Hiding Love
「……」
誰か教えてくれ……。
誰か答えてくれ……。
あの時、俺が違うコトを言っていれば、結果は違ったのか?
あの時、俺が偽りを言えば、全ては上手くいっていたのか?
けれど、俺には言えなかった。
自分の素直な気持ちを言うコトしか考えつかなかったんだ。
「、応えてくれ……」
―――俺はあの時、何を言うべきだったんだ?
『ねぇ、焔……』
不意にの声が聞こえた気がして、俺は閉じていた瞳を開いた。
けれど、周りは静寂で……。
ただの記憶だと、実感せざるを得なかった。
『ねェ、焔は私の中の『誰』がスキなの?』
プロポーズの言葉の後、彼女はそう問い掛けてきた。
『は<だろう?』
『うん。私は私。……でも。違うでしょう?』
俺は少し考えた末に、気付けば迷いなく答えていた。
答えてしまっていた。
『俺はを愛している。もちろん、他の皆も好きではあるが、愛しているのは<だけだ』
すると、は恥ずかしそうに頬を染め、何処か恨めしげに俺を見つめた。
『……よくそんなセリフさらっと言えるね』
『相手がだからな』
『焔の馬鹿……』
今まで見た中で、一番嬉しそうな笑顔だった。
間違いなく、人生で一番幸せな日だったんだ。
なのに、は今、動かない。
微笑みかけてはくれない。
身体は温かいのに、心が冷たい……。
あの日、もう一人の彼女が現れ、言った……。
『どうして私じゃないの……?』
そして、彼女は首を切る。
そして、彼女は筋を斬る。
溢れる鮮血の海の中、彼女の言葉だけが俺を現実に留めた。
―――貴方が全部悪いのよ。
眼を開けてくれ、。
お前の声を聞かせてくれないか……。
―作者のつぶやき♪―
はい、過去の倉庫からひっぱり出してきた焔夢です。
ぶっちゃけこれ焔さんじゃなくても……とかつっこんじゃいけません。
だってナチュラルに恥ずかしげもなく「愛してる」とか言う人他に思い浮かばなかったんだー!
カミサマと同じく、オールキャラ目指して書いたお話です。
人格って言ったら、王道は多重人格だろう!という事で、ヒロインさんをそれにしてしまいました。
普通に考えれば、自分を傷つけた彼女は、焔が愛する別人格さんに嫉妬した、と思われると思います。
ですが、捻くれた考えでは、別人格さんを取ってしまった焔に嫉妬したのかもしれません。
こういう、相手の受け取り方で物語が全く違うものになるっていうのも、物書きの醍醐味ですね。
以上、15の御題【11、人格】で以上、15の御題【人格】で『Hiding Love―隠れた愛情―』でした!
残念。反転は今回ありません。