Hiding Love 「……」 誰か教えてくれ……。 誰か答えてくれ……。 あの時、俺が違うコトを言っていれば、結果は違ったのか? あの時、俺が偽りを言えば、全ては上手くいっていたのか? けれど、俺には言えなかった。 自分の素直な気持ちを言うコトしか考えつかなかったんだ。 「、応えてくれ……」 ―――俺はあの時、何を言うべきだったんだ? 『ねぇ、焔……』 不意にの声が聞こえた気がして、俺は閉じていた瞳を開いた。 けれど、周りは静寂で……。 ただの記憶だと、実感せざるを得なかった。 『ねェ、焔は私の中の『誰』がスキなの?』 プロポーズの言葉の後、彼女はそう問い掛けてきた。 『は<だろう?』 『うん。私は私。……でも。違うでしょう?』 俺は少し考えた末に、気付けば迷いなく答えていた。 答えてしまっていた。 『俺はを愛している。もちろん、他の皆も好きではあるが、愛しているのは<だけだ』 すると、は恥ずかしそうに頬を染め、何処か恨めしげに俺を見つめた。 『……よくそんなセリフさらっと言えるね』 『相手がだからな』 『焔の馬鹿……』 今まで見た中で、一番嬉しそうな笑顔だった。 間違いなく、人生で一番幸せな日だったんだ。 なのに、は今、動かない。 微笑みかけてはくれない。 身体は温かいのに、心が冷たい……。 あの日、もう一人の彼女が現れ、言った……。 『どうして私じゃないの……?』 そして、彼女は首を切る。 そして、彼女は筋を斬る。 溢れる鮮血の海の中、彼女の言葉だけが俺を現実に留めた。 ―――貴方が全部悪いのよ。 眼を開けてくれ、。 お前の声を聞かせてくれないか……。
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