女―八戒.ver― 「ありがとうございます」 いちいちお礼を言う貴方。 誰にでも優しいその対応が、どれだけ罪作りなのか知ってるの? ほら。少し街を歩くだけで皆が貴方に注目してるわ。 私の、彼なのに……。 哀しい。 「どうかしましたか?」 「ううん、なんでもないわ。八戒」 「そうですか?でも、もう帰りましょう」 「本当に何でもないのよ?」 「僕が帰りたいんですよ」 何処か心配そうな貴方の表情。 嬉しい。 別に嫉妬の混じった視線なんて気にしてないわ。 慣れてしまったもの。 気にならないワケじゃ決してないけど、そんなモノが私の悩みじゃないの。 貴方が憎らしいぐらい格好良いから悪いのよ。 寂しい。 どうすれば『私だけのモノ』になるかしら? 貴方は優しいから、話し掛けられれば応えてしまうでしょう? 切ない。 帰りの道すがら考えるのはそのコトばかり……。 貴方が見るのは私だけで良い。 貴方が話すのは私だけで良い。 貴方が触れるのは私だけで良いのよ。 どうして貴方がこんなにも愛しいのか? ……嗚呼、そうね。 簡単なコトだったわ。 私以外、手の届かない所に連れて行ってしまえば良いのね? 誰にも渡したくなんてないもの。 貴方だって私と一緒が良いでしょう? どうして貴方を求めるのか? 「八戒、お茶要る?」 ワタシダケノモノニナレ。 ソレを私は知りたいだけよ。
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