなくて。

目の前から、急に全てが色を無くしてしまったかのような、錯覚を覚えた。
足元がぐらついて。
立っていることも、難しくて。

ほとんど無意識に、手が伸びる。


「ま、さか、りー…す…?」
「いや、生きてるけどね。寧ろ君の方が死にそうだよ?嫌だなぁ」
「!!!!」


……こっちの方が嫌だよ!!!
気絶しているのを死んだと勘違いしたとか、恥ずかしいにも程がある。
いや、でもね!?
この状況で、そんなヤバイ顔色の人が倒れてたら、勘違いの一つもするでしょ!?
相手死喰い人デスイーターなんだよ!?死を食べちゃうんだよ!?
なに、その不死の軍団風の、中二病くさい名前!


「そこ!?名前のセンスはヴォルデモートに苦情言って欲しいんだけど」
「馬鹿!言ったら殺されちゃうだろ!」
「ああ、うん。なんかもういいや」


なんだか、色々と諦めたらしいスティアは、ごく気軽な動作で、 リーマスを床に転がした(!)
オイ、待てや、コラ。もっと丁重に扱わんかい!


「いや、だって濡れてて気持ち悪いし」
「気持……っ!?」
「えーと、一応、しつこくコイツを追っていた死喰い人デスイーターは、コイツ諸共気絶させて、 適当に燃えてた家の近くに転がしてきたよ。
で、燃やされてた家だけど、一応中から耐火呪文唱えてたらしくて、中の延焼はなし。
住人は煙吸って気絶してたけど、すぐ聖マンゴに運ばれてたから大丈夫だと思うよ。
泡頭呪文とかで空気を確保してればよかったんだけど、そこまでは気が回らなかったんだね、きっと」
「最初、凄く気になる発言があった気がするけど……」


お前、あたしのリーマスに対して色々酷くない?


「It's KINOSEI!」
「…………」


やっぱり、信用のならない軽さだなぁ。

まぁ、でも、今はスティアとリーマスの確執について考えている場合ではない。
あたしは、へろへろと、埃まみれの床に座り込む。
埃で折角のデート服が汚れてしまうが、それも一興という奴だ。だって、


「そっか。助かったんだ」


色々と思うことはないでもないけれど、なによりそれが重要なことだった。
あたしは、転がったリーマスの顔をハンカチでぬぐいながら、 ようやくそこで少し笑った。

怒涛のようなクリスマス。
だけど、ちゃんと、あたしはその平穏を守れたようだ。
良かった。本当に、良かった。





「……ねぇ、ところで、一体いつ頃ピンチを察して来てくれたの?
あたしが魔法使えたってことは、そんなに遠くじゃない……よね」
「言っておくけど、ストーカーはしてないからね。
ただ、なにかあった時の為に、魔法が使えるぎりぎりの範囲内にはいたけど。
で、そうしたら、が恐怖に怯えだしたから、何事かと思って来てあげたんじゃないか」
「ま、まぁ、それなら良いんだけど。
紛らわしいっていうか、なんていうか……」
「ひれ伏してお礼をされるならともかく、抗議される謂れはないね」
「う……っ!でも、それにしちゃ、ちょっと来るの遅かったし。
なんだか、妙に事情知ってる風だったし!」
「そりゃあ、向かった先に、黒ずくめの変態仮面を3人も見たら大体分かるよ」
「……………………は?3人??」
「そう。君たちが倒してたのとは別の死喰い人デスイーター3人組。多分、増援かなにかかな?
どうせなら家1軒じゃなくて、村1つ壊滅させようとでも後から思ったんじゃない?
蝙蝠みたいに村の上飛び回ってたから、とりあえず撃ち落とし・・・・・・・・・・といたよ」
「…………」
「…………」
「……なんか、すみませんでした」
「分かればよろしい」





そういうのを、浅はかって言うんだよ!





......to be continued