悪戯は別に嫌いじゃないよ? でもさ。 Phantom Magician、26 広大なホグワーツのお城を、今日も今日とてカルガモよろしく、ハーマイオニーにくっついて歩く。 次の時間は妖精の魔法で、ひっそりニ番目に好きな教科だ。(一番は言わずもがな) だって、杖振って物を浮かせたりするって、まさに魔女じゃん! フリットウィック先生可愛いしね!ザ☆癒し系! ハーマイオニーもこの教科が好きらしく、彼女もちなみにご機嫌だ。 ……まぁ、ハーマイオニーは勉強自体LOVEな奇特な子なんだけど。 でも、魔法薬学とかの時より、よっぽどご機嫌だって。うん。 が、もちろんここで「えーと、今日は何するんだっけ?」なんて話は降らない。 そんな話題を出したが最後、延々彼女の講釈に付き合わされる羽目になるのが分かり切っているからだ。 なので、あたしは無難に今日の天気を話題にした。 「今日もいい天気だねー、ハーマイオニー」 「ええ、そうね!絶好の練習日和だわ!」 ……そうくるか。 がっくり、と肩を落とすのを寸でで抑え、あたしは嬉々として杖を振るう腕の動きを解説するハーマイオニーを見る。 一を言って十を返すのはそろそろやめて欲しい。食傷気味だ。 あたし、元々胃の強い人間じゃないってのに。 実を言えば、あたしが大人しく聞いてるのも、彼女をヒートアップさせている原因の一つだとは露とも知らず、 あたしは、この状況を打破してくれる存在を心の底から願った。 と、普段の行いが良いからか、そんな切なる願いに応えて曲がり角から聞こえてきたのは、とある声。 「ああ、まったく。さっきのマルフォイの奴見たかい?いばりくさって……」 「したい奴にはさせとけば良いよ。相手にしなければその内飽きるんじゃないかな」 「甘いよ、君は!ああいう奴は一度ぎゃふんと言わせてやらなきゃ……」 それも、ハーマイオニーが決して見過ごさないような言葉つきの声だった。 案の定、彼女はジャイロでもついてるんじゃないかって程勢いよく首を巡らせ、 声の主がいるであろう方向を凝視。 間違いなくそっちに人がいるのを確認した後、急加速で走り出した。 「ぎゃふんと言わせるですって?貴方たち一体何をするつもりなの!?」 「いででででででっ!痛っ、痛いよ、ハーマイオニー!」 「何だよ、君たちは!?」 あろうことかあたしの腕を引っ張って。 痛い。マジ痛い。 ちょっ待っ!タンマ!腕外れるっ!! 注意するのは勝手だけど、あたしまで巻き込まないで、頼むから!! が、あたしが逃げ腰なのを敏感に察知したハーマイオニーは寧ろ力を込めてあたしの腕を握る。 これで、あたしの意思に関わらず共犯決定だ。泣きたい。 嗚呼、きっとあたしのことも「ウザイ注意してくる女」と認識しているのだろうなー、と思いつつ、 とりあえず、ハーマイオニーの憐れなターゲットの方を見る。 すると、綺麗な緑色の瞳がこっちを見ていた。 「あれ、ハリーじゃん」 となると、その横でハーマイオニーに突っかかっている赤毛君はロンか? 「えーと、大丈夫?」 「うん。ぶっちゃけ満身創痍」 「……大変そうだね」 ハリーは、それは気の毒そうにあたしと掴まれている腕とを見た。 うん。同情してくれてありがとう。できれば助けてくれるともっとありがたい。 目線だけでヘルプを求めると、ハリーはきちんとこちらの意図を察して、ハーマイオニーに声をかけた。 「ねぇ、ハーマイオニー」 「貴方は黙ってて頂戴!」「そうだ、言ってやれハリー!!」 が、あえなく玉砕。 どうも、あたしとハリーを蚊帳の外に、ハーマイオニーとロンの口論が勃発していたらしかった。 話の流れも分からないのに、親友に加勢を求められたハリー。 何だか、酷く可哀想だった。 間に挟まれてるあたしも可哀想だった。 「大体、貴方たちは行動が短絡的すぎるのよ! どうして見返してやろうっていうので、悪戯を仕掛けようって話になるの!?理解できないわ!!」 「僕としては君の方が理解できないね! あのマルフォイより成績が上になったって、カンニングだのなんだのいちゃもんつけてくるに決まってるんだ! だったら、やられる前にやって何が悪いって言うんだ!?」 「やった瞬間、やった方が悪者になるからに決まってるでしょ!考えれば分かるじゃない!!」 「いーや、分かんないね!僕は君と違って本ばっかり読んでるわけじゃあないんだ!!」 「何ですって!?」 ぎゃーぎゃーぴーぴーキャンキャン。 興奮して怒鳴ってる様子はガチョウのようだ。もしくはチワワ。 あたしは、段々ハーマイオニーの意識があたしから離れたのを見計らって、そっとその魔手から逃れた。 そして、あたしと同じようにどうしたものか、と傍観しているハリーの所へそそくさと移動する。 で、そのローブのすそをちょいちょい、と引っ張った。 「っ!あ、何?っ」 「ハリーって妖精の魔法、場所分かるよね?」 「うん。そりゃあ、もちろん?」 不思議そうに首を傾げるハリー。 それに答えるあたしは、我ながら素晴らしい笑顔だったと思う。 「じゃあ、行こうかvハリー」 「……そうだね」 こうして、あたしたちは遅刻を回避するべく、常識的な判断に則って友達を放置した。 よく言うじゃん。背に腹は代えられないって!今まさにそれ! ごめん、ハーマイオニー!あたし自分が可愛いの! で、まぁ、喧嘩するほどなんとやらの二人を置いて、あたしはまったりとハリーとホグワーツ散策を開始。 本当にハリーって癒し系。なんて一緒にいて楽なのかしら、この子! 嫌味は言わないし、変なつっこみもしてこないし、知識ひけらかしたりもしてこないし!(あれ?それって普通……?) 多少緊張しているのか、偶にあー、とかうーとか唸ってるけど、それはご愛敬。 寧ろ、初々しくてよし。 「………………はぁ」 様子をうかがっていると、ハリーは結局あたしに話しかけること叶わず、海より深いため息を吐いていた。 あ、そっか。あたしは久々のまったりだけど、ハリーからしてみたら、この沈黙辛いのか。 そうだよねぇ。気心しれてたらまだしも、まだ知り合ってあんまり経っていない女の子だもんねぇ。 とりあえず、無言でいるのもあれかなーと思ったので、あたしは年長者として話題を振ってあげることにした。 「そういえばさー。ハリーとホグワーツで二人っきりになるの初めてだよねー」 「えっ!?あ、うん。そうだね。そういえばそうだ。うん」 ……ウィーズリー家やらロングボトム家との付き合いばかりが多かったハリーは、 どうも、未だに同年代の女の子との接し方にあたふたとしてしまうらしい。 嗚呼、初々しい。可愛すぎる。存分に愛でよう。 そして、若干あたふたと慌てふためいたハリーは、どうにか話題をひねりだしてきた。 「は学校慣れた?マグルじゃ、驚くことばっかりだったでしょ? 僕だって、意味不明な階段とかに驚いてばっかりなんだ」 「ああ、うん。まぁね。本当に意味不明なものばっかりだけど、見てる分には面白いよ」 「授業とかは?何気にって成績良いみたいだよね?」 「そう?ハーマイオニーが傍で色々教えてくれるからかなーあはははは」 何気にってどういう意味だと思いつつ、とりあえず笑って誤魔化すことにした。 まさか、あんたらよりも○歳年上で勉強の仕方は見当が付く上に、思ったように魔法使い放題なんですとは言えない。 そりゃあ、成績も良いに決まってんじゃん。 ぶっちゃけ、実技だけなら、あたし学年で多分トップクラスだよ? おかげでハーマイオニーがヒートアップしちゃって、もう大変。 鬼気迫る様子であたしに実技を聞いてくるハーマイオニーを思い出し、若干身震いが起こった。 もう、あたしの中で勉強に関する時の彼女の名前はハーマイ鬼ーである。マジ怖ぇ。 と、頭を振って恐ろしいその姿を打ち払い、あたしはハリーに話をふることにした。 「そういうハリーはどう?授業上手くいってる?」 「うーん、僕もまぁそれなりかな。一番楽しみにしてる授業がまだだから、早くやりたいよ」 「?そんな授業あったっけ?」 「何言ってるんだい!飛行訓練だよ!!」 「……ひ、ひこうくんれん?」 思わず口元がひくついた。 飛行訓練……箒についてはトラウマができて久しい。 ああ、そういえばおぼろげながらも、ハーマイオニーがそんなこと言いながらパニクってたのを見たような。 (その時、あたしは丁度リーマスの魅力について考えてたからよく覚えてないけど) と、あたしの引きつりまくった様子に気づいたらしく、ハリーは一気に気まずそうに「ごめん」と謝った。 劇的な空気の変化である。 うららかな春の陽気が、一気にじめじめの梅雨になったみたいだ。 おおぅ。なんて居心地の悪さ。 きっとあれだよね。ハリー今、絶対あの時のリーマス(怒髪天.ver)思い浮かべてるよね。 優しい父親の親友の豹変する様は、きっとトラウマもんの記憶になっているに違いない。 と、そこであたしは、そういえばあの時、ごたごたしていてハリーに謝りそびれたことを思い出した。 なんてことだ!謝罪はその場で、がモットーなのに! そして、思いついたら即実行!とばかりに、あたしはハリーの方へ向き直る。 「あの時はごめんね?ハリー」 「え?」 「や、よくよく考えてみれば、あたしちゃんとハリーに謝ってなかったなーと思って」 「君が謝る必要ないよ!あれは僕が考えなしだったんだ!」 「んー、でも、あたしが謝りたいんだよねぇ。許してくれる?」 とりあえず、効くかどうかは分からないが、一応上目遣いで謝ってみる。 (スティアがいたら砂吐きそうだ。……あたしも吐きそう) すると、若干それに頬を染めつつも、「もちろんさ」と爽やかにハリーは笑ってくれた。(ええ子やー) が、その素敵笑顔を目に焼き付ける前に、ハリーの顔はあたしの視界から消えてしまう。 いや、正確に言えばとあるドッペルに潰されて沈んだ。 「〜〜〜〜〜っ」 「やあ、ハリー。女子と二人っきりだなんて、すみにおけないじゃないか」 「よっ、色男。入学してたった数日でよくやるぜ、オイ」 「〜〜〜〜そ、そんなんじゃない!っていうか、二人とも重いよ!」 必死に上の重り×2をどかそうともがきながら、ドッペル――もとい双子を睨みつけるハリー。 で、あたしといえば、突然の闖入者にただただぼけっと見てることしかできなかった。 いやぁ、お邪魔しちゃ悪いじゃん? 「照れるな照れるな。なかなか可愛い子じゃないか……ん?」 と、面倒なので傍観していたあたしにようやく目を向けた双子の片割れ(どっちがフレッドでどっちがジョージだ?)が、 片眉を器用に上げて、あたしの顔を矯めつ眇めつした。 はっきり言って不躾すぎる視線だ。遠慮なさ過ぎ。居心地悪っ! 「えーと……確か、ホグワーツ特急で死んでた子?」 〜〜〜〜事実だけど、死んでたゆうな! 「え、どれどれ?……あ、本当だ。あのノリの悪い新入生。ハリーの友達だったのか」 「ん?ということは、だ。まさか、君グリフィンドール!?」 「ありえない!あんなにノリが悪いのに!」 「ちっちゃくて、弱そうだし。何でよりによってグリフィンドールなんだ」 「うーん。ネビルといい……ときどきあの帽子、不思議な組み分けするよなぁ」 「あっ!思い出した!!そういえば、君、グリフィンドールって連呼されてた子じゃないか!?」 「あ〜っ!そうだそうだ。とうとう帽子がイカレた瞬間に居合わせた不運な子!」 「「君、組み分け間違われたのかい?」」 「…………」 とりあえず、まくしたてている双子に一言良いだろうか。 お前ら、言いたい事言いすぎだろっ! 死んでたに始まり、ノリが悪いだの、ちっちゃいだの、弱そうだの、言いたい放題言いやがってっ! 挙句に組み分け間違いだとぅ? あたしはリーマスのいるグリフィンドールにくる運命だったんだよっ! 運命の赤い糸なんだから、何一つ間違ってないっての! 思わずこめかみにぴきっと青筋が浮かびそうになる。 (や、マンガじゃないから、実際に浮かんだりしないけど。そんな気分) ので、子どものいうこと子どものいうこと、と呪文のように心の中で繰り返して、気分を落ちつけようとする。 大人げないからね。うん。 「絶対、グリフィンドールだけはなさそうだと思ってたもんなぁ」 「まったくだ。本当に可哀想に」 それはそれは鬱陶しいほどの同情の視線×2を向けられた。 …………。 ……………………。 ……あたし、今子どもの姿だから、大人げないとかないよね! 「あのさ……」 いくらなんでも、失礼すぎるじゃないか! さすがに、そう非難しようとした。 ところが、せっかく勢い込んでいたというのに、そこにハリーが割りこんでくるというハプニング発生。 「二人とも!に失礼じゃないか!! はちゃんとグリフィンドールでうまくやってるんだから、可哀想とか言わないでよ!」 まるでヒロインのごとく、ハリーの背に庇われるあたし。 おお?なんだなんだ、この状況は。 さすが主人公。女の子を庇う姿のなんて似合うこと。 そしてあたしのなんて庇われる姿の似合わないこと! 庇ってくれてるハリーには悪いけど、物凄い違和感を感じる!なんだこれ! と、ハリーがあたしを庇ったことに大げさなほど目を見張った双子は、 やがて二人でスクラムを組んで何やら密談を開始した。 多分、あたしかハリーについてのことだと思うんだけど、本人の前でやるなよ、そういうの。 あたしとハリーとしては、いきなりそんなことをされる覚えもないので、お互いに目を見交わすことしかできない。 ……えーと、負けじと密談でも始めてみる? でも、ハリーと話し合うことって言ってもなぁ。 あたし、生産的な会話とかできないし。 あ、それともさっきみたいに無視して授業行っちゃうとか? ……それが良いかも。 あっちもこっち無視してるんだし、別にこっちが同じことしても問題ないよね? よし!と勝手に今後の方針を決めて、ハリーに話しかける。 「あのさ、ハリー」 「あ、何?」 「もう、無視して行っちゃお――……「そこで何をしているっ!!」 が、またもや邪魔が入った。 おまけに、悪いことに相手はドッペルではなく、まさかの管理人。 「「「げっ」」」 「あ、フィルチだ」 思わず、蛙をつぶしたような声がもれる、前科者三名。 ええ、あたし前科持ちですよ?あたし悪くないのにね! そう、ピーブズのせいでもはやあたしの天敵と化した、フィルチが廊下の向こうからご登場だった。 そりゃあもう、怒り心頭といった様子で、猛然とこっちに走ってくる! え、今日はまだ何もしてないんだけど!でも、いつも以上にキレてるってどういうこと!? 「やばいぜ、フレッド。育毛剤を脱毛剤にしたのがバレたのかも」 「まったく、子どもの可愛い悪戯くらい、笑って許せば良いのにな」 そーか、そーか。お前らのせいか! そりゃ、ブチキレてもおかしくないワ! 髪の薄い可哀想な人になんて仕打ちしてんだ、お前ら! さすがに、それはないわー。 よし、ムカつく奴だけど、今回ばかりは奴の味方をしてやるか! とりあえず、この二人を捕まえとけばOK?よし、さっそく…… 「ウィーズリー!ポッター!!今度こそ、貴様らに鞭をくれてやるっ!!」 「「ええ!?なんで、あたし(僕)まで!?」」 待て待て待て! あたし関係ないよ!?無実だよ!? 寧ろ、今双子の被害にあってた感じなんだけど!ホラ、一緒一緒! 協力しようとしてたあたしまで目の敵にしなくてもっ! はっ!とりあえず、無関係を主張しないとなのか!?でないと、巻き込まれる確率100%!? 「あ、あたし、何もやってないですよー!?」 とりあえず、一人だけでも助かろうと挙手をして発言してみる。 「煩い!そこの双子と密談していただろう!お前も同罪だ!!」 「そんな無茶な!?」 が、最初から印象の悪い相手の話は端から信じない主義らしく、フィルチはその言葉をばっさりと切り捨てた。 理不尽すぎるw 半ば茫然と突っ立っていると、がしっとあたしの腕を誰かが掴んだ。 そして、廊下の向こうまで響くような大音量で繰り広げられる、わざとらしいセリフが耳に飛び込んでくる。 「よし、じゃあ、逃げようじゃないか、同志よ!」 「はっ!?同志!?」 「そうそう、憎き管理人にひと泡吹かせようという同志だろう、僕たちは!」 いつの間にそんな同志になった!? 目を白黒させるあたしだったが、いち早く彼らの意図に気付いたハリーは顔面蒼白にして、悲鳴のような声を上げた。 (ちなみに、ハリーの腕もがっつり捕まっている) 「ジョージ!僕たちまで巻き込む気!?」 「「はははははは!当たり前じゃないか!」」 「やっぱりお前らもグルかー!!」 「違ぇっ!!」 スピードが一気に増したフィルチは、顔を真っ赤にさせてどんどんこっちに近づいてくる。 そして、それを見た双子は、あたしとハリーを引っ張りながら全力疾走を開始した。 あたしを巻き込むんじゃねぇ!! ......to be continued
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