Together







今は、平和な平和な冬の放課後……。


「ゴクーv」
「っ!!」


ガバッ!ギュウゥv


「ックリしたー!どうしたんだ?
「一緒に帰ろー☆」
「分かった!」


そんな平和な平和な学校で、繰り返される同じ会話……。
此処には、この学校で知らない人はいないとまで言われる、名物カップルがいます。
彼らの名前は『 』と『孫 悟空』。

元気一杯の二人には、いつも手を焼かされています。
けれど、ちょっと憎めない処が可愛らしい、微笑ましい恋人達なのです。
どうやら、今日も一緒に帰るようですね。


ちゃん、孫君、バイバーイ!」
「じゃあなー!悟空!!」
「お前ら、寄り道ばっかしてないでさっさと帰れよー」

「「考えとくー!!」」


次々にかけられる声に、二人は見ているコッチが嬉しくなるような、素敵な笑顔で笑っています。
もはや学校公認で、先生方でさえ応援する程の仲睦まじさなのです。
そして、二人が早速帰ろうとすると……、


「悟空!手前ェ、今日の小論出してねェな!!」


行く手に、こめかみに怒りマークつきの不機嫌teacherが現れました。
二人は一瞬だけ顔を見交わして……、


くるり。


踵を返して逃げ出します。


「「にっげろー☆」」
「手前ェらっ!?待ちやがれ!!」
「「ヤダ!」」


二人は持ち前の運動神経の良さで、一気に廊下を走り抜けました。







そのまましばらく走って恐ろしい怒鳴り声が聞こえなくなった頃、今度は……、


「おや?二人共仲良くかけっこですか??」
「まーた、何かやらかしたのかよ?馬・鹿・ザ・ル♪」


暗黒微笑み魔人とその下僕(違っ!!)が彼らの行く手を阻みます。
そして、いつも通り悟空が反論していると……、


ダダダダダ……!


誰かさんの荒々しい足音が近づいてくるようです。
ソレを聞いて、は悟空の手を取り、急いでその場をあとにしようとしました。
がしかし、真っ赤な真っ赤なお邪魔虫が道を塞いでいます。

は少し困りました。
後から来る担任が声を掛けたら、きっと彼は自分達を捕まえてしまうでしょう。
けれど、二人のラビュラビュタイムを邪魔されたくはありません。
考えている間にも、どんどん時間はなくなってしまいます。

そんな時、不意に悟空と眼が合いました。


「オイッ!?待てよ、お前らァー!!」


精一杯声を張り上げて二人を引き止めようとするお邪魔虫の声が、背後から聞こえてきます。
そう、彼らは照らし合わせたかのようにまたもや走り出したのです。


「二人共、気をつけて帰ってくださいねー」
「ったく。挨拶ぐらいして帰れよなー!!」

「煩い!今、『愛の逃避行中☆』なんだよ!!だから……」「これから買い食いして帰るんだよ!分かったら……」

「「邪魔すんな、エロ河童ァー!!」」


ピッタリそろった声は、学校中に響き渡り、呆気なく遠ざかってしまいました。

ちなみにこの後、取り残された紅髪の彼がもう一人の彼とは大幅な不公平の元で、 同僚に凄まじく八つ当たりされてしまったのは、また別のお話……。







さて、なんとか無事に校外に出た二人は、夕暮れの中、トコトコと商店街に向かいます。
すると其処へ、焼き芋屋さんの車が通りかかりました。
そして、満面の笑みで悟空はソレに駆け寄り、大きなお芋さんを一つ買ってきました。


「うーわーvでっかいなァw」
「なんか、おっちゃんがオマケしてくれたんだ!」


どうやら、恋人というよりは双子のような二人の微笑ましい様子を見て、おじさんはオマケをしてくれたようです。
悟空はほくほくのお芋さんを二つに割って、ちょっぴり大きい方をに渡しました。
二人もほくほくとした気持ちです。

仲良く公園のベンチに座る二人は、やっぱり幸せそうでした。







全部を一人で食べるより、二人で分けた方が美味しくて……。
ちょっと少ないこの量が、買い食いには丁度良くて……。


―――さあ、またこの道で一緒に焼き芋を食べようよ。


そんな平和な平和な二人の、平和な平和な放課後のお話。









―作者のつぶやき♪―

はい、過去の倉庫からひっぱり出してきた悟空夢です。
今回はほのぼの狙って物語風に書いてみたようです。
ものすっごい初期作品なので、本気で文章があれですが。
ほのぼのMAX!という称号をありがたくも頂いた作品ですし、自分でもよく覚えてるお話です。
割るって言って、割り算でも、お皿が割れるでもなく、食べ物を分けるって思いつく辺り捻くれてますかね?

以上、15の御題【13、割る】で『Together―一緒に―』でした!