Routine の一日はいつもある人物によって始まりを告げる……。 ドンドンドンッ 「、いい加減起きろ!あと十分以内に用意できないと、置いてくからな!?」 呆れた調子を含んだ自分の最も身近な少年の声に、はようやく完全に包まっていた布団から顔を出した。 窓に掛かったカーテンの隙間から明るい日の光が部屋に射し込み、 は、また幼馴染の彼は自分の部屋の窓から身を乗り出してこちらを叩いているんだろう、とまだ覚醒しきっていない頭で考えていた。 何しろ、この辺は集合住宅地で彼の家とは1m位しか離れていない上に、左右対称の造りの家で部屋の位置が同じなのだから……。 そして、が目を擦りつつも時計を見ると、 「……ご、五十分?マジで??」 見間違いではないコトを確かめた後、は今度こそ目を覚ました。 現在七時五十分。ちなみに学校まで歩いて二十分の場所にの家はある。 そして、登校時間は八時二十五分だ。 というコトは、階段の上り下りや信号待ちなどを考えると、 彼の言う通りあと十分で仕度を終わらせて家を出なければ、は完璧に遅刻なのである。 走ればもう少しゆっくりできるが、朝からダッシュはキツイ。 が、あと一回遅刻したら親の呼び出しなのでソレも避けたい……。 「もっと早く起こせよ!江流のヘタレー!!」 絶妙に的外れな文句を言いながら、は超特急で仕度を開始した。 コレが彼らの日常だ。 江流がギリギリになっても起きてこないを起こして。 は必死に用意を終わらせて。 二人で朝から口ゲンカを行う……。 面倒といえば面倒だが、江流はが慌てて出てくる場面がワリと好きだから……。 何だかんだ言っても指定した時間内に用意をすませる、彼女の変に律儀な性格が気に入っているから……。 今日もギリギリに窓を叩く。 「うー……また朝飯食い損ねた!江流のせいだ!!」 「文句があるんだったらもう起こさないからな」 「卑怯モノ〜」 「自分で起きろ」 「起きれないからこうなってんだろ!」 「威張るなっ!」 他愛のないケンカが気を使わなくて心地良い。 「大体、もっと早く寝れば良いだろうが。さては昨日もずっと起きてたな!?」 「完徹ジャナイデスヨ☆」 「……寝たのは何時だ」 「(朝の)四時……?」 「……ハァ」 「溜め息つかないでよ」 「……何してそんなに起きてんだよ?」 「乙女の秘密」 「……乙女が何処にいるって?」 「江流の眼の前」 「……透明人間か」 「コラ!素敵に可愛いあたしが目に入らんのか!!」 「…………」 「…………」 「……言ってて楽しいか?」 「いや、虚しくなってきた」 傍にいると楽しいし、いないと心配になる。 憎まれ口だって、江流 となら最高だ。 付き合っているワケでは決してない。 でも、他の人間とは違う『特別』で……。 お互いにソレに気づいていながら、彼らは「幼馴染だから」の一言で表していた……。 誤魔化されてしまった二人の本当の気持ちは何処へ向かうのか? ソレが分かるのは二人がもう少し大人になってからのお話かもしれない。 「なァ、江流」 「何だよ?」 「今気付いたんだけどさ、今日集会でいつもより早かったんじゃねェ……?」 「…………」 「…………」 「「走れ!」」
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