数日が流れて。
君の姿を忘れていく自分が居た。






Life Is Wonderful?、2





がいなくなった翌日の晩――つまり八戒の野郎と逢った日の夜、オレは長い休日を強制的に申し渡された。

オレが勤めているのは、落ち着いた雰囲気の酒場。
給料は最近上がってきて、ようやくやりがいを感じてきたところ。
店主は八戒。
ここまで言えば、どうしてだかなんてわざわざ言わなくても良いだろう。
仕事しなくてのたれ死ねっつーのか、あの野郎。

がしかし、オレには今更どうしようもないコトだ。
奴の機嫌を損ねたのはオレだし、かと言って機嫌の取り方を知っている訳でもない。
さっさと諸手を上げて降参するのが利口だ。

オレは仕方がないので、この時間を有効利用しようと思い立った。
しかし、


「つまんねぇ……」


ボソリと一人低く呟いて天井を見上げた。

特にしたいコトもなく。
特に見たい番組も映画もなく。
待っていたのはただの退屈。灰色の時間。

最近ずっと忙しい日々が続いて家では寝るだけの毎日だったから、気付けば何をして良いか分からなくなっていた。

前のオレはどうやって休日を過ごしていた?
……思い出せねぇ。
特に、何かがあった訳じゃないと思うが。
こんな退屈はなかった気がする。


「……しゃーねぇ。寝るか」


新しく仕事やバイトを探す気はなかった。
それなりにあった貯金崩しゃなんとかなるだろ、と考えて奴の怒りが自然に解けるのを待つコトにする。
のコトを、考えないようにしながら……。







結婚したのは4年前。
最初の頃は八戒も気を遣ってか、そこまで破滅的に忙しいシフトを組まないでいた。
決して楽な生活じゃなかったが、それなりだったと思う。
それなりに生きがいがあって。
それなりに夫婦して……。

けれど、3年前からオレはがむしゃらに働いた。
休みも返上でただひたすらに。
ただでさえ酒場なんてのは夕方から朝までの仕事。
それにひきかえ、は昼の仕事をしていた。
すれ違うのは当然で必然だった。

一日一回逢うコトすらない日があって、増えていって。
自然に冷めていった関係。
交わされなくなった言葉。

それでもは何とかオレと接触を持とうとしていたが。
一方のオレは次第に向けられる労いや心配の仕草が鬱陶しくなった。
放っておいてくれ、と思う。
オレにとって、との話よりも睡眠の方がずっと大事だった。

客観的に見れば酷い男なのかもしれない。
禄でもないと非難される対象なのかもしれない。

でもよ、こっちも仕事して疲れてんだよ。
当然の欲求だろうが。休みたいなんざ。
何でそれでオレが責められる?
お門違いもいいとこじゃねぇか。
理解しろなんて言わないけど?
その努力もしないくせに勝手に傷ついて勝手に出て行って被害者面かよ。
……冗談じゃねぇ。







「うあー、だりぃー」


起き抜けの一言はそんなモノ。
妙な体勢で寝ていたせいか、それとも寝過ぎた為か、妙な倦怠感が襲ってくる。
夢見も最悪だった。





消えた君が、非難の対象。





......to be continued