不意に鳴ったのは、戦闘開始のゴング。





Phantom Magician、35





あまりに盛りだくさんにもほどがあった一日が明け、 あたしは一晩を明かした(きゃっv)リーマスの部屋から直接大広間へ向かっていた。
隣りには、あたしとお揃いの隈+赤目のリーマス。
見た目はお互い最悪だったが、リーマスは妙にすっきりした顔立ちだった。
どうも、何年分かは知らないが、溜まりに溜まっていた淀みを少しは発散できたらしい。
まぁ、それは良いんだが。


「うあぁあぁ。よく考えたらあたしハーマイオニーに殺されるっ!」


違反だらけの昨晩を思い返して、ガタブルである。
置いてかれたあたしとしては怒っても良いところだと思うんだけど、 そこは校則の鬼ことハーマイ鬼ー。
「どうして戻ってこなかったの?」から始まり、「だから夜中に寮を抜け出すなんてっ!」の連続コンボ。
あたしが昨日どんな修羅場をくぐったかなんてお構いなしでマシンガントークを炸裂させるに違いない。
嗚呼、面倒臭ぇ!
何が面倒臭いって、授業も同じで部屋も同じだから逃げ場ナッシングってあたりが面倒臭い!
もう、これは足が鈍くなっても仕方がないと思うんだが、どうよ?

と、あたしが唸りながら頭を抱えているのを見て、リーマスは安心させるような柔らかい笑みを浮かべてくれる。


「大丈夫だよ、。事情は私から彼女に話しておくからね」
「……リーマスっ!」


ああ、なんて良い人なんだ!
天使!天使がここに!
先生大好きなハーマイオニーのことだから、リーマスの言葉なら確実に鵜呑みにしてくれるはず!
ああ、やった!これであたしストレス過多から解放される!!


「とりあえず、が迷子のところを私が保護したってことで良いかな」
「……リーマスぅ」


……間違っちゃいないって言えば間違っちゃいないんだけど、 あまりに情けないその言い訳以外になんかなかったのか。
うううぅ。まぁ、でも、まさかリーマスが泣いてるのに一晩付き合ってたなんて、リーマスのメンツにかけて言えないし。
女、 !ここは愛する人のために汚名を着る所存です!!


『いや、君が迷子体質っていうのは汚名どころか周知の事実だから』
「うおぁ!?」


ようやく大広間ですって扉の前に来て、あたしは聞き慣れた声に奇声を発してしまった。
見れば、いつの間にやらちょこん、と行儀よくお座りをした状態で、スティアが目の前に出現していた。


「うわーびっくりした。いたの?スティア」
「ひょっとして、のことを待ってたんじゃないのかい?」
『その通りだよ。僕に黙って朝帰りとは良い度胸だね。


えええぇ。何であたし浮気を責められる彼女みたいな台詞をスティアに言われなきゃいけないの?
確かに朝帰りだけど、色っぽい展開皆無なんだけど。
ああ、まぁ、確かに彼氏でもなんでもない相手(言ってて哀しい事実だな、オイ)と、 一晩同じ部屋にいたってのはあまり褒められた行為じゃないのは確かなんだけどね。

……そういえば、大学時代、逢ったばかりの男友達を部屋に招き入れたとか言ったら、 親友に凄ぇ怒られた覚えあんな。
「そんなあたしを襲うような酔狂な人間、滅多にいないから大丈夫だよ」って言ったのに聞く耳持ってくんないの。
さんは女の子なんだよ!二度とそんなことしちゃ駄目なの!良い!?」とか何とか……。
普段怒ったりしない子なんだけど、あの時は普通に怒ってたなー。
ハーマイオニーと違って自分の意見そこまで押し付けたりしない子なのに、 そんなこと言うもんだからびっくりしたの覚えてるよ。
ウザイっちゃウザかったんだけど、あたしを心配してくれてるのは分かったから、まぁ反論しなかったけど。
それでも、その後も普通に男友達部屋に上げてたり(えへv)
嗚呼、あの頃に帰りたい。学生最高。ビバ大学生ライフ。


『誰が思い出話しろって言ったよ?
あのさー。普通に謝罪するとかなんかないの?振り回されてるこっちの身にもなってくれる?』


……サーセンしたぁー。
でもさー。そっちもちょっとは労わってくれてもいいんじゃないの?
見ろよ、この目の下の隈!うとうととしか寝てねぇんだぞ、こちとらよぉ!


『嘘吐かないでよ。隈はあるけど薄いし。間違いなく寝てただろ、君。
眠かったら会話中だろうがなんだろうが寝る君が、無言状態で起きてられるワケないだろ』


バレてるー。
な〜んで無言状態とか分かるんだ。
……ごほん。いや、そもそもこういう場合迎えに来てくれるもんじゃないのかい?案内人さん。


『行ったけど?取り込み中みたいだから放っといてあげたんだよ』


マジで!?
え、や、すみません、スティアさん!生言いました!あざーっす!
もう、スティアさんマジ、パねぇっす!空気読めるにもほどがあるっす!


『どこのチンピラだ……』


とりあえず、感謝の意を示すため、スティアの手触り最高な身体を抱き上げて肩に乗せる。
「お運びいたしますよ、おぼっちゃま」ってことで。
すると、その一連のやり取りに会話がひと段落したのを悟ったのか、リーマスが「じゃあ行こうか」と促してきた。
お腹も空いていることだし、二つ返事でそれを了承する。
そして、重厚な大広間の扉にリーマスが手を掛け……


『あ、言い忘れてたけど』
「は?」

『今、中、凄いことになってるよ』


扉を開いた先は戦場と化していた。







「……なんだこれ」


フリーズすること数十秒。
ようやく搾り出せた一言は、なんの捻りもないごく当たり前の感想だった。
お口あんぐり、まさにその言葉が似合う間抜け面をさらすあたし。
目の前には死屍累々。
平和なはずの朝食風景は、忘却の彼方へ吹っ飛んでいた。


「地獄に堕ちろ、ポッター!」
「あはははは!嫌だなぁ、スニベリー。そこは君の故郷じゃないか。絶対にごめんだね!」
「止めてよ、父さん!」
「ハリー、下がっていろ!お前に怪我をさせたらリリーに殺される!」
「何言ってるんだい、パッドフット。可憐なリリーがそんなことする筈がないじゃないか!
せいぜい、死ぬ以上の苦しみを延々味わわされるだけだよ」
「……お前やっぱり趣味がおかしいだろ!」
「エバンズを侮辱するな!犬畜生が!!」
「リリーは僕の奥さんなんだよ!エバンズなんて旧姓で呼ばないでくれるかい?
ああ、リリーなんて名前で呼ぶのはもちろん論外なんだけどさ!他人行儀にミセス ポッターがお勧めかな」
「フン。そんな一時だけの名前で誰が呼ぶものか!さっさとボロ雑巾のように捨てられるが良い!」


ずばーん どぎゅーん ぱーん どごーん ちゅどーん


擬音にするとこんな感じ。
目の前には赤やら黄色やら、まぁ〜カラフルな魔法の洪水。
宙を舞う食材に、虹を描く魔法薬。
状況を打開できるであろう教授陣は生き残りのいたいけな少年少女を隅っこの方で守るのに手いっぱいなようだ。

ええと。とりあえず状況を整理しようか?
現在地、ホグワーツ魔法魔術学校大広間。
現時刻、午前7時58分29秒。
室内の生存者、ハリー=ポッター。セブルス=スネイプ。ジェームズ=ポッター。シリウス=ブラック。
死傷者。ドラコ=マルフォイ他十数名。
傍観者。リーマス=ルーピン。+α。
状況。スネイプ vs ジェームズ&シリウス。

……いや、おかしいおかしい。整理してもこの状況はおかしすぎる。
死傷者とか日常生活で使う単語じゃないもん。おまけにメッチャ、部外者混じってるもん。
おまけにソイツ等がこの騒ぎの首謀者な気がしてならない……。
とりあえず、どうしたもんかと、いまだ沈黙を保っている保護者を下から仰ぎ見る。
すると、


「……ふふ」
「…………っ!!!」


リーマスは、見るも眩しい真っ黒な微笑みを湛えて、この修羅場を眺めていらっしゃった。
心なしか肌艶アップ。見る見る内に生気に溢れてくる鳶色の瞳。
嗚呼、生き生きしてるってこういう場合に使う言葉なのね。
いやんvリーマス黒いv素敵w


「……り、リーマス?」
「いやぁ、凄い状況だねぇ。セブルスもニ対一なんてよせば良いのに」
「そ、ソーデスネ」
「これじゃあ、収まるまで食事はできそうにないかな?
まったく。いい大人のくせに子どもたちに迷惑をかけるなんてしょうのない人たちだ」
「ソーデスネ」


いい○も!のように棒読みで相槌を打つ。
いやぁ、こんなブリザード隣で発生されたらまともな返答無理だよ、実際。

そして、もう爽やかにもほどがある笑みを浮かべたリーマスは、あたしにここで待つように告げて、 愛用の杖を片手に、鼻歌でも歌いそうなほどご機嫌で戦場の中心地へ歩いて行った。それも超優雅に。
次の瞬間。

聞こえてくるのは断末魔の 大 合 唱 。

……ご愁傷様。
君たちが悪いんだよ。
寝不足で若干ハイ、おまけになんか色々ふっきっちゃって今なら神すら殺せるゼ!寧ろオレが神だ!
ってくらい絶好調なリーマスの前で喧嘩なんかしてるから。

さて、あと数分もすれば事態が収拾するだろうが、あたしはその間何してようか。
っていうか、一体何が原因でこんなことになってんのさ。
や、多分すごーくくだらなくて、すごーくちっちゃいことが原因なんだと思うんだけど。
そもそも、シリウスたちがいるのが分からない。
ジェームズだけなら、「嗚呼、ハリー不足になったんだな」程度で納得なんだけど。
一応、シリウスって闇払いのエースらしいし。
そもそも俺様だから、こんなところに自分からなんて用事でもないと来ないと思うし。
ハリーの誕生日はこの前終わっちゃったしなぁ。
大きなイベントっぽいものも特に思い当たるのないでしょー?
ハロウィンが近いっちゃ近いけど、まだ当日じゃない。
ってことは、そんなあの二人が乗り込んでくるような何かがあるワケじゃないワケで。


「ぬーん。謎だぁ……」
『いや、そんな謎ってほどのものじゃないでしょ。ちょっと考えてみれば分かるじゃないか』
「分かんないから謎だっつってんでしょーが。なに、スティアこの騒ぎの原因知ってるの?」


考えてもみれば、大広間の前で待ってたくらいだし。
ここは素直に聞いた方が早いとばかりに、肩の重石に問いかける。
すると、スティアは前足で騒ぎの中心よりちょい右の方を指し示した。


『ハリーの手を見れば分かるでしょ』
「は?…………あーあーあーあー」


ハリーの手。
なるほど、そこに全ての答えがあった。
身長以上の細長い包み――ニンバス2000。


「はー。つまりあの親馬鹿ーズはハリーのお祝いに駆けつけたってワケね」


あたしはその場にいなかったので、まぁ、推測なのだが。
ハリーは原作通り、ネビルの一件で最年少シーカーに選ばれている。
選ばれたのは昨日の昼間だし、それが伝わったとしたら夕方から夜にかけて。
流石に夜中に来られたら超迷惑なので、リリーか誰かが止めたに違いない。
が、まぁ、次の休暇まで奴らが待ちきれるはずもなく。
さっそく親馬鹿ーズはここぞとばかりに不法侵入をぶちかました、と。
箒は手土産かな?
あれ、でもだったらあんな包みに包まないで、そのまま持ってくるよなぁ、性格上。
衆目が集まる中、ここぞとばかりに見せびらかしそうだ。
ってことは、原作通り、マクゴナガル先生から?

ふむ。つまり、想像するところ、こんなもんだろうか。


『今度こそおしまいだな、ポッター。一年生は箒を持っちゃいけないんだ』
『それは普通の一年生の場合さ。僕のハリーは優秀だから、なんの問題もない』
『父さん!?何でここに……』
『何を言うんだい、ハリー!ハリーのいるところに父さんがいるのは当然のことだろう!!
さて、そこのデコっぱちくん。愛する息子との感動の再会のシーンなので、部外者は引っこんでてくれないかな?』
『部外者はそっちだろう!ポッター!なんだ、この変人は!?どこから湧いた!?』
『……見知らぬ人だよ、マルフォイ』
『はっはっは!本当にハリーはリリーに似てシャイだなぁ!そんなところも可愛いんだけどね!』
『……何をやってるんだ、お前は』
『シリウスおじさん!?』
『最年少シーカーだってな。おめでとう、ハリー』
『シーカーだと!?そんな馬鹿な話があるもんか!
一体幾ら払ってマクゴナガルを買収したんだ、卑怯者め!』
『……ああ、父さん。実は僕が選ばれたのってマルフォイのおかげなんだ』
『〜〜〜〜〜〜っ!?』
『なんだって?やぁ、なんて友達想いの素晴らしい少年なんだろうね!
父親の僕からもお礼を言わせてもらうよ。僕の息子に勝ち目のない喧嘩をふっかけてくれてありがとう!』
『貴っ様!』
『……盛り上がっているところ申し訳ないが。部外者はとっとと立ち去れ、ポッター』
『スニベリーじゃないか。こんな日の光溢れる朝に活動していて良いのか?灰になっても知らないぞ?』
『ハッ!人間と吸血鬼の区別もつかないとは、闇払いが聞いて呆れるな、ブラック。
そんな体たらくだから、いつまで経っても人身売買組織が捕まらないのではないかね?』
『なんだと、貴様っ!』
『まぁまぁ、シリウス。スネイプはハリーを獲得できなくてそりゃあ落ち込んでいるんだよ。許してあげなきゃ。
まぁもっとも、ハリーはスリザリンなんて陰険な寮に入るはずがないって考えれば分かりそうなもんだけどねー!
あはははは!』
『〜〜〜〜麻痺せよステューピファイ!』
『おおっと、人間バリアー!』
『ぎゃあ!?』
『ああ!マルフォイ!?』
『あーあ。生徒に八つ当たりで攻撃加えるなんて教師失格だな』
『子どもを盾にする輩が何を言うか!』
『父さん!いい加減にしてよ!』
『ふふん。息子に僕の勇姿見せる良い機会だ。受けて立とうじゃないかスニベリー』
『地獄に堕ちろ、ポッター!』


9割妄想。
でも、多分大体こんな感じの流れだってのは間違いない。
だって、マルコ中心地でくたばってるし。
確実にあれは騒ぎに巻き込まれたねー。
まぁ、昨日酷い目にあわされたし。自業自得ってことでひとつ宜しく。


「あ、あれ?……?」


と、あたしがのんびりと妄想で暇をつぶしていたその時、不意に横合いからおどおどとした声が聞こえてきた。
ん?と首を捻って見てみると、そこは、グリフィンドールテーブルの末席。
で、若干目線を下に下げてみると、 頭を抱えてテーブル下に潜り込んでいる少年――ネビルが少しだけ首を出しているのが見えた。
防災訓練みたいな光景である。
いや、みたいなってか、防災そのものなんだけれども。
ある意味ここは現在進行形で災害にあっているので、その行動は恐らく正しいのだろう。
そして、あたしが自分に気付いたことを悟ったらしく、 ネビルはじりじりとこっちに避難してきつつ、囁くようにあたしに質問を投げかけた。


「……君、無事だったのかい!?」
「はい?あたし、マルコと違ってあんなのに巻き込まれるほどドン臭くないよ?」


今までの経験から言って、危機回避能力はそれなりに高いはずだ。
運とかは微妙なところだが。
とりあえずマルコをけなしつつそう主張してみると、彼はうんうん唸りながら、必死に自分の言葉を伝えようとし始めた。


「マルコ?まぁ、とにかく。そうじゃなくて……」
「?」
「ええと、その……は昨日僕らとはぐれた、よね?」
「ああ、ロンが置いていきやがったからねー」


あいつ、基本的にKYで気配りもできないタイプだと思う。
まぁ、時々それも良い感じに作用することがないとは言わないが。
女の子にはあんまり好かれないタイプだ。
どっちかっていうと、男子の方があれには好感を覚えるだろう。
分かりやすいし。共感しやすいし。
あれと付き合うには、よっぽど心が広い子か、あれ以上に男前な子でないと無理だろうなー。
……だから、ハーマイオニーなのか?ひょっとして。

ひょんなことから、あの二人のお似合いっぷりに思い当たる。
すると、そんな風に思考が明後日の方向にすっとんでしまったあたしを、ネビルの一言が現実へ戻した。


「僕、ぼく、てっきり、がフィルチに捕まったのかと思ってっ!
す、すごく心配だったんだ!皆はのことだから、きっと大丈夫だって言ってたんだけど。
でも、ぼく今日寝過して朝食遅れたのに、はいないし……。
ああ、でも良かった!その様子だと、ちゃんと部屋に戻れたんだよね?」
「……あー、ボチボチ?」
「本当に良かったね!」


顔を真っ赤にさせながら、一生懸命あたしの身を案じてくれるネビル。
……ええ子や!?
え、ちょっと待って、ネビルってこんなキャラだったっけ?
もうちょっと鬱陶しくていじいじしてて、最後に男前になる感じじゃなかったっけ?
ちょ、ちょっと、可愛い……?
あ、や。ショタを愛でる可愛さじゃなくて、子どもを見守る微笑ましい感じってーの?
(『ああ、うん。下心のない、やましくない、純粋な気持ちだね。珍しく』)
うわー。年の離れた弟みたい!あたし弟いないけど!
大丈夫だとか安請け合いした連中とは大違い!

思わず頭を撫でたくなる衝動に襲われる。
ので、次の瞬間、欲望の赴くままに、あたしはよしよしとそのふわふわした頭を撫でていた。
ちなみに、表情は普通に笑顔。
小動物見ると、ほんわーと顔弛むじゃん?あんな感じ。


「ありがとー、ネビル。
ハリーを除いて、この学校で初めてってくらいの、一般的な友情を感じたよ。
おかげであたし、人間不信にならなくてすみそう……っ!」
「〜〜〜〜っ!え、あ、あの……それは……よかった」


子ども扱いに照れたのか、ただでさえ赤かったネビルの顔がトマトもびっくりの色になる。
おうおう。なんだなんだ。意外と初々しいな欧米人!
それとも11歳ってこんなもんなの?
やーだーもー、た〜の〜し〜い〜っ!

うふふふふ、とストレス解消の一環としてネビルの頭を撫でくりまわす。


「う、わ……っ!!?ちょっ」


あれだよね。ネビルはぽっちゃり系だよね。許される感じだよね。
どこぞのビッグディーとか、ゴイルとかクラッブとかと違ってさ!
うーん。これでもうちょい顔整ってたら、お姉さまウケばっちりなんだけどなぁ。
いっそのこと、ハーマイオニーと共に人格&見た目改造してくれようか。
ああ、でも面倒といえば面倒……。


『適当だね、君って子は。それよりホラ、終わるから。そろそろ止めなよ?』


と、寝不足のため絶好調のあたしを、不意にスティアが窘める。
その声の響きに皮肉やら呆れがなかったために、あたしは素直にネビルの頭を解放した。
(ちなみに解放されたネビルは心底ほっとしたように嘆息していた。後でまたやってやろう)

そして、スティアがひょいと前足で指し示す方へと視線を上げる。
それは、まぁ、さっきまで戦場だった場所の丁度中央にあたる場所で。
どうやら、あたしが慌てるネビルとじゃれ合っている間にも、戦闘は終了していたようだ。
気づけば、動くものは勝者ただ一人という有様である。
んで、唯一の勝者にして生存者――リーマスはてきぱきとそこらの屍を壁際に寄せると、あたしを手招きした。
思わず、あたしたちの周りに、和やかーな空気が流れる。


「さぁ、朝食を食べようか、
「はーい!」


昨日の凹みっぷりが嘘のような快刀乱麻の活躍に、あたしとしては笑顔しか浮かばない。
うんうん。やっぱりリーマスはこうでなくっちゃ!
もう、その復活っぷりが嬉しくてしょうがなかったので、 あたしはさっきまでじゃれていたネビルを軽やかに捨て置き、リーマスの方へと駆けだした。
え、周囲の惨状?見えない見えない。
あたしにはリーマスの天使の微笑みしか見えない。
ああ、なんて爽やかな朝なんだろうね、まったく!


「ああ、?そっちは駄目だよ。ここにおいで。そこはちょっとジェームズの血で汚れているんだ」
「……はーいv」
「ご機嫌だね、。あ、そこのコーンスープ食べるかい?」
「食べるー!あ、リーマスもあそこのプディング食べるよね?後で取ろうか?」
「寧ろ今食べたいかなぁ」
「わかったー」


ちなみに、この場に「お前教員席帰れ」などという命知らずはいない。


「おいしいね!リーマス」
「うん。軽い運動の後で食べる食事は最高だ」





やっぱり腹黒最強ってことで。





......to be continued