―八戒.ver―







「ありがとうございます」


いちいちお礼を言う貴方。
誰にでも優しいその対応が、どれだけ罪作りなのか知ってるの?

ほら。少し街を歩くだけで皆が貴方に注目してるわ。



私の、彼なのに……。

哀しい。


「どうかしましたか?

「ううん、なんでもないわ。八戒」
「そうですか?でも、もう帰りましょう」
「本当に何でもないのよ?」

「僕が帰りたいんですよ」


何処か心配そうな貴方の表情。

嬉しい。

別に嫉妬の混じった視線なんて気にしてないわ。
慣れてしまったもの。
気にならないワケじゃ決してないけど、そんなモノが私の悩みじゃないの。







貴方が憎らしいぐらい格好良いから悪いのよ。

寂しい。

どうすれば『私だけのモノ』になるかしら?
貴方は優しいから、話し掛けられれば応えてしまうでしょう?

切ない。

帰りの道すがら考えるのはそのコトばかり……。







貴方が見るのは私だけで良い。
貴方が話すのは私だけで良い。

貴方が触れるのは私だけで良いのよ。

どうして貴方がこんなにも愛しいのか?


……嗚呼、そうね。
簡単なコトだったわ。


私以外、手の届かない所に連れて行ってしまえば良いのね?
誰にも渡したくなんてないもの。
貴方だって私と一緒が良いでしょう?

どうして貴方を求めるのか?





「八戒、お茶要る?」





ワタシダケノモノニナレ。

ソレを私は知りたいだけよ。









―作者のざれごと♪―

さて、『女』の八戒.verをお届け致しましたが、如何でしたでしょうか?
それにしても、あれですね。
実はこのシリーズ1日で書きあげたのですが、どんだけ病んでたんでしょう?夢は夢でも悪夢って感じ。
あ、このシリーズは夜だとか、昼だとか、桃源郷だとかの設定が、ソレによって変わるように書いています。
全ては読む方々のとり方次第です。
まァ、三蔵様は横断歩道が出てくる辺りで現代設定になってしまいますが。
皆さんで、八戒さんのその後を想像して下さい。

以上、ひらがな44の御題【ま 魔がさすとき】で『女―八戒.ver―』でした!
  いい加減、書かなくても良い気がしますが、「スクロールして読んでみました?」